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琥珀糖と僕

作者: 西埜水彩

文披31題(https://twitter.com/Fictionarys/status/1807428894506561696)の企画参加作品で、Day5 琥珀糖にまつわるお話です。

 17時30分。僕は無事に帰宅することができた、うん、いつも通りだ。


「ただいま」


 大抵帰ってきたとき、家には誰もいない。同居人の夕占(ゆううら)さんは僕が帰ってくる時間は仕事か外出をしている。そこで僕が帰ってきたときに、家に夕占さんがいることはほとんどない。


「おかえりなさい」


 そこで夕占さんが家にいること、それにかなり驚いてしまった。


「珍しい。僕が帰宅したとき、夕占さんが家にいるなんて」


「別にいてもいいでしょ。今日は木曜日で仕事が休みだから」


「へーそうなんだ」


 でも今までは仕事が休みの日、僕が家にいそうなときが夕占さんは外出していたような気がする。


 だからそれを考えると、本当に珍しい。でも別に僕は夕占さんとそこまで親しくないわけで、これ以上何か聞きたいとは思わなかった。


 そこで手を洗ってから、キッチンへと向かう。キッチンでは夕占さんが冷蔵庫から何かを取り出そうとしていた。


「ねえねえ、べにはは琥珀糖って食べたことがあるの?」


「多分ない。もみじも食べたことはないはず」


「じゃあ琥珀糖食べてみて。これってもみじ好きそう?」


 紅葉をイメージするような赤っぽいオレンジから夕方のような青の混じったオレンジ、この2色がグラデーションになっている琥珀糖。それを1つ、夕占さんは僕にくれた。


「甘くてぷるぷるとしてる。薄い味ってわけじゃねぇから、もみじも好きだと思うぞ」


 甘いし、味がないわけではないので、これをもみじが嫌いと言わない気がする。


「そうそう。これから乾燥させるから、食感は変わっちゃうと思うけど。味は大体同じ」


 なんかやり遂げた感じの笑顔で、夕占さんは語る。


「そうなんだ。でももみじは夕占さんのことが好きだからさ、夕占さんが作ったものならなんでもおいしくいただき気がするぜ」


 なんせもみじは夕占さんの同性パートナーであるから、これは結婚しているのと同じである。それならもみじは夕占さんの作った物をまずいとか言わなさそうな気しかない。


「そんなことないよ。薄味と思ったら調味料を勝手にくわえて食べる子なんだから、もみじは。そこら辺べにはは知らないかもしれないけど」


 夕占さんはなぜかどや顔をする。


 僕はある事情からもみじとは会うことができない。でも夕占さんはもみじと定期的に会うことができる。その違いに関して、夕占さんは僕に勝っているいると思うらしい。


 ぶっちゃけ僕はもみじが好きで、夕占さんももみじが好きだ。だから夕占さんは僕よりももみじのことを愛しているって証明がしたいのだろうか? 僕にはよく分からないや。


「僕は薄味でも気にしないから、そこらへんはよくわかんないや」


 冷蔵庫からお茶のペットボトルを取って、キッチンから離れる。


 僕はもみじじゃないし、もみじも僕じゃない。だからこそ夕占さんは僕のことが嫌いなのかもしれない。まあ夕占さんのことなんて、僕にとってはどうでもいいことかもしれないけど。


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