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異世界を信じる者たちへ 〜何故かエルフになった僕〜  作者: さつき けい


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第六百三十七話・眷属の仲間になりたい


「どうした、ガビー」


僕は夕食用の部屋着に着替える。


なんか変な感じだが、今回は全員に対して僕が責任者であることを印象付ける必要があり、キチンとした服装と普段着の中間くらいにした。


「アタト様、キランとサンテが眷属になったって、本当ですか?」


ギロリと睨んでくる。


「ああ。 ちょっと事情があってな」


モリヒトは僕の着替えが終わると、次は髪を整え始める。


「どんな事情か知りませんけど、納得出来ません!。 私のほうが先に知り合ったのに!」


ガビーが僕に詰め寄ってくる。


納得出来ないってなんだよ。




「眷属に早いか遅いかは関係ないぞ。僕にとって役にたつか、立たないかだけだ」


「だったら!、私の方が役に立って来ましたー」


口を尖らせたガビーが涙目になってきた。


「そう興奮するな」


僕はガビーを椅子に座らせる。


モリヒトがガビーの前に冷茶を置く。


頭を冷やせってことだ。


「ガビーは僕の役に立つとか、立たないかではなく、友達だろ」


モリヒト以外に出来た最初の友人。


「と、ともだち」


ガビーの声に、僕は大きく頷く。




 ガビーが僕の役に立ってくれてるのは分かっている。


だけど、眷属ってのは違うと思う。


「眷属ってのは家来とか従者っていう意味でさ」


ただ金銭で雇っている使用人より、身内に近い。


忠誠心とか、そういうモノを契約の形で示した者、かな。


「僕としては、ガビーはそれに当て嵌まらないんだよ」


友達だから、ドワーフとしてのガビーの問題にも立ち向かえた。


実際、ドワーフ族の男尊女卑というか、鍛治は男性で家事は女性ってのは解せない。


話を聞くと、ガビーは工房主の娘でありながら、他のドワーフ男性から陰湿な嫌がらせを受けていた。


それならうちに来れば?、となったわけだ。


まあ最初は侵入者として捕まえたんだがな。


「友だち、エヘヘ」


ふう。 ひとまず誤魔化せたな。




 そろそろ食堂に向かうか、と思っていたら扉が叩かれた。


モリヒトに訊くまでもなく、


「アタト様、少しいいですか?」


と、問う声はハナである。


「ああ、いいぞ」


そう答えると「失礼します」と、扉を開いて入って来た。


「どうした?」


僕がいない間の報告なら明日、時間を取ると話してある。


 ハナはガビーを見上げた。


「たぶん、ガビーさんと同じ件です」


ん?。


「私も眷属にしてくださいませ」


くっ、ハナまで!。




 なんで、皆して僕の眷属に拘るんだ。


モリヒトが断ってくれないかな、とチラリと見る。


『アタト様の魔力には余裕がありますから、まだ眷属は増やせますよ』


相手が精霊なら魔力量に不安が生じるが、人間なら問題はないと言う。


「ド、ドワーフはダメですかっ!」


ガビーがモリヒトに迫る。


『いえ、おそらく大丈夫かと』


モーリーヒートー、裏切り者!。


 そんなわけで、僕の眷属が2人増えた。


はあ。 なんでこうなる。




 ガビーとハナを連れて、1階の使用人食堂に向かう。


「お待たせしました」


ズラシアス一行とアタト商会関係者が向かい合って座っている。


食事の前に簡単に紹介し合う。


 ズラシアス側は元王女と『異世界関係者』だ。


だが、本物の『異世界人』のタカシがいても、商会側が誰も驚かない。


日頃から僕が異世界らしい料理や食材を取り入れているし、皆もよくヨシローには会ってるからな。


それが新鮮だったようで、逆にズラシアス側が驚いている。


「ズラシアスより『異世界』に馴染んでるってどういうことですの」


ティファニー嬢が首を傾げていた。


まあ、そう深く考えないでくれ。




 ズラシアス側にすれば、エルフやドワーフが珍しいそうで。


しかも、人間と一緒に働いている。


「種族の違いは気になりせんの?」


料理の配膳が始まり、ティファニー嬢が給仕をしているサンテに話し掛ける。


「アタト様はエルフという前に、私には恩人ですから。 生涯お仕えするのみです」


サンテはニコリと笑う。


「エルフは傲慢だし、ドワーフは同族以外には冷たいって聞いたよ。 キミは大丈夫?」


タカシがハナの腕を掴み、小声で訊ねる。


おい、全部聞こえてるからな。


「私も兄と同じです。 私たちはここに来てから、少しも嫌な目にあったことはございません」


ハナはそっとタカシの腕を外す。


そして、ニコリと笑う。


「私たちはアタト様とは家族ですから、一緒にいるのが当たり前なんです。 それに眷属にして頂き、今は魔法の修行もしていますよ」


と、嬉しそうに話す。




 夕食を終え、お茶が配られる。


「明日からの予定ですが」


農作業関係者は朝食後、サンテとモリヒト付きで農場へ行くことになっていた。


 最初なので徒歩で移動してもらう。


魔獣の森を通るため、馬車は使えない。


どれくらいの距離があり、周りがどういう場所なのかを知ってもらうためだ。


「見学したい方がいれば申し出てください」


人数が増えるなら護衛も増やす。


「私でも行けますか?」


ティファニー嬢がティモシーさんに訊ねる。


「大丈夫だと思いますが、馬車はないし、魔獣の森で2泊しますよ」


モリヒトがいるので危ないことはないと思うが、とりあえず覚悟は必要だ。


「はい、がんばって着いていきますわ」


おー、ティファニー嬢が本気だ。


僕はティモシーさんに頷く。




 次に、ドワーフ工房見学について。


「僕が所有しているドワーフの工房があります。 こちらは森から草原に抜ける道と、この館の地下から行ける地下道がありまして」


案内は工房長であるガビー。


決めるのは彼女だ。


「草原を突っ切る場合は丸一日、地下道は真っ直ぐではないので2日掛かります。 参加人数で決めたいと思います」


へえ。 それは知らなかった。


ワルワ邸からウィウィが参加予定なので出発は明後日になる。


それまでに希望者はガビーに申し込んでもらう。




「どちらも行きたいって言ったら?」


タカシが手を挙げて言う。


「農場担当のサンテと、工房担当のガビーに訊いてくれ。 何日かおきに往復しているから、都合が合えば連れてってくれる」


護衛や食料の準備など、自分で出来る範囲でやってもらうことになるがな。


「分かりましたー」


タカシは頷いた。



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