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歪み探偵鎮村透華の事件簿  作者: 憮然野郎
File#2
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0x9 新たな紛失事件

「あの、今大丈夫ですか?……」

放課後の鎮向ミステリー倶楽部。部室の扉を控えめにノックしたのは、クラスの男子生徒佐藤だった。


「あら、佐藤くんじゃない。

どうしたの?」

部長の透華が尋ねると、彼は困った顔で言う。

「小銭入れをなくしてしまって……。もしよかったら一緒に探してもらえないかなと思いまして……」


彼に事情を聞くと、今日の二時間目の体育までの時間、小銭入れは確かにあったらしい。


「あら、それは大変ね。でも任せてちょうだい!」


「透華さん、ありがとうございます!」


「そうね。まずは男子更衣室のロッカーの中を調べましょう」


「実は、一度そこは見たんですが……」


「ダメよ。念には念を入れないと!」

透華はそう言うと、朔と依頼者の佐藤を連れ、体育の授業で使われた更衣室に向かった。


「やっぱり、見つかりませんね……」


今度は三人がかりで念入りに探すが、何も収穫は得られない。


「ねえ、本当にここに入れたの?」

念のため確認する透華に、

佐藤は頷く。

「……はい、間違いないです。

でも……、本当に不思議なんです」


透華は、室内をゆっくりと見回し、何か手がかりが無いか探した。

しかし、やはり特に変わったものは見当たらない。


「うーん……」

透華は腕を組み、少し考えた。


「実は心理学に『カラーバス効果』というものがあるのよ」


「なんだそれ?」

朔が尋ねる。


「例えば、赤いものを探してと言われるとするじゃない?

すると、今まで気にも留めていなかった周りの赤いものが初めて目に入ってくるの。

もちろんこれは色にだけ言えることじゃない」


「俺たちはじゃあ……、

世界をありのままに見てるんじゃなくて、心のフィルターを通して見ていると、そういうことか?」


「ええ、そうよ。

今、私たちは『小銭入れ』を探してる。

だから、小銭入れそのものや、小銭入れに繋がるものに注意が向きやすくなっているの。

でも、もしかしたら……。

全く別の視点から見た時に、答えにつながるヒントが見えてくるかもしれないわ」



翌日の昼休みの時間。

透華は担任の先生を訪ね、佐藤の件を聞いてみた。


「佐藤に関することで最近見聞きしたことは無いかだって?」


「はい」


「う〜ん、先生は知らないな……」


「わかりました。先生、ありがとうございます」

そう言って透華は立ち去ろうとする。しかし……。


「鎮村さん、ちょっと待って!」


「どうしました、先生?」


「ごめんな、慌てて呼び止めてしまって。

手がかりにはならないかもしれないが……。

実は昨日、佐藤のズボンの購入申請をもらったんだ」


(この時期にズボンの買い替え?

どういうことかしら……)



次の休み時間。

透華は佐藤にズボンの買い替えの件を訊ねてみた。

「一昨日の夕方、僕はズボンの右ポケットが破れていることに気が付いたんです。

それで、昨日先生にズボンの購入申請を出したんです」


「なるほど、そうだったのね」


「は、はい」


「ねえ、佐藤くん?

今日の放課後も部室に来てもらえないかしら」


「もちろんです。僕は探してもらってる身ですし」



そして放課後の部室。

「さて、今日は視点を変えて女子更衣室のロッカーの周りを捜索してみましょう」

透華は突然、朔と佐藤に向けそう切り出した。


「じょ、女子更衣室!?」

朔と佐藤は動揺する。


「念のため女子更衣室も探してみようというのよ。悪いかしら?」


「透華、俺たち男子じゃなくて凛さんを誘えよ。他の生徒に現場見られたら後でいろいろヤバいだろ」

朔は反論する。


「凛はソフトテニスボールの大会に向けての練習でここ二、三日は抜けられないらしいのよ。

だからあんたらに頼んでるんじゃない!」


「うっ……。

なあ、佐藤?

お前はどうなんだ?」


「え、女子更衣室……ですか?」

朔からの急な振りに、何か違うことでも考えていたのだろうか。

佐藤は一瞬視線を泳がせた。


しかし……。そんな彼の、ほんの僅かな心の動揺を、透華が決して見逃すはずはなかった。


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