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EP2 縛りプレイと初ログイン

 帰宅し部屋にカバンを置くと、透はすぐにシャワーを浴びて部屋着に着替えた。

 

 幸い、週末の金曜日は両親はどちらも勤め先の同僚と一杯引っかけてから帰宅するので(そしてそれは到底一杯で終わるものではないので)、夜遅くまでゲームをする時間はたっぷりとあった。

 無論、翌朝までゲームをしていたところで、咎めるような両親ではないのだが。

 

 透は部屋に戻り、カバンから武久から受け取った手作り冒険ガイドを取り出すと、さっそく目を通しはじめた。


「なになに……まずはReal Role Online、略してRROの世界のキャラクターについて、か」


 RROは基本的に従来のMMO RPGと同様に、初期に与えられるスキルポイントを自由に割り振って、自分好みの特徴を持った初期キャラクターを作成できる。

 

 また、近年発達してきたVRMMOと同じく、ゲーム内のキャラクターを意図したとおりに操作するために、性別や外見は現実世界の姿と同じようにすることが求められている。

 

 しかし、RROがほかのVRMMOと決定的に異なる点は、自分のキャラクターを作成する際に、必ずゲーム内に存在しているキャラクターを選択し、そのキャラクターの生い立ちやこれまでの記憶を持った上で、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ことになるということだった。これこそが、タイトルの「リアル・ロール」という意味なのだという。

 

 透は、この概念的な説明ではよく理解しきれなかったが、武久がもう少しかみ砕いた説明を記載してくれていた。


 ――――――

 

 このRROの世界では、すべてのNPCキャラクターがGenerative AIの技術によってある程度の自我や意志を持って生活しており、NPCキャラクター同士の結婚によって、その子孫のNPCも誕生している。そうしたNPCたちによって、村や街が管理され、本当の世界のように経済や生活が成り立っているという。

 

 その中で、NPCは特定のタイミングで『プレイヤーがそのNPCとして生きられる』対象に選ばれる。

 

 プレイヤーは自分のキャラクターを作成する際、対象となっているNPCを選んで、そのNPCとしてゲームの世界にログインすることになる。その際に容姿は作成したものに書き換わっていくのだそうだが、そのNPCが持っている記憶が、自分の記憶の中に流入してくるのだという。

 

 現実世界のゲームに例えると、シ○ピープルやシ○ズの既存の世帯を、プレイヤーが自分の分身として操作するのに似ているらしい。

 

 ただ、どのNPCがどのような基準で選ばれているのかはプレイヤー側は知る由はないのだという。そのため、タイミングによっては王家に近しい家系のNPCを選ぶことだってできるらしい。

 

 そんなキャラクターになれたのなら、もう冒険なんてせずに、悠々自適にゲーム内生活を満喫できるのかもしれない。


 ――――――

 

「……いろいろと細かい説明が多いけど、とりあえずゲームの準備をして、早速キャラクターを作ってみるか!」

 

 透はいったん紙の束を机の上に置き、押し入れにしまってあったVRマシンをベッドに設置した。以前、武久のすすめでなけなしのバイト代をはたいてVRマシンを購入したのだが、そこまで熱中できるタイトルもなく、しばらく出番はなかったのだった。

 

 少し積もっているほこりを拭いた後、マシン上部にある挿入口に、購入したばかりのRROのソフトを挿入し、本体の電源を入れた。その後、カバンから財布を取り出すと、国民番号カードを取り出し、マシン上部の読み取り部にかざし、個人情報を読み取らせた。

  

 グゥーン、と低い音を立てて、VRマシンは久しぶりに稼働を始めた。

 

 透は、スマホをベッド脇に置くと、仰向けでベッドに寝そべり、VRマシンのヘッドギアとゴーグルを装着した。

 

「久しぶりの感覚だから、気持ち悪くならないと良いけど……。よし、トイレも行ったし、シャワーを浴びてから水分補給もちゃんとしたから、問題ないな」

 

 準備が整ったことを確認し、ヘッドギア脇のボタンを押し、メニューを表示する。そして、現れたRROのアイコンを注視すると、ピコンと軽い音を立てて、ソフトウェアが起動した。


 

『RROの世界へ旅立つ準備が整いましたら、合い言葉を入力してください』



 落ち着いた女性の声が脳内にこだました。透は、武久のガイドで確認した合い言葉を思い浮かべ、静かに口にした。



「……(ゴー)働開始(ライブ)……!」



 ◆◆◆

 

 高速で上昇するエレベーターに乗ったような、失神にも近い意識が切り離されていく感覚を覚えていると、目の前が突如白い光に包まれた。

 

 目が慣れてくると、白い空間に『Real Role Online』のタイトルロゴがゆっくりと現れた。そして、しばらくすると、『New Game / Character Creation』のボタンも現れた。


 透は、完全に自分の意識や感覚がゲームの中に同期されていることを確認して、目の前に現れたボタンを感覚で押した。

 

その瞬間、画面にあった文字はさっと消え去り、しばらくの後、ポンッと小さな煙とともに、白いローブを身にまとい、眼鏡をかけた耳の長い女性が映し出された。


「ようこそ、RROの世界へ! 一条透さん、ですね?」


 こうして透は、RROの世界へ足を踏み入れることとなった。 

ようやくゲームにログインしました。

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