10.萩尾望都 「とってもしあわせモトちゃん」 に思う
中学生の頃、声優になりたいと言っていた友人がいました。
獣医さんになりたいと言っていた友人もいました。
彼女らはどうして夢を断念してしまったのでしょう。
聞いたのに忘れてしまいました。
その後、医者になった子もいたし、ロケットを造りに行った子もいました。
スポーツ選手になった子もいました。
あなたはなりたいものになれましたか?
生きたいように生きてこれましたか?
・・・そうですか。それならよかったです。
もうあなたの心配はしないことにします。
大人になる前に死んでしまった子も何人かいました。
私はスナフキンになりたかった。
あのムーミンの友人のスナフキンのことです。
「兼高かおる世界の旅」に憧れた人はたくさんいるのでしょう。
子どもの頃の私には、他にもなりたいものがたくさんありました。
メリーベルになりたかったし、(『ポーの一族』)
アンジェリンになりたかったし、(『風と樹の詩』)
セッチにもなりたかったし、(『火曜日の条件』)
鬼姫にもなりたかったのです。(『サスケ』)
それでも一番なりたかったのは、フランス人の女の子でした。
なれるわけなどないことはわかっていました。
ですから、フランス人の女の子「のように」なりたいと考えるようになりました。
『とってもしあわせモトちゃん』のモトちゃんは、風に吹かれて飛んで行ってしまったレミちゃんを探すために旅を始めます。町で出会ったメガネの女の子と列車に乗って旅を続けます。
緑の太った妖精ということが人間にばれてしまってはマズイので、コートに、頭にはほっかむり、そしてサングラスといった出で立ち(モトちゃんは男の子ですが、その格好はまさにおばさんになってしまいました。)で列車に乗り込みますが、たぶん、ヨーロッパの列車なのでしょう。そこに居合わせた全ての言葉の違う人たちと楽しくおしゃべりを始めます。その中の一人が一緒に旅をしているメガネの女の子に向かって、「きみのおばさんはすごいね、みんなの言葉がわかるんだねっ!!」と言うのです。
この作品の作者、萩尾望都さんのお父様も語学に堪能な方でいくつもの外国語を操ることができる、と後の萩尾さん関連の読み物で知ることができました。この作品は、萩尾さんのお父様に対する敬愛がこもっているのかな、とその時に思いました。
その後の私は、すごいおばさんになりたいな・・・って思うようになりました。
すごくなくても、普通のおばさんになるのは簡単なはずなのに。
都はるみさんは、普通のおばさんになれたのかなぁ。