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0x29 それぞれの覚悟

「やっぱり、蜜柑ちゃん……誘拐とかじゃないよね?」


透華はテーブルの上で指を組みながら、慎重に考える。


「それはまだ分からない。でも……朔の両親の供述には不自然な点があるのよ」


透華は頭の中で情報を整理し始める。


矛盾点1:不審者がいるから、蜜柑は外出していない。

→ 誰も外出していないなら、どうして蜜柑だけが消えた?


矛盾点2:誰も買い物にも行ってないし、訪問者もいなかった。

→ 家の中にいたはずの蜜柑が、「気づいたらいなかった」というのは不自然すぎる。


矛盾点3:朔の両親が “気づいたらいなかった” と曖昧な答えしか言わない。

→ 普通なら、どこを探したか、どういう状況だったか詳しく話すはずなのに……。


透華はカップを置き、凛に向き直る。


「……私も、朔の家へ行くわ。」


凛の表情が強張る。


「でも、朔くん……一人で行くって言ってたし……。」


「だからこそよ。」


透華の声は冷静だった。


「朔は今、冷静になれていないわ。

だから、余計な情報に惑わされる可能性がある。」


凛は息をのむ。


「……透華、何か思いついたの?」


透華は立ち上がりながら、スマホを手に取った。


「蜜柑が消えた理由は何なのか……それを確かめるために、私は“別の視点”から考えてみるわ。」


凛は驚いたように透華を見つめた。


「別の視点?」


透華は微笑みながら、しかしその瞳は鋭く光っていた。


「ええ。“実際に蜜柑ちゃんを攫うことではなく、彼女が攫われたと信じ込ませること自体にメリットがある人物こそが、犯人なのかもしれない……そう仮定してみるのよ」


凛の肩がピクリと揺れる。


「そんな……誰がそんなことを?」


透華はスマホを握りしめながら、淡々と言った。


「それを調べるために、朔の家に向かうわ。」



すると、バルスが口を開いた。


「でも……透華さん。もし本当に誰かが蜜柑ちゃんを攫ったのだとしたら、あなた一人で朔を追うのは危険すぎるんじゃ……?」


その言葉に、透華は目を細める。


「だからこそ、私は一人で行くのよ。」


凛が驚いたように透華を見つめる。

「ちょっと待って……朔くんが冷静じゃないのに、透華まで一人で行くの?

そんなの……危なすぎるよ!」


透華はゆっくりと息を吐き、二人を見つめた。


「危険だからこそよ。」


その言葉に、凛は戸惑ったように瞬きをする。

「危険だから一人で行くって、全然意味わかんない!」


「ええ、あなたたちを巻き込みたくないのよ。」


透華の声は冷静だったが、どこか優しさを含んでいた。


「これはただの行方不明事件じゃない。

何者かが仕掛けてきている可能性が高いわ。」


バルスが口を開く。

「それなら尚更、一人じゃダメです。」


透華は腕を組んだまま、静かにバルスを見つめる。

「……分かってるわ。でも、私はあなたたちを守る立場にいたいの。巻き込みたくないのよ。」


凛はカップを握りしめながら言った。

「それなら私も同じだよ。透華が危険なことに足を踏み入れるなら、私たちだって一緒に行く。」


いつの間にかバルスもやってきて、そして静かに頷いた。

「何が待ち構えているか分からない。

でも、僕たちも覚悟はできています。」


透華は小さく息を吐いた。

「……しょうがないわね。」


凛とバルスの決意を見て、透華はゆっくりと頷いた。

「じゃあ、準備をして、すぐに朔の家へ向かいましょう。」


三人はそれぞれ覚悟を決めた。



ピンポーン♪


程なくして、マンションの前に停まったタクシーに、透華、凛、バルスの三人は乗り込んだ。


車内には微かなエアコンの音と、夜の街を流れる静かなBGM。外のネオンが窓ガラスにちらちらと映り込む。


「朔くん、もう家に着いたかな……?」


凛は助手席側の窓を見ながら言った。


「……そうかもしれないわね。」


透華はスマホを握りながら、曖昧な返事をする。


「でも、蜜柑ちゃんのこと……やっぱり変じゃないですかね?」


バルスが低い声で呟く。


「……ええ、そうね。」


透華は小さく答えたが、それ以上の言葉は継がなかった。


凛とバルスは少し顔を見合わせる。

いつもの透華なら、もっと細かく推理を展開するのに……。


そんな違和感を感じた矢先、透華がスマホを操作し、二人の画面にLINIのメッセージが浮かび上がった。


『タクシーの中も油断しちゃダメ。

盗聴されてる可能性がある。話す内容、気をつけて。』


凛とバルスは画面を見つめたまま、無意識に口をつぐむ。


透華はスマホを閉じ、何事もなかったように窓の外を眺める。


「タクシーの運転手さん、道が混んでなければ最短ルートでお願い。」


「はい、かしこまりました。」


運転手の低い声が車内に響く。


凛とバルスは、お互いの沈黙を確認するように目を合わせた。


透華は、慎重に話題を変えながら、目的地へと向かっていた――。


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