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5A列車 高畠

 11時14分。ここまで乗ってきたE3系(イースリーけい)「つばさ」は「つばさ140号」として東京(とうきょう)駅に戻っていく。

「レイ。今のうちにお昼買っときな。」

と言った。

「えっ。もうお昼。まだ早くない。」

「次に乗る予定の列車に乗っちゃったら山形(やまがた)について1時。それに乗り換えの時間が少ないから、ここで買っておいたほうがいいよ。」

「・・・分かったよ。」

レイはそう言うとコンビニのほうに歩いていこうとし、

「シャーク何にする。カツオ、サケ、コンブ、ウメ。」

「じゃあサケと二つとカツオ一つお願いね。」

「後でちゃんと請求するからね。」

(おごってくれるんじゃないんだ・・・。)

しばらくたつとレイが袋を提げて戻ってきた。その中に入っていたおにぎりを食べ、乗る列車を待った。

 ここに姿を現したのは701系という交流専用の電車だった。ここが新在直通という理由の一つだ。新幹線は元あった在来線の軌道を借りて運行している。しかし、そのまま借りたのでは新幹線は走ることができない。そのための工事を行い、新幹線が通れるようにしたのだ。秋田新幹線(あきたしんかんせん)も同じことを施した結果なのだ。

「ねぇ、あたしたちこれからこれに乗るの。」

「えっ。そうだけど。」

「これじゃあ新幹線乗りつくしにならないじゃない。」

「あのねぇ。全区間で新幹線乗るだけが乗りつくしじゃないって。時にはこういうこともしないとすごく金がかかるの。」

「もうすっごく金かけてると思うけどねぇ。」

「・・・。さっ。乗るかぁ。」

レイを促して、車両のほうに行った。レイのほうが先に701系に到達したが、中に入ろうとしない。

「ねぇ、シャーク。これってドア閉まってるよねぇ。」

(それは東京(とうきょう)の常識だっつうの。)

ドアの近くにあったボタンを押すとドアが開いた。

「えっ。そんな単純なことしないと乗れないわけ。」

「まぁ、東京(とうきょう)から修学旅行以外で出たことがない人にはすっごく珍しいことかもしれないけど・・・。」

「・・・。」

「世の中にはこういうところもあるってこと。」

とは言ったものの僕はここ以外でこういう光景を今まで見たことがないから何とも言えなかった。

 11時42分。こっちの列車も発車時刻になった。ドアは季節のせいか全部閉まったままだった。東京(とうきょう)ならドアを閉めてから発車するというのがふつうだが、こっちのほうではこういうことがふつうにあるらしい。

「やっぱ地方って違うよねぇ。こんなことまであるんだもんね。」

レイは独り言を言った。

 列車は途中に長時間停車もなくすいすいと走って行く。山形新幹線(やまがたしんかんせん)の運行形態は山形(やまがた)から福島(ふくしま)までの間の米沢(よねざわ)赤湯(あかゆ)、かみのやま温泉(おんせん)は1時間に一本の「つばさ」が停車。高畠(たかはた)のみ2時間に一本単位で停車し、その先新庄(しんじょう)まで直通する「つばさ」は山形(やまがた)から新庄(しんじょう)までの各駅に必ず停車する。運転本数がガクッと減るからだ。

 終点の山形(やまがた)に到着。この列車はそのまま折り返す。だから客が降りたら、今度は新庄(しんじょう)のほうへ行く客を拾う。僕たちのほうはここからまた「つばさ」だ。もうすでにホームに停車していた。

「何この顔。なんか笑ってるみたい。」

レイがそう言った。そう言いたくなるもの無理はないだろう。E3系(イースリーけい)2000番台は1000番台や0番台より、前方をよく照らせるらしい。そのためにヘッドライトの形状を変えたのだ。そして、そのヘッドライトが目の上を丸くして、ケタケタ笑っている人の顔に似ているのだ。僕的にはこのデザインはどうも苦手で、前のイメージをあまり崩してほしくなかったというのが本音だ。

「ねぇ、シャーク。シャークってば。」

「えっ。」

「乗らなきゃいけないんでしょ。早く乗ろうよ。」

「あっ。ああ。」

気はあまり進まなかったけど、乗るしかない。車内に乗り込んでみたが、1000番台とさほど違いはない。まぁ、見た感じではわからないというところのほうが多いか・・・。

「シャーク。ちょうどあいてるところ見つけたよ。」

レイに呼ばれてそっちに行く。先の細かったのがあだになったか。レイは窓側に陣取っていた。

 高畠(たかはた)に到着すると列車を降りた。ここには昨日言ったとおり温泉がある。ここの温泉に入って何とか時間をつぶそう。そして、昨日からだけど、疲れを取ればいい。

「こんなところに温泉があるとは思えないけどなぁ。」

「文句言わない。昨日入りたいって言ったのどこの誰だよ。」

「・・・。」

「入りたくなくなったか。俺は入って来るけど。」

「入りますよ。」

 レイと別れて、僕は男湯のほうに入った。外が見えるというわけではないけど、駅とはお目ないというのが心の中で思ったこと。数人の温泉客もいるみたいだ。身体を洗って湯船につかると、

「オタクもこの風呂目的かい。」

隣の人が声をかけてきた。

「えっ。まぁ。・・・あのどこかで・・・。」

「ああ。さっきの「つばさ」の中で見かけたもんでね。」

「あっ。それで。」

40歳ぐらいに見えるその人は漆山(うるしやま)から来たらしい。どこかと聞いてみたら、山形(やまがた)のすぐ近くらしい。そこからでもふろに入りに来るとは・・・。そのためだけの人も少なくないと書いてあったあれの理由が分かった気がする。僕らだってその目的だけで来たのだ。

「しかし、電車が少ないからね。さっきもこの先の普通があるかなぁって思ってたけどないから仕方なく「つばさ」に乗ってきたんだよ。」

(まぁ、1時間に一本あればましな方だよなぁ。)

そんな会話をしていたら、レイのことなどすっかり忘れてしまった。


温泉がある新幹線の駅は高畠だけです。時間があったり、世の中に疲れた人は行ってみては?

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