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81/108

81.映画 「リスボンに誘われて」 に思う

原題: Night Train to Lisbon

公開年: 2013年

制作国: ドイツ・スイス・ポルトガル

監督: ビレ・アウグスト


映画 『リスボンに誘われて』 は、偶然出会った女性が置いていった本に興味を持った主人公が、わざわざその本の著者に会いに行ってしまう。

その本の著者はもうすでに死んでしまっていたが、その妹という人に出会って話をする。

妹はその本を手に取って驚くんですね。

「この本は100部ほどしか刷っていないはず。どうしてあなたが持っているの?」って。

親しい友人にしか渡していなかったというその本は、始めから大量の読者に向けて書かれたものではなかった。


     *


私の小説の続きを読みたいと言ってくれた人がいた。

数年ぶりの再会でだ。

数年前に一度途切れていたので、私は喜んで、私の小説を載せているブログのリンクを貼ってあげた。

あんなに私の小説を読みたいと言っていたくせに、

彼が気になったのは私の小説に対する評価だけだった。アクセス数だけだった。

あんなに私の小説を読みたいと言っていたくせに、

結局、私の小説なんて読みもしないで、アクセス数のチェックだけで終わった(らしい)。

きっと、評価が高くてアクセス数も膨大だったなら読んでもくれたのだろう。

でも、彼はしなかった。

私の小説なんてどうでもいいんだと思った。

わかったふりをして、実は何にもわかっていない。

美術館で絵画を前にして、いろいろな解説を垂れるのと同じ。

自分の心で観賞していない。

絵とか写真とか、もう、黙って見ていて欲しい。

蘊蓄うんちくなんていらない。

自分の知識をひけらかしたいだけなら私がいないところでやってください。

ワインも一言、美味しいとか美味しくないとかでいいんじゃない?

好きとか嫌いとかでいいじゃん。

映画だってそう。

興行収入が高い映画が必ずしも面白いとは限らないのに。

賞を取ったからって何?

昔の私は、カンヌ映画祭系の映画は、全て眠気をもよおすものと思っていた。


話は私の小説に戻るけど、

実際、『小説』と呼べるしろものかどうか。

強いて言うならば、『しょーせつ』程度のものだ。

そしてそれは、確かにほんのちっぽけなものだ。

なぜならそれは、自分に向けて書いただけのものだから。 

それから、あの人へ。

それから、もう一人のあの人へと。

全部で三人の人たちへ向けた小説だった。

人の目にさらされるNet上に置いたのは、

ただなんとなく、

あの人に知らせたかったから。

私があの人のことを大好きだったってことを。

一度も口に出して伝えていなかったから。

だから。

ただそれだけ。


     *


遠い昔、私はきみに、「そんな風に人を傷つけてもいいと思ってる人間に、いい曲なんて書けるわけないよ。」って言うつもりで電話をしたけど、もうきみがその電話に出ることなんてなかった。メールみたいに便利なものがない時代。だからそれで終わり。


人を傷つけたって、

いい曲をつくり、いい小説を書いて、いい映画を撮る人だっているに違いないし、

別にたいして良くもなくたって、

売れる曲をつくり、売れる小説を書き、売れる映画を撮る人だっている。

世の中は私も含めて善良な人間だけじゃない。

そんなこと知っている。私はバカじゃない。


売れたら、結局それはきみが言う 『勝ち』 なんだよね。

だったら私はいつまでも言いつづけるよ。

「あんたなんて勝ってるわけじゃないよ」って。

負け惜しみなんかじゃないから。

だって、それが明日にはパーンと割れて、全てが幻だったって気づくかもしれない。

幻の中で、夢を見たまま幻だって気づかずに死んでいけたらいいのにね。

その時は、「おめでとう!」と言って、抱えきれないほどの花束をあげるよ。

死んじゃったきみにね。




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