3A列車 雪遊び
「ちょっと待ってよ。ここに来たらすぐにとんぼ返りするってこと。」
「ああ。まぁしたくないんだったらしなくてもいいけど。」
「じゃあ、秋田観光しない。」
「観光って言ってもなぁ・・・。」
「・・・シャークってそういうがらじゃないもんね。」
レイはそうつぶやいた。さすが。よくわかっている人だ。僕的に言ったら電車に乗っているだけでも十分旅にはなっている。だから、そのままとんぼ返りしたいという気もあるが、このままとんぼ返りするのでは話にならない。だから一本は遅らせることにはなる。
「じゃあ、どこ行くんだ。」
「八郎潟。あそこ行ってみたい。」
「・・・お前感覚大丈夫か。あすこはただの湖だぞ。」
「湖とはなんだ。あすこはただの農地だよ。」
「やっぱお前感覚おかしい。精神科医の観光したほうがいいんじゃないか。」
「まぁ、八郎潟は冗談。近くに公園あるし、そこまで行ってみない。」
ここは例の意見に乗ることにした。秋田駅から出てくると道路と歩道、建物の壁以外は白に染まっている世界が広がった。東京でも雪は積もることはあるけど、こんな風になることはない。
「わっ。ちょっと。」
後ろでレイの声がしたと思った瞬間雪の上にたたきつけられた。
「イテテ・・・。」
雪のクッションがあって少しは違ったけど・・・。さすりながら起き上った。
「何するんだよ。いきなり。」
「ごめん。近くにいた・・・うわっ。」
とっさに例の手が僕の腕をつかむ。僕だってこうなるなんて思ってない。踏ん張ってもいなかったから、今度はレイの上に折り重なった。
「シャーク。重い。」
「悪かったな。重くて。」
「ねぇ、今のに便乗して、おっぱい触ってないよね。」
「触るか。」
起き上ったら、今度はレイの手を握ってレイを立たせてやった。そして、また数歩進むとこけて、立たせて、数歩進むとこけてを繰り返しながら、何とか近くの千秋公園までは来た。
「イタタ。もうだめ、体中痛い・・・イツツ。」
「じゃあ、そこらへんで座ってればいいじゃん。」
「なんでこんな冷たい雪の上で座らなきゃいけないのよ。今度は冷えるじゃない。」
「つくづくバカだな。雪に上に座れって誰が言ったんだよ。」
「・・・。」
ちょっと経ったらレイはベンチの上に腰かけていた。ちょっと歩き疲れたという感じだった。僕だってそんな活発に動くつもりはない。じゃあ、何をしてようかなぁと迷っていた。こんなにたくさんの雪があるんだ。雪合戦も悪くないけど、二人でやるほど空しいものもないかぁ。
「・・・。」
ひらめいた。ここにある大量の雪を使って大きいものを作るほどの時間はないけど、小さいものならすぐにできるかぁ。そう思って白い雪に手を突っ込んだ。一気に手が冷たくなる。
(・・・我慢。)
数分後。
(できた・・・。)
レイはベンチに座ったまま。動くところ部からそこに座ったままなのだろうか・・・。
「レイ。」
作ったものを体でかくして、レイを呼んだ。レイのほうからは歩いてきそうにもなかった。仕方ないので、レイのところまで行って、手を引っ張ってその場所まで連れて行った。
「うわぁ。雪だるま。・・・ののっぺらぼう・・・。」
「文句言うな。あんな便利機能なもの持ってないんだから。」
「・・・シャーク。ちょっとそこにいてよ。」
「・・・。」
例はスマートフォンを構えておそらく写真をとった。入れ替わって、僕がスマートフォンでレイと雪だるまをとる。写真でとってみたけど、ちょっと小さすぎたかなぁ・・・。雪だるまとふつうの雪の区別が・・・。まぁ、いいか。
