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異世界を信じる者たちへ 〜何故かエルフになった僕〜  作者: さつき けい


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第八十話・感謝の言葉をもらう


 町へ行く日になった。


ガビーはあれからロタ氏と倉庫を物色、いや整理しながら一覧表作りをしている。


欲しい物の目星を付けているのだろう。


それは構わない。 倉庫がキレイになってモリヒトも喜んでるし。


「お嬢がここまで片付けが苦手だとは」


手先が器用なのと整理整頓が上手いのは関連がないようだ。


「す、すみません」


ガビーがヘコヘコしながら片付けているのも面白い。


 そこへ声を掛ける。


「僕たちはこれから町へ行きますが、ロタさんも行きますか?」


「いや、おれは一度ドワーフ街に戻って職人と話をして来る。


うちの工房以外でも希望者はいると思うのでな」


ウンウン、さすがロタ氏である。


彼の仕事ぶりから、僕は心の中で敬称に『氏』を付けさせてもらった。




 さて、いつも通り、早朝出発で夕方到着。


「こんにちは」


「やあ、アタトくん。 よく来てくれたね」


あれ?、いつもと何かが違う。


ワルワさんがやけにニコニコしてるような?。


「アタトくーん、社交界デビューだって!?」


「は?」


ヨシローは何寝言をほざいているのか。


「そんなわけありませんよ」


冷たい目を向けると「ヒッ」と黙る。




 しかし、二人とも何だかソワソワしている感じだ。


「ご領主からアタトくんが辺境伯の領都の屋敷に招待されたと聞いてな」


「ええ、確かに招待はされましたが」


町の住民たち皆が、僕が辺境伯に認められたことを喜んでいるんだとか。


そんなことを言われても、町に住んでいるわけじゃない僕には分からない。


ガビーとモリヒトは淡々と荷物の受け渡し準備を始め、タヌ子はヨシローに馬乗りになってじゃれている。


「毎年恒例の収穫祭の式典に、ケイトリン嬢のエスコート役として呼ばれただけです」


先日、辺境伯からは出席の条件は呑むと知らせが来た。


改めて連絡に来たティモシーさんは、辺境伯の遣いがかなり渋い顔をしていたと笑っていた。


それでも、やはり祭りの目玉として僕の登場は必須らしい。


だから要求はギリギリ通ったという感じだな。




 そんなことより。


「ワルワさん。 この間の生き物、どうしてますか?」


「おう、あれか。 面白い実験をさせてもらっておるぞ」


さすが学者である。 すぐに食いついて来た。


 案内されて裏口から出ると庭に小さな小屋が出来ている。


「あ、アタト様、お久しぶりっす!」


「バムさん、こんにちは」


中にいたのはワルワさんのご近所の青年である。


しかし、なんで僕が『様』付けなんだ?。


「先日はホンマにありやとうっす」


頭を下げられる。


ちょっと待って、何のこと?。


「領主様から聞きやした。 国境の外まで行って、病の元を消してくだすったそうで」


はあ。 何でもバムくん家も大切な家族が寝込んでいたそうで、感謝されまくった。


「いやだから、礼ならモリヒトにー」


『アタト様、諦めて感謝されてください』


結局のところ、モリヒトは僕の眷属なので、礼は主人である僕にすることになるのが普通だと言われた。


僕はもう億劫になって、無視することにする。




「この小屋は?」


「へい。 アタト様が取ってきてくだすった魔物の研究室っす」


一応未知の魔物なので、用心のため専用の小屋を作ったそうだ。


「オラは暇な時に見に来てるっす」


ちゃんと魔道具で最低限の防御結界は張られている。


「バムくんがここの担当になってくれて助かっておるよ」


ワルワさんは高齢だから手伝いが身近にいてくれるのは有難い。


僕からも「それは頼もしい」と持ち上げる。


 一見では分からないが、色々と環境を変えて飼育されているらしい。


部屋の中の棚にはガラス製の箱が並んでいた。


日光に当てたり、人が全く近寄らないようにしたり、魔石を与えたり、何も餌を与えなかったり。


「ワルワさんや町に迷惑掛からんようにオラが世話してるんすけど、慣れたら可愛いっすね」


満面の笑みのバムくん。


大きな体に似合わない童顔の、まだ若いバムくんが笑うともっと幼く見えた。




 母屋に戻り、バムくんも一緒に夕食を取る。


ヨシローは領都の話を聞きたがったが、そもそも僕は興味が無い。


「ねえねえ、領都ってここより大きいんだよね?。 遠いのかな」


ティモシーさんにでも訊いてくれ。


「ヨシロー、明日にしなさい。 アタトくんもお疲れじゃろう」


ワルワさんのお言葉に甘えて、食後早々に僕たちは地下の客間に引っ込んだ。


「思ったより辺境伯の招待はオオゴトなのか?」


ヨシローはまだしも、ワルワさんやバムくんまで僕を見る目が変わった。


人はやはり権威には弱いってことか。


『分かりかねます』


モリヒトは人族のことにはあまり興味がなさそうだ。




 客間は一部屋しかないので、僕たちは異性であっても同室。


モリヒトが室内に魔法で仕切りをちゃんと作ってあるので問題はない。


「アタト様、明日は商店に行きますか?」


ガビーは何故か鼻息が荒い。


「行くよ。 ガビーはトスの所に行くんじゃないの?」


僕の予定は魔道具屋と教会の蔵書室。


あとはまあ、行きたくはないけど領主館だな。


「ではお共します!」


はあ、良いけど。




 ガビーの目的は僕の旅支度だった。


「色々と買い物があるんで」


まずは誰かに店を紹介してもらわないと、ということで領主館に来た。


「よくおいでになりました、アタト様」


ケイトリン嬢まで態度がおかしい。


恭しく頭を下げられる。


今まで、そんなバカ丁寧に接していなかったよね。


「領都の式典用の正装をお作りしましょう。 仕立て屋を呼んでございますわ」


いつの間に?。


「もちろん、費用の一切もお任せくださいませ」


「あ、あのですね、ケイトリン嬢。 それくらいのお金は払えますよ」


「とんでもございません。 私をエスコートして頂くのですから」


半端なことは出来ないと断られる。


「領主である父からも、ぐれぐれもアタト様には失礼のないようにと言われております」


辺境伯に、の間違いだろ。


 とにかく、僕は待ち構えていた仕立て屋に身体を測られ、好みを聞かれる。


領都に行くまでに仮縫いと仕上げの予定日を確保された。


ぐえっ、そのためだけにしばらく町に滞在することになりそうだ。



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[一言] 超意訳:大人しく見世物に成れ
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