13A列車 帰路
翌日。
「レイ。起きろ。レイ。」
レイの身体をゆすった。だが、なかなか起きようとしない。まだ5時過ぎたばっかりだが、今日はのんきに朝食をとっている場合ではないのだ。
「いい加減起きてくれよ・・・。」
「んっ。」
ようやっとレイの身体が起きた。
「今何時。」
レイは目をこすりながら、近くの時計を見た。その時間を見るとレイの目が覚めたらしい。
「早っ。まだ5時10分じゃない。」
「早っ。じゃねえよ。今日はゆっくり朝ごはん食べてる暇もないんだから。」
6時になるとホテルを出る支度をして、出た。鹿児島中央駅のほうに歩いて行って、新幹線ホームに上る。止まっていた800系に乗り込んだ。乗り込む前に800系の初代か新800系かを確認した。ラインがところどころ湾曲したりしているから、新800系であるということを結論付けた。
800系はそれまでの新幹線と違い九州独特の雰囲気を漂われている。洗面台ののれんや窓のブラインドに使われているものは九州の伝統の技がたくさん織り交ぜられている。そして、とても硬い感じのする普通車の席は織物を採用してあり、他形式の普通車よりも温かみが感じられる。
「なんか贅沢してる気分かも。」
レイは織物のクッションを抑えてそうつぶやいた。贅沢かぁ。ここは贅沢に普通車の旅を楽しむとするか。
6時27分に鹿児島中央を発った「つばめ328号」は終点博多まで各駅に停車。僕たちはそこまでこの800系に揺られ、博多からはN700系の「のぞみ」で早くて13時33分の到着をもくろんでいる。だが、「のぞみ」に乗り換える前に新大阪からの「みずほ601号」をとるとしているから、「のぞみ」の乗り換えには余裕を持たせて、確実に自由席に座りたい。そこはあとあと考えればいいかぁ・・・。
「つばめ328号」で途中の新八代に来た。部分開業の時は鹿児島中央からここまでしか開業しておらず、博多では「リレーつばめ」が「つばめ」の客を請け負っていた。そして、去年の3月12日に全通を果たした。
(ここに「リレーつばめ」が来てたのかぁ・・・。)
今は来ることのない車両を想像した。
熊本を出ると駅間が詰まってくる。駅の設置については相当議論されたが、結果的にこうなることが決定した。その中でも特に短い新鳥栖~久留米間は5.7キロしかない。この駅間はもはや新幹線の駅間ではないが、これには九州新幹線の長崎ルートのための設置だ。駅にはそれぞれ理由があって設置されているものが多い。そういうことを知ると結構興味深いものがあるのだ。
新鳥栖で後続の「みずほ600号」に抜かれ、その先は博多まで。列車を降りたら、すぐに走って「みずほ601号」が止まるホームに赴いた。昨日乗ったのと同じN700系の写真を撮ったら、今度はホームを変えて「のぞみ」のN700系を待った。
「はぁ、これでようやっと帰れるのね。」
「ああ。」
「・・・シャーク。もう二度と一緒に旅なんかしないからね。」
「ああ。そうしろ。俺と一緒にいたらいつか死ぬぞ。」
「・・・。」
「・・・思ったより時間かかったなぁ・・・。」
「えっ。」
「いや、一日でできないってことは分かってても、こんなにかかるものとは思わなかったってだけ。新幹線ならもうちょっとまわり方が早いと思ったけど、違うんだなぁってこと。」
「・・・。」
しばらくたつと乗るN700系が入線してきた。それに乗り込んだら、あとは寝てもいい。だけど、寝たら一つだけ楽しめないものがある。東海道新幹線に入ってからの車体傾斜だ。それを楽しむためなら、根性で起きている必要があるだろう。そう思いながら、外を行く車窓を眺めていた。
この話、最後まで読んでくれてありがとうございます。旅なのでもうちょっと出会いがあってもよかったのではと思いましたが、ご了承ください。表現の苦手な作者なので。
さて、暇があったら乗りつくしの続編も考えてみます。次は東海道本線各駅停車にしてみようかなぁ・・・。
後、僕はマニアしか読まないような小説を書いているわけではないので・・・。僕のほかの作品もよろしくお願いします。