タクシーで帰るということをせずに駅まで歩いて戻った。そろそろ今日どこに泊まるかぐらい決めておかなければ。バッグの中に入っているコンパス時刻表も取り出した。今の時刻は16時50分。秋田駅まで戻る間に30分ぐらい時間がたってしまうと思われる。
「レイ。今日は盛岡に泊まっていいよな。」
「えっ。うん。」
「というかもう決定事項だけど。」
「ふぅん。でこっからどうするわけ。」
「ああ。「こまち40号」で盛岡まで出て、今日はそこで終わりでいいだろ。」
「・・・ホテル予約してあるの。」
「してない。だから頼む。」
「どんだけバカな旅行なのよ。そういうこと考えときなさいよね。列車だけ考えて、そこ考えてないって。無計画にもほどがあるわ。」
「じゃあ、さっきお前のパンツ見えてたこと言ってもいいか。」
「はっ。」
レイは自分の足元を見たが、すぐに
「何パンツ見えてたよ。今日はあたしはズボンよ。」
「ヘイヘイ。どうでもいいから予約頼みます。」
「・・・今日だけだからね。ていうか、今日盛岡のホテルに入ったらちゃんと計画立てておくのよ。」
「分かったよ。」
18時ちょうど発の「こまち40号」に乗り、盛岡に19時39分。
「とりあえず近くのホテルとれたんだけど、一人部屋は全部空いてなかったから二人部屋なんだけど。」
「なんだ。二人部屋かぁ。」
「お風呂。のぞかないでよ。」
「除くか。お前の裸だったらいやってほど見てるよ。」
「なっ。」
レイは僕の胸ぐらをつかんでくると、
「マジで。小学校低学年の時は別として、それ以上の時の裸も見てるってこと。」
「まぁ、冗談だけどなぁ。」
「・・・。いや、でも小6の時にあたしが体操服着替えてるとこ。」
「まだあれは下着着てたからいいんじゃないか。それに俺が見たときには下はちゃんとスカートはいてたし。」
「・・・。」
ホテルに着いたところで、その話も中断。僕はこの先の工程を考えた。頼りになるのは持ってきているコンパス時刻表。これだけを頼りにこの先の計画を立てていく。
(うーんと、まず明日は「はやぶさ4号」で仙台まで行って、その次は「やまびこ126号」その次は「つばさ123号」で新庄だよなぁ。新庄でまたゆっくりするものいいけどもし2000番台だったらごめんだよなぁ・・・。じゃあ、11時42分の普通で山形まで出て、13時06分の「つばさ142号」で高畠まで行ったら、・・・同じことかぁ・・・。「つばさ146号」まで待って大宮が17時30分。「MAXとき339号」で高崎まで出たところで終わるか。・・・いやでも中途半端たよなぁ。その次の日に長野新幹線に乗るとも決まってないし、第一このままいったら・・・。)
しばらく考えていたが、結局結論として明日は高崎を目指すことだ。
「シャーク。お風呂入ってきたら。気持ちいよ。」
「ああ。ちょっと待って今はいる。」
後ろのベットに腰かけているレイを見た。
「なぁ、レイ。お前明日温泉にでも入るか。」
「温泉。」
「ああ。」
「入りたい。入りたい。」
「じゃあ、楽しみにしとけ。」
(1時間以上入ってたらレイがふやけちゃうなぁ・・・。)
それから僕はシャワーを浴びた。とても体の芯まで温まるということはできない。これは明日本当に芯まで温めてくれなければ・・・。
風呂から出ると計画した2日目の行動を書き溜めた。
「どこで温泉に入るの。」
「えっ。秘密だよ。」
レイにはそう言っておいた。レイが得た後僕はスマートフォンで調べた。安上がりで済むところがうってつけだった。
めちゃくちゃしたいよ。俺も雪遊び・・・。
でも、僕の住んでいるところは雪降ってくれないんですよねぇ。2月2日の時はこちらでも雪積もりましたけど・・・遊べるなんて両じゃないんですよねぇ。皮肉なことに。