11A列車 「こだま」・「ひかり」旅
新大阪20番線。山陽・九州新幹線の当駅どまりの列車が発着するホームだ。基本山陽新幹線内の「こだま」と九州新幹線の「さくら」・「みずほ」はここから発車する。階段を上がってホームに上がってくると、東海道主流の白と青ではない、異質の車両が止まっていた。まぁ、今となってはこれの「こだま」は当たり前になってしまっているが・・・。
「・・・シャーク。これって500系だよねぇ。」
レイが口を開いた。
(覚えてたんだ・・・。)
「ああ。そうだよ。」
「なんか短くない。」
(さすがにこれぐらいは違いが分からないとバカ丸出しだよなぁ・・・。)
「ああ。2008年見たのとは違う。半分になっちゃったからなぁ。」
「・・・。」
(ああ。レイじゃなきゃ盛り上がれるのになぁ・・・。)
それはさておき、車内に乗り込んだ。僕は500系には乗ったことがある。車内の丸いデザインは相変わらずだ。昔はこのデザインの斬新さに感激したものだった。500系を偶然にでも見たら、ジャンプせずにはいられないほどだった。
(さて、8号車のほうでもいくかなぁ・・・。)
「シャーク。ここにも空いてる椅子あるけど。」
レイの声が聞こえたが、かまわず8号車に行った。
8号車の運転室よりには運転台を模した設備がある。そこに行って座ってみた。大人がすることではないけど・・・。確かに。そこは子供のためを思っているだけあって幼稚な作りになっているが、子供なら喜べるだろう。ちょっとだけいじったら、8号車の開いている席に移動した。
新大阪を出ると次の停車駅は新神戸。新神戸はご存じの人もあるかと思うが、トンネルに挟まれた場所にある。熱海も同じような形状にはなっているが、熱海はまだトンネルまで距離がある。ここは駅を出たらすぐにトンネルに入る。次は西明石。その次は姫路だ。姫路では国内最速の300キロを出す場所。ここを通過する新幹線は最高速で通過していく。何本かやり過ごして、相生に。岡山についたら500系とはここでお別れだ。
「さて、レイ。また駅弁にでもするか。」
「次の新幹線って何時のやつよ。」
時計をちらっと見てから、
「大体1時間後。」
「1時間もあるなら、レストランとか入って食べてもいいじゃない。」
「まぁ、文句言うな。いざというとき外に出てたら、すぐに行動できないだろ。」
(そうだけど・・・。)
まぁ、まずは昼。また駅弁で済ませて、次に乗る列車は岡山から広島まで。
「はぁ・・・。また「こだま」なんでしょ。いったいなん駅に止まったら気が済むのよ。」
「在来線じゃないだけましと思え。在来線だったらまだ名古屋あたりだろうぜ。」
言いながら、僕は「こだま」がくる方向をにらんだ。
(また、どっちかは賭けだな・・・。)
その時間になった。
「今日は結構運がいいなぁ・・・。」
と僕がつぶやいた。すると隣で、
「ふぅん。星座占いはビリなのにね。」
まぁ、今はそんなこと関係ない。その列車は100系だが、ただの100系ではなかった。復刻色をまとった編成だった。編成番号はK53編成。止まってドアが開くと車内に入った。車内は東海道新幹線を走っていた時代からは結構変わっているシートは全車両2列+2列になっており昔の面影はない。
100系は1985年デビュー。それまでの0系の代わりとして量産され、新幹線で初めて2階建てを採用した。今は連結されていないが、そこは食堂車になっていたりした。その後JR西日本が2階建てを4両連結した「グランドひかり」を走らせるなどバライティに富んだが、それも後継車両に押され、300系と同様2012年3月に引退することが決まっている。
(もうちょっとしっかり乗っておくべきだったなぁ・・・。)
窓の外を見て、思った。今の車両から比べれば、遅いけど、100系は着実に広島までコマを進めてくれた。
広島で100系を降りる。次は「のぞみ」に抜かれない「ひかり」の番だ。15時54分。その車両が姿を現した。さっき乗った700系だが、違うのは長さとその色だ。この700系は500系と同じようなとそうだが、ラインは紫ではなく黄色。これの愛称は「レールスター」だ。
「レイ。まだ最後じゃないけど、こいつで駅飛ばしてくから、ちょっとは安心しろ。」
「ちょっとって何よ。」
文句を言うレイお構いなしに椅子に腰かけた。
この「ひかりレールスター」はそれまで走っていた「ウエストひかり」の光景。そのため「ウエストひかり」で好評だった2列+2列のシート配置などはそれと合わせてある。他に8号車には4人用個室。5号車は緊急時以外アナウンスをしない「サイレンスカー」(現在はふつうに案内されている)など。独自の設備もある。
レイは僕の隣で寝入っていた。ここまでの移動だけでも相当疲れたのか。それとも眠気をそそる時間なのか・・・。
新下関を通過すると山陽新幹線最長の新関門トンネルに入る。このトンネルをぬければ九州だが、この新関門トンネル内で、東京から1000キロ地点を過ぎる。小倉、博多と止まってしまえば終点だ。
「ご乗車ありがとうございます。間もなく終点、博多。博多です。」
アナウンスがそう言った時にレイが目を覚ました。
「さて。降りるんでしょ。」
「降りなくていいよ。」
「えっ。」
レイの声が短く終わった。
「なんで降りないの。そのまま車両基地にまで連れてかれるつもり。」
「ああ。そのつもりだよ。」
「あのねぇ。車両基地は電車だけのホテルでしょ。そこに人が言ってどうするのよ。今日は列車と夜を明かす気。あたし嫌だよ。」
「いやなら降りろ。俺は降りないから。」
(どうかしてるんじゃないの・・・。)
車体の色というのはこういう色に近いよというだけなので、その色が塗られているわけではないです。