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異世界を信じる者たちへ 〜何故かエルフになった僕〜  作者: さつき けい


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第八十六話・午後の話し合いの席で


 午後から客を迎える。


魔道具店からは例のガタイの良い店員さん。


老店主の信頼厚いのが分かる。


商人組合からは受付のおねえさんと、職人らしい中年のおじさん。


この人が偉い人なのかは、分からない。


ガビーはドワーフ代表ということになる。


 家主のワルワさんと騎士ティモシーさんが見守る中、何故かヨシローが、


「では、競売についての会議を始めます!」


と、議事進行係になっていた。


僕はため息を吐く。


「皆さん、色々とすみません」


不安なのは僕だけか?。



 

 モリヒトが全員に薬草茶を配る。


病の流行は収束したが、すぐに空気中の魔素が十分な量に戻るわけはなく。


未だに、この町の人たちには少し魔素が足りない状態が続いているのだ。


徐々に戻って行く間は、これで少しでも体調を維持してもらいたい。


 話し合いのほうは順調に進む。


ガビーが予め作ってあった在庫の一覧表を配り、ドワーフ族の工房では既に買い取りの検討に入っていることを話した。


「もちろん、付けられた予定価格はこちらの見積もりなので」


ガビーはロタ氏から提示された価格の一部を記入している。


おそらく、他の者たちへの牽制だろう。




 僕としては、どうしても必要な理由などがあれば、交渉次第で変更が可能であることも付け加えた。


「えっ、競売なのに良いのかい?」


ヨシローが驚く。


「元々は保管庫の整理が目的で、値段にはこだわってません」


そもそも、僕はお金には困っていないし、どこかに寄付するわけでもない。


「これは一旦、持ち帰って相談させて頂きたいのですが」


魔道具店の店員の言葉に、僕は頷く。


「すぐ、というわけでもありません。 領都に出掛ける前なら都合が良いとは思っていますが。


遅くても、冬の準備が始まる前に処分したいので」


領都への出発の日をティモシーさんに確認したら、二十日ほど先だった。


「僕は旅の支度のため、数日、この町に滞在する予定です。


出来れば、その間に開催する日は決めておきたいと思いますが」


全員の都合がある。


なかなか合わせるのも難しいだろうと、それぞれ、希望日を三つほど出してもらうことにした。


皆が了承してくれる。




 ただ、問題は開催する場所だ。


「店の倉庫を会場として提供出来ます」


まず、魔道具店が申し出てくれた。


「組合にも倉庫はあるぞ」


組合の中年の職人も声を上げる。


「えっ、アタト様。 塔でやるんじゃないんですか?」


ガビーは塔に皆を呼ぶ気だったのか。


それは無理だぞ。


押しかけられたら困るので、僕たちの住んでいる場所を彼らに教えるわけにはいかない。




 どうやら皆、自分の所でやれれば少しは有利になると思うらしい。


まあ、急な変更があった場合なんかは、自分の本拠地ならすぐに対応出来るからな。


そうなると他者は不公平に感じるということで、魔道具店と組合の倉庫は避けたい。


「第三者が提供したほうが良いのであれば教会でも構いませんが、見物人が多そうですね」


常に住民が出入りしている教会施設は騒ぎになりそうだからダメだろう。


ワルワ邸は、全ての素材を持ち込めるほど広くないので除外だ。


「うーむ」と皆が黙り込む。


 チラリと視線を向けた窓の外で、トスとバムくんがタヌ子と遊んでいた。


あー、会場に出来る場所を思いついてしまった。


交渉次第だけど、たぶん大丈夫だろう。


「会場はこちらで用意します。 希望の日だけ早めに知らせて下さい」


決定後、またこちらから知らせることにした。




 ただの倉庫整理のつもりだったのに、大ごとになったなあ。


客が帰り、後片付けを手伝いながら零す。


だけど何事もやってみなきゃ分からない。


何せ初めてのことだからね。


『それより、アタト様。 会場の心当たりというのは?』


「ああ、それね。 トスを送って行くついでに交渉に行こうと思ってる」


『分かりました。 お供します』


うん、よろしく。


 夕飯前には戻りたいので片付けが終わってすぐに動き出す。


ティモシーさんが馬車を手配してくれたので、一緒に港へと向かう。


「トス、お帰り。 おとなしくしとったか」


漁師のおじさんが出て来た。


トスが住む漁師さんの家は、この辺りの家の中では一番大きい。


高波と海風から守るため、周囲は高い垣根に囲まれている。


垣根はこの辺りで採れる植物で出来ていた。


柔らかく風にしなりながらも硬く塩害に強い植物。


これ、うちにも欲しいな。


「坊ちゃん、久しいな」


漁師のお爺さんも家から出て来た。


「こんにちは、いつもお世話になっております」


僕はいつも通りの挨拶をする。


そして、


「今日は違うお願いがあって来ました」


と、微笑んだ。


……どうして引かれているのかな?。




 僕たちはお爺さんの家に入ってお茶を頂く。


そして競売の会場に使いたいという話をした。


「は?、競売の会場にうちの蔵を使いてえってか」


「はい。 お借り出来ませんか?」


「それは構わねえけどよ。 なんだってうちに」


僕は、ここは会場として最適だと思う。


「町の外れで日頃から人通りが少ないので見物人がいません。


それに周りに目隠しの高い垣根があり、十分な広さもあります」


漁師の家なので、庭に干し魚を作るための広場がある。


人が住む母屋の他に、魚醤の樽を保管するための蔵が建っていた。


しかも新しい蔵もある。


「そりゃ、魚醤の注文が増えたけ、蔵は新しく建てたばっかりだけんど」


トスから新しい蔵の話は聞いていた。


かなり干し魚で儲けたし、この辺りの漁師さんたちの干し魚も預かる予定になっているそうだ。


その蔵を借りられたらと思ってやって来た。


「さすがです。 お爺さんは商売上手の上に先見の明がありますね」


「よく分からんが。 坊ちゃんのためなら蔵の一つや二つ、貸してやるけども。 ええのか、こんな場所で」


「助かります」


「で、いつじゃ」


「まだ決まっていませんが、それまでにうちの保管庫の中身を移します」


塔に戻ったら、すぐに搬入の作業をしよう。


早めに整理出来ればモリヒトも喜ぶ。


「そうか。 ま、気のすむまでやっとくれ」


「ありがとうございます」


さすが、爺さん。 やっぱり話が早いぜ。



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[一言] 辺境伯が競売参加させろって突撃して来ない?
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