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61.じゃんぽ~る西 「パリ愛してるぜ」 と 最近のフランスに関する報道について いろいろ思う

たまたま本屋で手に取って読んだこの本は、長い間心の奥底に閉まっておいた、フランスへ旅立った頃の私の心情を、抱腹絶倒と共にことごとく呼び起こしてしまいました。

ラップに包まれた本の意味も分からず、家に帰ってラップを破いて裏表紙を開くと「じゃんぽ~る西」とフェルトペンのようなものでサインがされていて、いささか驚きました。サイン本だったのですね。この本は後年、高く売れるだろうか、だったら丁重に取り扱わなくてはならない、な~んて考えながら、さっき本屋で、ビニールがかかっていなかった『試し読み』したページを再びめくりました。


     *


ところで、今年、2015年1月13日(火曜日)に戻りたいと思います。

その日、ラジオニッポン放送の朝ラジの番組で、パリの某新聞社の襲撃事件のニュースに関して、アナウンサーの高島秀武さんがこのようにおっしゃっていました。


「フランスという国は非常にコスモポリタンである一面を持ち合わせているにもかかわらず、

案外フランス人は人種差別的な人が多いらしいそうで、この二面性が難しいようですね、云々・・・。」


確かに、そうかもしれないです。


過去に、アルジェリア系フランス国籍の女優さんが「フランスは人種差別の国」と言っていたのを思い出しました。彼女がそのように話しているのを直接聞いたわけじゃないのですが、雑誌にそのように書かれていたのを読んだ覚えがあります。うろ覚えで申し訳ないので、気になった方は調べてみてください。

フランスで女優としての才能を発掘され開花し、国際的大女優とまでなった彼女は当然、フランスという国に十分に愛されている女優さんだと思っておりましたので、彼女がそのような発言をしたことにいささか驚いたと共にショックを受けたことを思い出しました。


     *


日替わりでラジオ番組にやってくるコメンテーターの中には、「日本では到底できそうもないんだから、移民政策なんてやめた方がいいんだ。」って言っていた人がいました。

随分と乱暴な見解だと思いました。

本当にそうでしょうか?

こんなにも世界中にマーケットを広げているくせに、欲しい物だけを搾取して、それ以外は打ち捨てても構わないと思ってる。

使い捨てて、面倒になりそうなものには目をつぶる。

いかにもありそうな話です。


     *


昔、初めてのパリで地下鉄に乗った時のことです。

車内のボックス席で一人の若い女性と向かい合いました。

彼女はミルクコーヒー色の肌をしていました。

私が日本から来たと告げると、

「こんなに小さいのに一人で。偉いのね。」と言って笑いました。

私はもう既に小さな子どもではなかったのですが、

彼女が見た、身体の小さい私は小さい子どもに見えたのでしょう。

そして彼女は飛行場で働いていると自身のことを話してくれました。

「どこまで行くの?どこで乗り換えるの?」と人懐っこく尋ねてきますので、

「○○駅まで。△△で乗り換えるつもり。」と日本から持ってきたメトロマップを見せながら彼女に答えますと、

「まぁ、便利なものを持っているのね。」と言ってから、「△△駅は今、改装工事をしているから乗り換えはできないわ。□□駅まで行った方がいいわ。」

彼女はとても親切でした。

しかし、私は外国人で、パリをよく知らなくて、他人の言うことを素直に信じられませんでした。

全ての人に対してとても警戒していました。

しばらくすると、彼女は私よりも先に電車から降りるようでした。

「わかった? △△駅じゃなくて、□□駅よ。□□駅で乗り換えて。」

私の不安気な顔を心配したのでしょう。

向こう側のボックス席に数人で座っている座高が一番高い、肌がブラックコーヒー色の男の耳元に何かを告げて、彼女は電車を降りていきました。

おわかりいただけますか?

私は外国人で、パリをよく知らなかったのです。

ブラックコーヒー色の人をまじかで見るのも初めてでした。

△△駅で地下鉄は止まり、彼女の助言も聞かずに列車を降りようとすると、その背の高いブラックコーヒー色の男が「違うよ、□□駅だ。ここじゃない。」と立ち上がって私に言いにきました。

立ち上がった彼は予想以上の長身で私を見下ろしてきました。

私は「大丈夫よ。」と言ってそのまま降りてしまったのです。

△△駅で下車すると、ミルクコーヒー色の彼女や、ブラックコーヒー色の彼が言った通りに、やはり△△駅は工事中で、□□駅で乗り換えをするように駅構内に指示が書かれてありました。


     *


また、ある日のことです。

フランス旅行中に、地図を片手に道に迷い込んでしまうことがよくありました。

その日も、地図を見ていながらも道に迷い、ちょうどそばを通った女性に道を尋ねました。

太った黒い肌の人でした。

「ちょっとわかりにくいかしら。」と説明しながら彼女は私についてきました。

「途中まで一緒に行ってあげる。」

「でも、あなた、迷惑じゃない?」

「ぜ~んぜん。」

100メートルぐらい歩いたのでしょうか。

「ここまで来たらわかるわね。」

彼女はそう言ってニッコリと笑いました。

私はお礼を言って自分の目的地に向かって真っすぐに歩き始めた。

振り返ると彼女はまだ私を見ていて、私に手を振ってくれました。


     *


また別の日のことです。

アラブ街は食べ物が安く買えると聞いていたので出かけて行きました。

果実の屋台のムッシューと目が合いました。

私が日本から来たと言うと面白がって、それでも私がヘタクソなフランス語で、味見をさせてもらった pomme がおいしいと言うと、「もっと食べろ、もっと食べろ。」と言っては次から次へと、手のひらの小ナイフで切っては私に手渡してくれました。それからカフェに入ってコーヒーをごちそうになりました。カフェの中はアラブ人だらけでした。彼が「café !」と注文すると、小さいカップに入ったエスプレッソが二つ運ばれてきました。彼は小さいカップに角砂糖を二個も入れました。私は恰好をつけてブラックで飲みました。

私は彼に「日本に帰ったらハガキを書くから住所を教えて。」と頼みました。

彼は、はじめは少し躊躇していたようでしたが、「日本からのハガキを受け取ったらどんなにか素敵だろう。」

そう言って、ニコニコしながら私のメモ帳に住所と名前を書いてくれました。


またしばらくして。

ひどいホームシックにかかってしまった時、どの電車に乗るのかも混乱して頭が働かなかった時がありました。ほとんど泣きそうになっていた私を、わざわざ、列車の前まで連れて行ってくれたおじさんもアラブ人でした。


     *


短期の滞在しかしない『旅行者の視線』と『実際にそこに住んでいる人間の視線』とは確かに違うとは思います。

でも、旅をしていたその時の私が感じていたことは、

外国人の私に対して、こんなにも親切にしてくれる移民の人たちがいるフランスっていう国は何て素晴らしい国なんだろう。きっとフランスに住む移民はしあわせで、自身がしあわせだから他人にも親切にできるのだろうと。それは、この国がもたらした幸福だとずっと思っていました。 





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