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異世界を信じる者たちへ 〜何故かエルフになった僕〜  作者: さつき けい


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第六百二十四話・街の施設と観光


 エンディ領で僕がやることといえば、ドワーフ工房街とアタト食堂2号店に顔を出すことである。


その日は、少女たちを連れて街に出た。


 まずは昼食をアタト食堂で食べよう、と一歩入ったが。


「って、満席かー」


仕方なく店を出る。


「アタト様!」


ドワーフのお婆様の孫娘が慌てて出て来た。


「別室をご用意しておりますわ。 こちらへどうぞ」


「忙しいのにすみません」


僕たちは建物の2階に案内された。




 工房街にある2階建の建物。


1階は工房職人のための研修所とアタト食堂2号店。


2階はエンディ領の工房組合である。


組合事務所にはドワーフのお婆様の息子で、このドワーフ工房街の代表がいた。


「アタト様。 お久しぶりです!」


デカいおっさんドワーフと握手する。


イタイ。


「研修所は順調ですか?」


「はい!、お蔭様で」


僕は、その代表の嫁と娘にアタト食堂2号店を任せていた。




 事務所のテーブルで食事をしながら世間話をする。


「しばらく隣国に行ってらしたとか」


「ええ。 そういえば、向こうにはドワーフ族はいないのですか?」


大国では異種族の噂を聞かなかった。


「ドワーフ同士にもナワバリといいますか、商売用の販路がありますからな」


いるにはいるが、やはり交流出来るのは一部の行商人に限られるらしい。


大国でもその姿を見ることは稀だという。


「この街くらいですよ、ドワーフが地上で活動するなんて」


そうなんだ。


「でも、これからは変わっていくのかも知れませんね」


伝統的なものばかりでなく、新しいもの、人族用など需要に合ったものを作るドワーフが増えるかも知れない。


それをこの研修所で、ドワーフと人族の職人が力を合わせて作り出してくれれば、僕も出資した甲斐がある。


「がんばってください」


「はい!、必ず期待に応えますよ」


いや、だから、握手はいらん。




 食事が終わると、少女たちは工房街での買い物に興味を示す。


「一緒に見て回りましょうか?」


僕がそう話し掛けると、2人が嬉しそうに微笑む。


「はい」「お願いします」


ヘイリンドくんと共に、護衛として付き添うことにした。


 この辺りはドワーフの工房と販売店が通りに並んでいる。


他領からは工房に買い付けにくる業者だけでなく、ドワーフを見に来る観光客も多いそうだ。


そのせいか、食べ物の屋台も出ている。


皆、楽しそうでなにより。




 現在のエンディ領都は活気が溢れ、若い人が多い。


以前、幅を利かせていた貴族や悪徳商人は、前領主の失脚と共に姿を消した。


今では貴族自体があまりいない、珍しい領地になっている。


 そして、少数精鋭なのは王都から来た側近たちだけではない。


この地に残った故郷を愛する者たちも明るくがんばっている。


「お蔭様で領民も増えています」


他領に逃げた民も戻って来ているという。


数少ない貴族家のヘイリンドくんは誇らしげに胸を張った。




 街中の警備は人族の警備隊とドワーフの治安部隊が行っている。


人族の兵士では屈強なドワーフの職人は手に余ることがあるのだとか。


ドワーフの行商人であるロタ氏の兄が治安隊隊長をしているはずだが、今は姿が見えない。


工房街の警備隊詰め所に顔を出す。


「こんにちは、ドワーフ治安隊の隊長います?」


「アタト様ですな、お噂は聞いてますよ」


警備隊の留守番が相手をしてくれた。


ロタ氏兄はこちらではなく、鉱山の管理事務所にいるそうで。


「ありがとうございます」


あっちには行かないつもりだったけど、顔くらいは出すか。




 夜になって、ようやく領主が帰還された。


翌朝、朝食後にエンディの部屋にお邪魔して挨拶をする。


「アタト、留守にしてすまなかったな」


「いえ。 お忙しいのに、対応して頂き感謝いたします」


どうやら到着が遅れたのは、母親である側妃の引越しの件だったらしい。


「いよいよ、こちらに?」


「ああ、ようやくだ。 レンシアとの婚姻もあるし、母上には早めにこちらに来て頂いて、準備を手伝ってもらうつもりだ」


それは良かった。


クロレンシア公爵令嬢との婚姻が、母親を王都から領地に呼べる理由になったようだ。


「これもアタトのお蔭だとは分かっているが。 なんだか悔しいな」


あれえ?。 素直に喜んでくれてもいいのに。


ニヤニヤしてたらもっと睨まれた。




 のんびりお茶を飲んで話していたら、


「何やら調べものをしているらしいな」


と、訊ねられた。


ああ、教会の件かな。


優秀な中年家令がチクッたようだ。


「ええまあ」


だけど、エンディには関係ないというか、あんまり教えたくない。


「私の領地で勝手はさせんぞ。 何をやってるのか話せば許す、かも知れん」


あー、そーいえば、領主様でしたねー。




 僕が、この領地の教会に拘るのには理由がある。


それは前領主の一族が『悪魔』と呼んでいた『ダークエルフ』に関することだ。


彼らが恐れた闇魔法、そして消えた町の住民たち。


小さ過ぎる教会になんらかの意味があるのではないか、と僕は予想していた。


「……少し待ってもらえます?」


子供っぽく首を傾げてみせると、嫌な顔をされた。


「お前があざとい顔をする時は碌でもないことを企んでる時だ」


イヤだなー、そんなこと、あったかなー。




 僕はすぐに、辺境地に向かう仲間たちを呼び出して部屋に集める。


「すみません、ちょっと大切な用事が出来てしまいまして。 先に皆さんをモリヒトの魔法で辺境伯の領都邸に送り届けさせて頂きます」


「はーい」「承知いたしました」


モリヒトには辺境伯邸に予告に行ってもらい、皆には準備を頼む。


「私はもう少しこちらにおりますよ」


ゼイフル司書は引き続き調査したいと申し出た。


そのため、教会警備隊の4人の護衛たちも今の状態で付いてもらう。


「ボ、ボクの机!」


ウィウィは運び込まれた作業用机が気に入ったようでしがみついてる。


「分かった分かった。 そいつを購入して一緒に送ってやるから」


「わーい!」


僕は中年家令と買い取る交渉をしたのだが。


「お買い上げ、ありがとうございます」


なんと……ドワーフ工房作の最高級の作業机だった。


これ、経費で落とせるのかな?。



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>モリヒトには辺境伯邸に予告に行ってもらい、皆には準備を頼む。 >「」 >「私はもう少しこちらにおりますよ」 「」はいったい何を言おうとしてたんや(棒
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