0x6 鎮向ミステリー倶楽部、始動!
事件は無事解決し、朝比奈凛は二人にお礼を言った。
「何はともあれ、事件も解決できたし、ボールも見つかってよかったな」
朔は透華にそう言うが、透華は何か考え事をしている様子だった。
「ねえ、朔?この事件、やっぱり何かがおかしいわ……」
(単なるいたずらでは片付けられない違和感。あの『歪み』が、確かに、関わっていた……)
「ああ、単なるいたずらではなさそうだよな」
「ええ。きっとこれは『歪み』の仕業よ」
(この学園には、まだ私の知らない『歪み』が潜んでいる。それを解き明かすために……)
透華は朔と共に、学園内で噂される「七不思議」や、生徒たちから持ち込まれる奇妙な事件の数々を解決するための部活を立ち上げることにした。
放課後の教室。
夕日が差し込み、教室全体がオレンジ色に染まる中、透華は一枚の紙にマジックペンで大きく書き始めた。
『鎮向ミステリー倶楽部』
書き終えると、透華は満足げに頷く。
「よし、これで完成!」
(完璧! 私のネーミングセンス、炸裂って感じ!)
「え?……完成って、何を?」
朔は透華が書いた紙を見て首を傾げた。
「見ての通りよ。
『《《鎮向》》ミステリー倶楽部』の設立申請書よ」
「……」
朔は言葉を失った。
(ちんこう……? まさか……)
「どうしたの? 朔」
「いや、その……部活名なんだけど……」
(案の定……)
「何か問題あるの?」
「あるに決まってるだろ!
ってか、むしろ問題しかない!
鎮村の『鎮』の音読み『鎮』と、日向の『向』の音読み『向』で『鎮向』って……」
「それがなに?どこか気になる箇所でもあるの?」
「全部だよ!気になることしかないだろ!
どう考えても卑猥な意味にしか聞こえないぞ!」
「え? そうかしら?」
透華は首を傾げた。
(え? 本当に? 私のネーミングセンス、そんなにおかしい?)
「朔、あなた!もしかして……、クスクス」
透華は何を思ったのか、突然朔の顔をチラ見してほくそ笑む。
「もしかしてって……、な、何だよ……」
すると、朔は顔を赤くし恥ずかしそうにそっぽむく。
「朔?もしかしてあんた!?」
「なんだよ……」
「私のネーミングセンスに嫉妬してる?」
「してない、してない。全然してないから。
むしろ一〇〇億パーセント呆れてる!」
「まあ、いいじゃない。私が考えた最高のネーミングセンスなんだから」
「どこがいいんだよ! 誰がどう見てもアウトだろ!
絶対みんなに変な目で見られるから変えろよ!」
「大丈夫よ。私が部長なんだから、誰にも文句は言わせないわ」
「部長だからって許される問題じゃないだろ!」
朔は頭を抱えた。
「とにかく、この名前は却下だ、却下!
他の名前を考えようぜ!」
「えー、せっかく考えたのに」
透華はまるでキングス◯イムの親分のように頬を膨らませると、不満を漏らす。
「せっかくってお前なぁ。この名前で堂々と活動できると思ってるのかよ?」
「じゃあ、あんたは何か案があるの?」
「そうだな……例えば『学園ミステリー解決部』とか……」
「却下」
「即却下かよ!」
「だって、つまらないじゃない」
「つまらないって……。普通に良い名前じゃないか」
「それじゃ、漢字の読み方だけ変えるってのはどう?」
「へ〜、どんな風に?」
「鎮向《ち◯むけ》ミステリー倶楽部……」
「だめだ!それは……、
例えば、自◯規制くんが"見せられないよ"のプラカードをここに持って来ちゃうくらいには、いろいろとまずい!!」
二人の不毛な言い争いはそれからもしばらく続く。
結局、最終的には朔が透華に押し切られ、
『鎮向ミステリー倶楽部』がめでたく採用されることになった。
しかし、朔は気が気でならなかった。
(本当にこれで大丈夫なんだろうか……)
(この部活名で、まともに活動できるんだろうか……)
そして……。
朔の不安は見事に的中する。
後日、部室を訪れた女子生徒たちから……。
「日向くんって、もしかして……露出っち系の趣味なんですか?」
と、朔は毎度興味本位に部室を覗きに来るクラスメイトから屈辱の眼差しを向けられる羽目になるのであった。




