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異世界を信じる者たちへ 〜何故かエルフになった僕〜  作者: さつき けい


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第六百七話・話し合いの中身と決意


 ガレヴァン様も到着し、お茶とお菓子も供された。


神官長と領主には人払いをお願いし、モリヒトに盗聴避けの結界を頼む。


向こうの出席者は老神官長、中年の領主。


それぞれの側近の文官と護衛たち。


最低限の人数にしても5人残った。


 こちらは僕とモリヒト、イブさんにアダム。


そして領主の親族である老騎士ガレヴァン様。


「僕から提案があるのですが、聞いてもらえますか?」


「勿論です、エルフ殿。 あなたはこの街を何度も救ってくれた」


イヤイヤ、領主様、何度もは言い過ぎ。


辺境地からしょっちゅう来られる場所じゃない。




 湖の街は本来、小さな宿場町だった。


湿地帯があるため街道からは外れていたらしい。


それなのに今は必ず通る観光地だ。


昔は、周りを山に囲われた美しい湖に立ち寄る者は酔狂な金持ちが多かったのではないか。


彼らが通るために道を整備し、宿を建て、住民を増やす。


金持ちだけが来る町では住民の生活は難しい。


そのために他の観光客をも呼び込むために発展させようとした。


それを望んだのは同行させられた者たちや、田舎に移動させられた住民たちか。


教会を建て、呼ばれた神職者もいたのかもな。


それほどこの街の建物は景観に配慮され、どこの部屋も居心地は悪くない。




 しかし、割を食うモノもいる。


「このままでは精霊たちの怒りを買います」


なんで驚いた顔をする?。


僕が、彼らに協力してきたのは何のためだったか忘れたの?。


「し、しかし、ちゃんと言われた通り、湖の釣り時間も規制しましたし、酒も上等なものを毎回奉納しています」


僕は、溢れそうになるため息を押し殺す。


子供が今、そんなことをしたら馬鹿にされたと気分を害されるだろう。


相手は神官長と領主様だからな。


「それは、その時に行われていた観光用の行事に対する精霊たちへの謝罪であり、続けるための見返りでしたよね」


観光客が殺到し、夜の湖に落ちる危険性があった。


宿が不足し、働く住民たちは疲弊。


あのままでは客の不満からも魔素が溢れて留まっていく。


街道を整備したのは確かに観光客たち用だったかも知れないが、それは死者や怪我人が出ないようにするためでもある。


「新しい事業を始めるなら、それ相応の対策が必要になるのは当たり前ではないですか?」


精霊と直接交渉させるためにイブさんを弟子にして神官に昇格させたというに、まだ足りず、重積を背負わせようとしたバカがいた。


だから僕が、精霊をなんとか宥めるために休暇を取らせたというのに。


どちらにも平穏に暮らしてほしい。


僕の気持ちは、誰にも届いていないのかも知れないな。




「提案とは?」


領主館の文官に、よく僕の話を聞いてくれる有能な者がいる。


上司が理解していないようだと気付くと話を変えた。


「提案は三つ」


僕は昨夜急いで買いた紙を取り出し、テーブルの上に置く。 


文官が「失礼いたします」と手に取り、目を通す。


一つ、修練場の宿屋化。


「神官の体験を目的とする宿にしたらどうでしょう」


観光ではなく、修行。


まあ客には違いないが、清廉な神官を目指す者が増えることは精霊も文句は言わない、かも知れない。


修行だから、客も無理難題は言えないと思う。


料理や掃除も修行のうちだし、宿不足、人手不足の解消にも繋がる。


この場合の最注意事項は、客を決して『神官見習い』にしてはイケナイこと。


神官希望者には貴族も含まれている。




 二つ目、観光客の人数規制。


「街の街道に関を設け、宿を完全予約制にします」


街に入る観光客、住民の数を把握し、常に一定以上の人数が滞在しないようにする。


関に関しては、必要なら僕から国王陛下や貴族管理部に話を通してもよい。


 確か元の世界でも、人気観光地の手前に一つ施設を作って、直接入れないようにしていた気がする。


この世界でも、領境や沼地の手前に町を作り、そこに軍でも常駐させて管理させればいい。


「すぐには実行出来ませんが、何年か後に実施すると予告の公布、張り紙を国中に配布します」


これは教会が中心にやれば早い。


王都の教会本部に掛け合いますよ、僕が。


ってか。 相変わらず、僕の仕事が多いな。


 まあでも、この街の人たちにしたら、この提案はあまり歓迎されないのも分かっている。


だから僕が動くしかない。




 側近の文官から紙を渡された領主も神官長も渋い顔になる。


「かなり、その、画期的と申しますか、検討させて頂きますが」


今さら修練場の計画を変えろというのだから、神官長の反発は分かっているさ。


そのための老騎士ガレヴァン様。


元王都教会本部警備隊隊長のお貴族様である。


「わしは面白いと思うがな」


昨日のうちに、だいたいの話はした。


何年かかるか分からない。


だが、このまま放っておけば、優秀な領主たちは次から次に新しい観光を作り出してしまいそうで怖いんだよ。


この辺りで一度、止めておかなきゃならん。


ガレヴァン様の様子に領主も黙る。




 その上で、もう一つ釘を刺す。


「三つ目は『精霊を甘くみないこと』です」


モリヒトとアダムが頷いている。


「精霊の我慢が限界に達した後では、僕でも何も出来ませんよ」


精霊同士の争いは街や自然に影響が出る。


それだけでなく、複数の精霊の力がぶつかれば、この世界の全てを破壊しかねない。


 これには、さすがに神官長と領主、並んだ文官や護衛たちの顔が青ざめた。


「提案が全て通るとは思っていません。 ですが、よくよく熟慮されることを願っております」


強く言い切る。


「本日はここまでにいたします」


僕は席を立ち、深く礼を取った。


「イブリィー神官は教会に戻られます。 まだまだ未熟は弟子ですが、よろしくお願いいたします」


師匠としてはなるべく印象は良くしたいので、僕は神官長に向かってニコリと微笑む。


「あ、一つ、言い忘れておりましたが。 ガレヴァン様がアタト商会幹部として、この街に滞在されることが決まりました。 何かありましたら、ガレヴァン様に一言、ご連絡ください」


女性神官は丸め込める、辺境地は遠い等と思うなよ。


シャランと耳飾りが揺れた。



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