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ループ・繰り返し・過去改編な作品

人間味のありすぎる女神がループ能力者の人生を見てアワアワする話

作者: 仲仁へび



 とある天界、とある時刻。


 とある女神はアワアワしていた。


 自分が異世界に転生させた転生者の人生を見守りながら。


 なぜならその女神は、落ちこぼれて、人間味に溢れていたからだ。


 他の女神には感情はないにも関わらず、その女神には何かの女神で感情があったからだ。


 だから、アワアワしている。


「うしろ! うしろ! あなたを殺した犯人が近づいているわー!」





 その女神が転生者の転生手続きをしたのは数年前。


 事故で命を落とした少年に、親切でループ能力を施し、別の世界へ生まれなおさせた。


 女神はその事を忘れ、さっさと他の仕事にとりかかったが、数年後に思い出した。


 とある仕事の合間に「あの時の少年はどうなったのかしら」と疑問に思ったため、様子をチェックする事にしたのだ。


 そしたら、例の少年はループ能力を使っていても、人生に大苦戦していた。


「ああっ、味方! その味方、裏切り者よ! はやく気が付いて! 貴方が無駄に何回もループしてるのはそいつのせいなのよ!」






 女神は気づいた。


 ループ能力はとても便利だが、人間にはきついという事を。


 女神はポンコツだった。


 便利そうな能力があれば、ただ便利だとしか思わないくらいに。


「いたたたた、見てるだけで痛そう! こ、こうなったらちょっとズルだけど痛覚オフのオプションつけちゃおうかしら」


「ひええええ! 精神が! 発狂してるうううう! と、当然よね、あんな恐ろしいお化けに呪い殺されたんだもの。精神耐性の加護おまけしちゃおうかしら」


「きゃああああ! ループが詰んだ。そこからリスタートしても状況変えられないじゃない! 巻き戻れる時間もう少し長くしてあげようかしら」


 女神は割と人間味に溢れていた。


 しかし、感情豊かで、人の気持ちも分かるため、少年の状況を知って、アフターフォローに励むことにしたのだった。





 そうして、少年はループ能力を駆使して、何とか人生80年分を生ききった。


 彼女もできて、結婚もして、子供もできて。


 それなりに幸せになれた。


 でもやっぱり、ループ能力のせいで血と惨劇は雨あられだった。


「ループ能力があるせいで、他の人なら見て見ぬふりする事件や事故も解決しちゃおうとしたのね。なんて良い子なのかしら。次に生まれ変わる事ができたら、もっとマシな能力あげましょう」


 女神のその発言はフラグだった。


 女神は不死の能力や、不死身の能力を厳選していたが、さすがに学習したので、これもまずいと気づき、途中でやめる事にした。







 やがて、フラグが回収された。


 死んだ少年が再び女神の元へ訪れたのだ。


 同じ魂の人間が、同じ担当の女神の元に来る確率はわずかだ。


 しかし少年はそのわずかな確率を拾ったようだった。


 少年の顔を見た女神は、冷や汗をだらだら掻きながら、土下座した。


「ご、ごめんなさい!! あんなに大変な人生になるなんて思っていなかったの!!」


 少年は呆気にとられた。


 少年は、人生で何度か女神を恨んだこともあった。


 でも、最後には女神に感謝するようになった。


 とても苦難に満ち溢れた人生だったけれど、充実していたからだ。


 あと、女神が簡単に土下座するとは思わなかったのでびっくりした。


 女神の顔面は涙と鼻水でめちゃくちゃだった。


 少年に許された女神は、感動で更にむせび泣いた。






「なんて良い子なの! あなたは素晴らしい人間だわ! そうだ、罪滅ぼしに良い能力を色々選んだから、転生するとき持っていきなさい」


 けれど少年は、さすがにチート能力はもう勘弁だと言った。


 次に転生した少年は、なんの力も持たない普通の人間として生まれた。


 平凡な人生だったが、それでも血も惨劇もない生活を送る事ができたのだった。



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