2A列車 連結 解放
「はやて」を降りたら、すぐに10号車の方に向かった。最初、僕たちは「はやて」の切符を盛岡までしか買っていない。ふつうに考えるなら、ここで乗り換えるというのがふつうの考え方だ。間違ってはいないが、それだけでは面白くない。
「はぁ・・・シャーク・・・。走ってどうしようっていうの。」
(遅かったかぁ・・・。)
「ねぇ、シャーク。」
僕はE2系の先頭を見ていた。こんなに早い段階で開けるものなのか・・・。だとすれば、これが開く瞬間をとらえることができるのは1時間ぐらい後の話になる。
(そこまで待つのはいい。だけど・・・それをやったら「こまち」を1本遅らせなきゃいけない・・・どうする。まぁ、今昼だし、待つのはいいけど・・・。)
「レイ。」
ダメもとで口を開いた。
「何。」
「14時22分までここにいていいか。」
「はっ。」
(それで当然だよなぁ・・・。)
「いていいわけないでしょ。そんな時間まで待てないよ。つうか次「こまち」に乗るんでしょ。「こまち」だったら、13時22分のやつに乗っていけばいいじゃん。なんでそれ見送るのよ。」
「ふぅ・・・。いやぁ、己の欲求を満たしてから出ないと・・・。」
「何わけわかんないこと言ってるのよ。」
「間もなく12時、41分発。「こまち、24号」、東京行きが、到着いたします。安全柵の内側まで、下がって、お待ちください。」
そのアナウンスが聞こえたら、モードを切り替える。レイにかまわず、E3系が来る方面を向いた。向こうから白いライトを照らしたE3系「こまち」が入線してくる。
「・・・。」
「まぁ、大きな口開けてる。カワイイ。」
(カワイイか・・・。)
これを見ることができるのも1時間後かぁ・・・。どうしようか真剣に迷うところだ。
「こまち」は一度「はやて」の手前で停車。すぐにゆっくりとしたスピードで前に進み、「はやて」と連結。それまでつけていたライトを消灯して、下げていたパンタグラフを上げる。そして、ここで降りる客を降ろす。
「レイ。やっぱり14時22分の「こまち」まで待つかぁ。」
「どうしたの。なんで待つ必要があるわけ。」
「だから、欲求を満たしてから出ないと欲求不満で・・・。」
「何が欲求不満よ。」
「じゃあ、帰れ。一人で。」
「えっ。帰るなんて。一人じゃ迷っちゃうよ。」
(電車に乗って迷うことってあるか・・・。)
「まぁ、迷いたくなかったら、俺に従うんだな。数日間は。」
「その数日過ぎたら、今度はあたしがシャークをこき使うからね。」
(子供みたいなこと言ってるなって・・・。)
連結が完了した「はやて」と「こまち」はここから東京まで、折り返しの「はやて」・「こまち」でここまで、この状態のまま走り続ける。東北新幹線では今や当たり前のことで、このような状態で走っている新幹線はほかに山形新幹線の「つばさ」。東北・上越新幹線の「MAXやまびこ」「MAXとき」の16両編成だ。このようなことを行っている理由として、よりたくさんの乗客を運ぶ。または列車の運転本数を増やすことなく行先の違う列車を運転するという理由がある。
「はやて・こまち24号」東京行きは定時発車。それを見送ったら次はお昼の番。またちょっとお昼のことでもめて、13時10分またこの場に戻ってきた。
「だから、シャークは頭がおかしいんじゃないの。どうして、「こまち」の秋田行き見送っちゃうのよ。」
「・・・分かってねぇなぁ。見送ったら面白くないんだよ。」
「どこがどう面白くないのよ。理由を分かるように説明してよ。」
「えっ。簡単だよ。連結を見たら次は解放を見るに決まってるだろ。」
「・・・それはオタクの考えでしょ。」
「オタクじゃなくても考えるやつは考えるだろ。」
(オタク以外そんなこと考えるか・・・。)
さて、そんなことはさておき。ここでやると決めたことはやらなければ。13時22分。ここには東京から来た「こまち・はやて23号」が入線してくる。まずは「こまち」の先頭車両を撮って、今度は走って戻り、「はやて」と「こまち」の連結面を撮影。その時にはすでに「こまち」はテールライトをつけて、発車する準備を進めていた。恐らく見かけ上つながっているように見える連結も切られているはずだ。後は発車時刻になったと同時に「こまち」が走り出すだけでオーケイだ。
13時24分。「こまち23号」秋田行きの発車時刻だ。「こまち」はここからATC(自動列車制御装置)から解放されて、在来線区間を走行する。そのため、ここに線路には在来線で見かける信号機が取り付けられている。ここを発車したら、事実上在来特急と同じ状態になる。
「こまち」は発車してしばらくすると飛び出してきていた連結器を収納しながら、大きく開いた口を閉めて進んで行く。これは車内からでは絶対に見れない光景だ。それを写真と動画におさめて、今度は「はやて23号」のほうを写真もおさめる。「はやて」もすぐに発車していき、東京行きの「はやて26号」と「こまち26号」の連結を見て、14時22分ここにくる「こまち25号」秋田行きを待った。
14時22分。待っていた秋田新幹線「こまち25号」が到着した。「こまち」も前者指定。い則ことはないけど、2分後には発車してしまう。指定されているのは12号車16番A席とB席。13号車のドアから入ったほうが近いからそっちから車内に入った。
(ドアステップかぁ。初めて踏むな。)
ドアとホームに間にあるドアステップをわざと踏んで車内に入った。これは新幹線区間でなければ踏めないものだ。秋田新幹線と山形新幹線のE3系はふつうの新幹線車両よりも一回り小さい。つまり、ドアステップがないと乗客はホームと車両の間に簡単に落ちるほどの隙間があるのだ。そうさせないためのドアステップだ。そして、E3系は在来線の車両限界に合わせて作られているため、在来線区間にはいれば、このステップを使わなくても乗客の安全は確保される。
「シャーク。さっきあたしのこと子供だとかなんとかって言わなかった。」
「えっ。」
「あたしより、シャークのほうが子供なんじゃないかなぁ・・・。」
「・・・うるせぇな。子供はお互い様だろ。」
(認めるんだ・・・。)
ふと外を見た。まだ外には雪が舞っている。「こまち」は結構高いところを走っているのが分かる。だんだん下がってきて、在来線の線路が合流してくる。田沢湖線だ。しばらく走ると視界が電車にさえぎられた。田沢湖線の普通列車だ。それをぐんぐん突き放して、田沢湖に停車。それからも快調に田沢湖線を飛ばして、大曲に到着。
「あれ。シャーク。なんか変じゃない。」
大曲を発車すると途端にレイが口を開いた。
「別に。大曲じゃふつうのことだって。」
それから無知のレイに説明。理解したのかは置いといてね・・・。
秋田到着15時56分。ここからまた盛岡まで戻ってということもできるが・・・どうする。
E3系はもうすぐE6系に代わってしまうんですね・・・。さみしいです。あれ結構好みなんですけど。