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0xD 顔文字に込められたゲシュタルトのメッセージ

翌日の昼休み——。

「ねえ、朔、ちょっと手伝ってくれる?」

透華は朔の手を引いて部室に入ると、机の上に昨晩コピーして作ったコラージュの断片を広げた。

その手際は自信満々で、どこか楽しそうだ。


「これ、昨日のコラージュの文字……」


「ああ、お前が夜遅くまであれこれ試してたやつか」

朔は苦笑いを浮かべつつ、透華の動きを見守った。


透華は断片をホワイトボードに貼り付けると、しばらく考え込みながら文字を並べ替えていく。

そしてついに、満足そうに微笑んだ。


「はい、これで顔文字完成!」


「すげえ……!ホントに顔文字になってる!」

驚きと感心が入り混じった声を上げる朔に、透華は得意げに胸を張った。


「驚いた?ねえ、朔、顔文字って不思議だと思わない?」


「顔文字か……。まあ、普通に使うけど、不思議ってほどでもないかな」


「それが普通じゃないのよ!」

透華の瞳が急に輝きだす。まるで新たな発見を語る探求者のようだ。


「例えば、この『(^^)』って顔文字。どう見える?」


「笑顔……か?」


「そう、それ!

でも、冷静に考えてみて。

ただの記号の組み合わせが、どうして笑顔に見えるのかしら?」


朔は黙り込んだ。

そして、ゆっくりとうなずく。

「言われてみれば、確かに不思議だな」


「これにはゲシュタルト心理学が関係しているの」


「ゲシュタルト……なんだって?」


「簡単に言えば、人間の脳がバラバラの情報を、一つの意味のあるまとまりとして捉える心理学の考え方よ」


透華は熱心に説明を続け、朔はその話に耳を傾ける。

彼女の情熱が伝わったのか、朔も顔文字の奥深さに感心する。


「でね、これだけじゃないのよ」

透華はホワイトボードの隅に残った四つの記号を指差す。


「この余りを使うと……」

そう言いながら、透華は記号を並べ替える。

しばらくして、彼女は満足げに頷いた。

「見て、これで一つの単語ができたわ」


「male……?」


「そう、フランス語で“男”の意味よ」


朔の表情が少し曇る。何かを考え込むような仕草だ。

「犯人が男だってことなのか……?」


「さあ、どうかしら。

それだと犯人がなぜ自らの性別を明かすような不利な行動をとるのか動機がわからない。

だから私はその線は違うと思うわ。

でも、これは決して偶然じゃない。顔文字にメッセージを仕込み、さらには“male”の文字を残すなんて、意図的としか思えない」

透華の表情が一変し、真剣さを帯びる。

「犯人は私たちに伝えたい何かがあるのよ。

そして、私たちに何かを期待している……」

朔は彼女の言葉に耳を傾け、しばし考え込んだ。

そして、決意を秘めた眼差しで彼女を見つめる。


「乗ってあげましょう、その期待に。

そして、犯人の狙いを突き止めて、必ず捕まえてみせるわ!」

透華の瞳には、強い決意が宿っていた。

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