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異世界を信じる者たちへ 〜何故かエルフになった僕〜  作者: さつき けい


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第八十九話・乙女の心、知らず


 僕としては、どっちでもいい。


ケイトリン嬢の気持ちはどうなのかは知らんが。


「わ、わたしっ」


真っ赤になったケイトリン様が、挙動不審になり、部屋を飛び出して行く。


「あーあ、アタト様、ちょっとヒドイです」


え、何が?。


ガビーがプンプンと怒っている。


「女心ってもんが分かってないです」


そりゃ、僕はガビーと違って男だから分からないよ。


様子を見て来ると言って、ガビーも行ってしまった。




「アタトくん、どうしたの?、急に」


ヨシローも戸惑っている。


「えー。 僕は淑女のお相手は成人男性の方が良いと思っただけです」


身内でもない子供、しかもエルフなのにケイトリン嬢のエスコートは荷が重いんだよ。


誰か代わってほしい。


「なるほど。 アタトくんはケイトリン嬢に好きな相手がいるなら同行させるつもりだと」


うんうん、と僕は何度も頷く。


さすがティモシーさん。 分かってくれるか。


「というわけで。 ヨシロー、がんばれ」


ティモシーさんに肩を叩かれたヨシローが、


「はああー?」


と、顔を赤くして驚く。




「何言ってんの?。 俺は三十過ぎのオッサンなの!。


ケイトリン嬢はまだ十八歳。 年が離れ過ぎだよ」


ティモシーさんがクスッと笑う。


「女性を年齢で決めるのかい?、ヨシロー」


「違うっ、俺が!。 ケイトリン様に相応しくないって言ってんの!」


「よく分かりませんが、それはヨシローの世界の話ですか?。 伴侶って年齢で決めるものでしょうか?」


僕は子供らしくコテンと首を傾げてヨシローを見る。


「い、いや、それは」


ヨシローがしどろもどろになる。


「ふむ。 ヨシローの世界のことは私たちには分かりませんが、この世界では10歳や20歳の年齢差は普通ですよ」


ティモシーさんが追い討ちをかけた。


貴族なんかは家同士の繋がりの政略結婚が普通らしく、王族などは若い第二、第三夫人や側妃も多い。


年齢関係ないな。




 ティモシーさんが顎に手を当てて言う。


「問題になるとしたら身分でしょうか」


ケイトリン嬢は、低位貴族だが領主の後継である。


伴侶にはそれなりの人脈がある家柄か、優秀な人材が欲しい。


「あー、それこそ、俺には分不相応だ。 異世界人で平民だもん!」


ヨシローが鼻息荒く主張した。


「いや、ヨシロー。


それこそ、異世界人を取り込みたい貴族はいっぱいいるよ。


国の決まりがあるから無理強いは出来ないけど、ヨシローからの申し出なら嫌だという家は少ないと思うな」


たとえ王族だろうが、喜んで娘を差し出すだろう。


ティモシーさんにそう言われてヨシローはガクリと項垂れる。


「いや、だから、俺の世界じゃそんなんアリエナイって」


ブツブツと何か呟いてるけど、放っておく。




「では、ティモシーさんはケイトリン嬢をどう思いますか?。


年齢的には近いし、ご実家は裕福な商家なんでしょう?」


本人も優秀な騎士様だし、完全な身分違いにはならないはずだ。


父親である領主さえ反対しなければ、だけど。


「そういう目でケイトリン嬢を見たことはないね」


ティモシーさんは「失礼だけど」と笑った。


あくまでも仕事の護衛対象としか見ていないと言う。


「ふうん。 誰か他に好きな女性でもいらっしゃるのですか?」


「いや、今のところいないよ」


うーむ、嘘を吐いているようには見えないな。




 そうなると、益々ヨシローしか対象がいないわけだが。


「ヨシローさんを領都に連れて行くことは可能でしょうか。


それとも、他に領主代理になれそうな方はいらっしゃいますか?」


んー、とティモシーさんは考え込む。


「いるかも知れないが。 私の知る限り、この町にはいない」


田舎の町である。


老人たちにすれば、だいたいが顔見知りで、経歴や性格もよく知った者が多い。


「そういう人たちからしたら、ケイトリン嬢は孫みたいなものだから、下手な男性は推薦しないだろうしね」


ケイトリン嬢にピッタリな良い男性がいたら、とっくに引っ付けようと動いているはずだという。


地域舅か。


親など保護者が頼りにならないとみると口を出して来る老人たち。


「ああ、それはありそうですねえ」


僕は、自分もこの町に住んでいたら、近い将来そうなりそうだと思う。


「その点からもヨシローは町の老人たちには好かれてるし、文句は出ないと思うよ」


そうかあ。


町の人たちもそういう目で二人を見ているのかも知れない。




「では、ヨシローの同行を申請していただけませんか?」


教会から護衛が出るようなので、ついでに異世界人を観光に連れて行くことに出来ないかな。


「辺境伯領の祭りだから、うまくいけば許可が下りそうだね」


というか、ヨシローが強く頼めばイケる、とティモシーさんが頷く。


「それじゃあ、ヨシローさんも旅の支度をお願いしますね」


三年もこの世界にいるのだから、ある程度必要なものは持っているはずだ。


「へっ、俺?。 領都に行くの、マジで!」


嬉しいのと嫌なのが半々くらいの顔でヨシローが叫ぶ。


この際、どっちでもいいから連れて行ってしまおう。


護衛は教会警備隊もいるし、いくら高位貴族でも異世界人に手は出せないだろう。


「いざとなったら、モリヒトもいますから」


『……一つ貸しにさせて頂きますよ』


あははは、ずいぶんと人間臭くなったな、精霊さん。



 ◇ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◇



「ケイトリン様、うちのアタト様がすみません」


「い、いいえ、アタト様のせいではないので」


「でも、ケイトリン様。 顔が赤いままですよ?。 大丈夫ですか?」


「だ、だ、だいじょ、ぶ、ひゃあ」


「あれ?、顔を触ったらいけませんでしたか。


失礼しました、女同士だから良いかと思って」


「へっ。 えっと、ガビーさん、今なんて?」


「ドワーフは割と男女構わず誰でも気軽に触ってしまうので。


人族は顔を触るのはいけなかったのかと」


「いえいえ、親しい仲なら寧ろ嬉しかったり。


そうではなくて、ガビーさん、女同士ってー」


「はい。 あれ?、言わなかったですか。


私、これでも性別は女なんです。


鍛治師なので、いつも男性用の作業着ですけど」


「えええーっ」


「ケイトリン様?」



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