0x7 入部の条件
「あ〜、どうしようかしら。
部員数が五人以上にならないと、同好会扱いで部として正式に認められないんだって……」
夕日が差し込み、埃っぽい部室をオレンジ色に染めている頃。
部室の隅で、透華は一枚の紙を広げながら、朔にぼやいていた。
「顧問はまだいいとして、部費がもらえない。そこが一番の問題ななのよね……」
透華は眉をひそめ、不満げに呟く。
「仕方ないだろ。それがこの学校のルールなんだから」
朔は肩をすくめ、透華を見やった。
「でも、どうするんだ? こんな変な部活にあと三人も集められると思うか?」
「ちょっと朔、変な部活って何?
もういっぺん言ってみなさいよ!
あんたの頭を洗脳して、
実写版《《真っ黒コ◯助》》に闇堕ちさせてあげるから」
「どうしてそうなっタァァァァ~!!」
コツンコツン!
透華「朔はどうしてそんな大きく口を開けたまま、キモく劇画チックに石像の様に固まってるナリか?」
ガシャガシャ。
透華おばあさんがカチコチになった朔のボディーに包丁をあて切ろうとすると、あら大変!
「おや、まぁ〜!」
なんと、桃ならぬ石像の中から、無駄に大きく成長した男の子が生まれたのです。
「嘘つけー!!
それに真っ黒コ◯助って何だよそれ?
俺初耳なんだけど。
それって、言葉のチョイス、いろいろと間違ってるよな?」
※朔の想像
(カサカサカサ! ポタ……、ポタ……、ギョロ!!
まっくろコ◯助「美◯ちゃん、ごちそうさまナリ~♪」
美◯ちゃん「…………」)
「実写版 怖ェ〜よ!!」
朔は必死にツッコミを入れるが、透華はどこ吹く風といった様子で、話を続ける。
「まあ、なんとかなるっしょ。確か、凛なら……」
透華がそう言いかけた時、部室のドアが開いた。
「透華、お待たせ」
入ってきたのは、あの時の朝比奈凛だった。
透華が放課後、この部室に凛を呼んでいたのだ。
「ねえ凛、聞いてよ! 大変なの!」
透華は凛に駆け寄り、事情を説明した。
中略(←書きかけじゃなく演出上の)
「それで、凛にも入部してほしいんだけど……ダメかな?」
「え? 私が?
で、でも私、ソフトテニス部とかけもちだし……」
凛は戸惑ったように答えた。
「大丈夫よ! かけもちでも全然構わないから! ね? お願い!」
透華は凛の両手を握り、必死に頼み込んだ。
*能力使用中*
(あの時の反応から凛は、本当はミステリーにも興味があるはず……。それにもう一つ)
透華は凛の過去の言動。目の動き、口元、そして彼女の身振り手振りから思考を読み取る。
(ふ〜ん、やっぱりね。
凛には独特の癖がある。
私と朔との会話に立ち会っていた時、凛はずっと何かを思案している様子だった。
考えてみれば、クラスの決め事で男子同士が言い合いになった時、凛は一人下を向き、黙々とペンを走らせていたっけ。
それに……、あれは確か体育の時間。
男女別々に分かれて
隣り合うコートで競技をしている時も、彼女のポジション取りは明らかに自分に不利な場所で、動きも不自然だった。
しかし、女子同士しかいない環境の時はそんな不審な行動は一切とらない。
つまり、重要なのは以下の事ね。
凛が男子を観察している時、その男子が特定の誰かだけに定まっていないので、片想いの線は薄い。
つまり、凛には"腐女子"の疑いが……。
BL活動もできるって言えば、もしかすると……)
「凛、ちょっと耳貸して。
実はね、うちの部ではBL活動もする予定なの! どう?」
透華はウィンクすると、凛の耳元でそう囁く。
すると……。
「ぶ、BL活動——!?」
凛は顔を赤くし、目を丸くした。
「なあ透華?今確かBLって聞こえた気がするんだが……」
朔は凛の言葉を聞き逃さなかった。
「ちィ。
朔?あんたはいいからすっこんでて」
透華は朔を睨みつけ、すごむ。
「あ、ああ……わかった」
朔はすごすごと黙り込んだ。
小声「そうよ、凛。先ずはコイツと草日くんも引き込んで、貴女の拘るカップリングを楽しみましょう。
例えば、あんなことやこんなことも……」
ブハァー!!
凛が鼻血を出した。
「おい、透華、凛さんが突然鼻血を出したぞ。お前一体何を話したんだよ!?」
「別に。ただ凛さんにこの部の魅力を伝えただけよ」
透華は涼しい顔で答える。
「透華、わ、わかったわ! 私入部する!」
凛は慌てて二人の会話を遮り、入部を承諾した。
「やったー! ありがとう、凛!」
透華は凛と抱き合い、喜びを分かち合った。
「……本当に、大丈夫なんだろうか、この部活」
朔は二人の様子を呆然と見つめながら、呟いた。
その時、部室のドアが再び開けられた。
「あれ? お前ら、こんなところで何してるんだ?」
「おーと、噂をすれば、あなたは草日君ね!」
透華の顔は待ってましたとご満悦だ。
そう。入ってきたのは、あの時俺達を助けてくれたクラスメイトの草日両だった。




