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27.竹宮恵子 「風と樹の詩」 に思う

「あなたをこんな風に一人ぼっちにして。

それでも・・・彼女がいいの?」


「きみも昔、僕を一人ぼっちにしたよ。

忘れちゃったの?」


「これが、あなたのやりたい事?

音楽なんかとはかけ離れた、こんな全然違うことをやって生計をたてているんじゃないの。

そんなにこの生活が大切?

そんなにその女がいいの?

あなたにこんな仕事をさせて。

あなたの夢はどうしたの?」


「きみにはわからないよ。

どうせまたすぐに姿を消すんだろう?」


「もうどこにも行かないわ。

絶対にどこにも行かない。

ずっとあなたのそばにいる。

あなたのそばにいたいの。」


「もう、遅いんだよ。

終わったんだ。」


     *

     *

     *


風と樹の詩の中でも特に『アスランとパイヴァ』の恋物語が好きで、いつも心を奪われて読んでいました。

関連してデュマ・フィスの『椿姫』の小説も読んだのですが、こちらはあまり頭に入っていないようです。


アスランは、パリでの貴族の爵位も生活も捨て、パイヴァとの愛を貫いて、スイスの片田舎で慣れない肉体労働をしながら生計をたて、結核で若い命を落とすのです。当時の私はアスランに恋い焦がれる無邪気な一少女でしたから。

さて、実際の恋愛ってどうなんでしょう?

いろいろと月日と経験を積んできた少女はもう既に少女ではありません。

物語はあくまでも美しく清くあってほしいけど、実際に生きるってどういうことでしょう?

高級娼婦だったパイヴァが、パリでの贅沢な生活を棄て山村に引きこもり、自らも肉体労働に勤しむなんてことは果たしてできるのでしょうか? 女は所詮は女です。今まで使っていたシャンプーも、香水も、絹の下着だって身に付けることはできません。今までは目の前にあって手が届くところにあったものが無いことに不便を感じることはないのでしょうか。日々、汗臭くなった自分と、汗臭い夫と長い間むきあっていけるのでしょうか? ガチガチに固くなった髪と、ザラザラにごわついた肌の女をいつまでも抱きたいと思ってはくれますか? 


ジルベールは違います。

叔父(実際は父)から送金してもらえず、貧乏になってもなお、絹の服を身に付け、美味しい食事を欲します。

人間というものはそういうものです。いきなり生活を変えることなんてできないのです。

頭ではわかっていても、身体が理解できないのです。


過去に、「愛でパンは買えない。」と言って離婚をした女優さんがいました。

「ひどい女だ。」って言っていた人もいましたが、わたしは、ある意味それは事実だと思います。

案外、男性の方がいつまでも夢を見ているのかもしれません。


女はいつも現実的です。いつでも計算しています。私が女だからわかります。

いつだったか、男性にそのようなことを言ってすごく叱られたことがあります。

自分のカノジョは私とは違うと言いたかったのでしょう。

親しくもない人でしたから別にいいのですが。

夢を見ていたい人の夢を壊してはいけませんね。

自身が夢から覚めてみないとわからないものです。


     *

     *

     *


「あなた、しあわせ?

とても、しあわせそうには見えないわ。」


「きみはしあわせかい?」


「しあわせよ。

でも、あなたがいてくれたら、もっとしあわせになれる・・・。」


「僕はできない。

きみとはできないよ。」


あなたからそう告げられて、

もう何年も経ちました。

わたしは今でもしあわせです。

あなたがいなくてもしあわせになれました。

あなたなしのしあわせをさがしました。

あなたがいなくてもしあわせになれることを理解しました。

あなたが今のわたしのしあわせをくれました。

どうもありがとう。

あなたはどうですか?

やりたいことはやれていますか?

やりたかったことはやれましたか?

・・・よかったです。

なりたいものになれたのですね。




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