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0x26 四人の再会

港の廃倉庫——。


湿った潮風が倉庫の鉄扉の隙間から入り込み、薄暗い空間に微かな夕焼けの光を差し込んでいた。錆びついた鉄の壁がほのかに赤く染まる。


拘束を解かれた凛とバルスは、その場で息を整えながら、お互いの顔を見合わせた。


「……本当に解放されたの?」

凛は不安げに周囲を見渡す。


「おそらくは……。でも、油断はできませんね。」


バルスの声は落ち着いていたが、その手はわずかに震えている。


ギィ……。


重い鉄扉がゆっくりと開き、外の夕陽が一気に二人の視界に広がった。

港の向こうには、茜色の空と波打つ海――まるで何事もなかったかのように、穏やかに広がっている。


「……透華に連絡しよう。」

凛は震える指でスマホを取り出し、透華の番号を押す。


プルル……プルル……。


『もしもし?凛?』

透華の声はいつもの冷静さを保っていたが、どこか鋭い警戒心を含んでいた。


「透華……私、今港にいるの。」


『港?どういうこと?何かあったの?』


透華の声のトーンが変わった。


「それは……まだ言えない。でも……お願い、来てほしいの。」


沈黙が落ちる。ほんの数秒だったが、凛には永遠にも感じられた。


『……わかったわ。すぐ行く。朔にも伝えておく。』



電話を切った途端、凛はほっと息を吐いた。

「……本当に、大丈夫なのかな。」


バルスは少し微笑む。

「大丈夫ですよ、凛さん。透華さんが来てくれますから。」


凛はバルスの言葉にわずかに頷き、港の夕焼けを見つめた。

彼女の瞳に映るその茜色は、どこか心を落ち着かせるようでもあり、不吉な兆しのようでもあった――。





一方、透華と朔——。


二人はコンビニの前にいた。


「透華、どうしたんだよ。こんな時間に慌てた様子で。」


朔は腕を組みながら透華の表情を伺う。


「凛から電話があったの。港にいるらしいわ。」


「港?なんでそんなところに……」

朔は眉を寄せた。


「しーっ!声が大きい。

詳しいことは話せない様子だったけど、ただならぬ空気を感じたわ。」

透華はスマホを握りしめ、決然とした表情を浮かべる。


「急ぐわよ、朔。時間がないかもしれない。」


「わかった、行こう。」


二人は夕暮れの街を駆け抜け、港へ向かった――。





港の廃倉庫——。


そんな感傷的な夕暮れ時に、透華の声が響いた。


「凛、草日君も、大丈夫だった!?」


「透華さん!」


透華の姿を認めた凛は、張り詰めていた緊張が解けたかのように、安堵の表情を浮かべる。


「うん……」

凛は、透華の真剣な眼差しに応えるように、ゆっくりと頷き、続けた。


「私も草日君も大丈夫だよ。

透華。それに、朔くんにも……。

心配かけて、ホントごめんなさい」



「何にせよ、二人とも本当に無事でよかった」

凛の言葉に、朔は心底ほっとした様子で、大きく息を吐き出す。


(二人が閉じ込められていた場所だから、きっとここには監視の目があるはず)

透華の脳裏には、まだ解決されていない問題がちらつく。


腕を組みきゅっと唇を結んだ透華が冷静な声で告げる。

「ここじゃ落ち着いて話せないわ」

そう言うと、透華は無言でスマホを操作して、

ナビアプリで自分の住んでるマンションの地図をみんなに見せる。


朔は透華の意見に静かに同意し、小さく頷く。

そして、視線を凛とバルスへと向ける。


「……それがいいですね。」

バルスは、押し殺したような静かな声で答えた。

彼の声には、身体の奥底から滲み出るような深い疲労の色がはっきりと見て取れた。


凛もまた、どこか落ち着かない様子で、透華の提案に同意する。

「行こう……。」


四人は港を後にし、夕暮れの残滓が色濃く残る街へと、足早に歩みを進めた。




透華のマンション——。


マンションのエントランスに入ると、ゆったりとした静けさが漂っていた。

ネオンがちらちらと灯り、日が沈みかけた空と都会の明かりが交じり合う。


「落ち着いて。」


透華は促し、エレベーターのボタンを押す。

扉が開き、四人は静かに乗り込んだ。


透華の部屋に到着すると、暖かいオレンジ色のライトがリビングを包み込み、心を落ち着かせるような空気が流れる。


「座って、ひと息つきましょう。」


透華はそう言うと、湯を沸かし始めた。


「透華、オレはコーヒー!」

凛の軽い冗談に、透華は小さく笑う。


「はいはい、まずはお茶を飲んで。それからゆっくり話しましょう。」


凛とバルスはソファに腰掛け、湯気の立つ紅茶のカップをそっと手にした。


「みんなの両親には私から泊まりの連絡しといたから……」


「ありがとうございます」



そして、静かな夜の気配が広がる中――。


「凛、ちょっといい?」


透華は凛だけを親の書斎に呼び出し、核心へと迫っていくのだった。


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