表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界を信じる者たちへ 〜何故かエルフになった僕〜  作者: さつき けい


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

589/667

第五百八十九話・帰国の報告と辺境伯邸

誤字報告、いつもありがとうございます

一部気になりましたので、あらすじにも書きましたが、再度お願いいたします


申し訳ありませんが、送信前に

活動報告2023年06月26日分をご一読くださいませ

よろしくお願いします



 無事に国境の移動魔法陣のある施設に到着した。


実は、モリヒトの移動結界の中にはサンテの父親、ウスラート氏が隠れている。


「もうしばらく我慢してくださいね」


「はい、大丈夫です」


外が見えない環境のため、たまに声を掛けている。


ズラシアスの国境の防御結界はかなり高性能なので、移動魔法でも勝手に越境すると警戒されてしまう。


だから僕たちがエテオールに飛ぶ時に一緒に移動させるしかない。


まあ、今回は宰相から許可証なんてもらってしまったので、何かあっても咎められることはないけどな。


「エテオール御一行様、お疲れ様でした。 ティファニー様、どうか、ご無事で」


係官が恭しく礼を取る。


挨拶はティファニーさんに任せた。


「ありがとうございます。 皆様もご安全にお過ごしください」


たくさんの見送りの人々の中、僕たちは移動魔法陣に乗り、一瞬でエテオール側の施設に到着する。




「ふう」


賑やかな交易の拠点であるズラシアス側に比べ、エテオールの施設は寂れた山間部にある。


初めて足を踏み入れた者たちは、その違いに驚いていた。


まあ、ズラシアスに比べれば小国なんでね。


「やあ、お帰りなさい」


はあ?。


何故か、エンディが待っていた。


「何してるんです、こんなとこで」


あれからずっと王都にいたわけでもなかろうに。


「まあまあ、そんなことはいいから。 サッサと移動しよう」


休む間もなく、王家から派遣された3台の馬車に詰め込まれて出発する。




 僕の乗る馬車にはエンディ、ティファニーさん、リザーリス大使である。


モリヒトはサッサと逃げた。


「ティファニー王女殿下、お久しぶりです」


エンディは、僕からの追求を避けるようにティファニーさんと話し出す。


「エンデリゲン殿下もお変わりなく。 わたくし、王籍停止中なのです。 ティフとお呼びください」


「そっか。 私も王籍を抜けた身だ。 エンディでいいよ、改めてよろしくね、ティフ」


「はい」


元王族であるふたりは微笑み合う。




 その後、しっかりエンディを問い詰めたところ、側妃が戻った時に僕が同行していなかったことを疑問に思ったようだ。


何かあったと察知し、自領に戻る途中で王都に引き返して来たらしい。


「心配してたんだよ?」


「それはどうも」


わざわざ戻って来なくてもいいのに。




 僕たちは途中の街で一泊し、翌日、王都に入る。


そのままリザーリス大使を大使館代わりの高級宿へ送り届け、マテオさんはそこから自分の商会に帰って行った。


 残りの者は辺境伯の王都邸に向かう。


「ティフは、これからどうするの?」


馬車の中でエンディが訊ねる。


「一度国王陛下にご挨拶したいです。 父王から親書を預かっておりますので」


ティファニー嬢と『異世界人』タカシは貴族管理部に登録が必要になるというので、王宮に向かう予定だ。


僕も国王に帰国の挨拶をする必要があるため、明日は一緒に王宮に行こうという話になった。


 


 辺境伯の王都邸に到着。


本館の玄関には辺境伯夫婦が並んで待っていた。


僕は馬車を降りて帰国の挨拶をする。


「ただ今、戻りました。 予定より遅くなりまして、申し訳ありません」


「いやいや、謝罪には及ばないよ。 よく戻って来てくれた」


「お疲れ様でございました。 皆様、本日はごゆっくりお休みくださいね」


辺境伯夫婦には暖かく迎えてもらえてホッとした。


いつも我が儘ばかり言って申し訳ない。


 僕はいつもの別棟に案内され、ティファニー嬢一行は使用人込みで、辺境伯家の客人として本館に泊まることになった。


キランとサンテの部屋にはウスラート氏を預けておく。


あまり目立つ行動はしないように頼んだ。




 エンディはまだ僕の部屋に残っている。


「ティモシーもちょっと来てくれ」


ティファニー嬢の護衛が無事にお役御免になったティモシーさんを、エンディが呼ぶ。


一緒に、僕の部屋で夕食を摂ることにした。


食事中は楽しそうに話をしていたが、終わると急に暗くなる。


「ちょっと拙いことになってな」


やっぱり何かあったのか。


わざわざ僕を待っているのはおかしいと思ったよ。




 僕は、ため息を一つ吐く。


「問題はなんですか?」


キランとサンテにズラシアスからの荷物整理を任せ、モリヒトが食後のお茶を淹れてくれる。


エンディは心底嫌そうな顔をしていた。


「早く伴侶を娶るように迫られた」


「誰にですか?」


「母上と、父上にも。 それと、うちの家令にも、せめて婚約者を探して来いと」


見つけるまで自領に帰れない状態になっているそうだ。


あー、それはそうだろう。


子供がいてもおかしくない年齢だし。


「せっかくドワーフの工房街や鉱山のお蔭で、領地経営の目処が立ったというのに」


だから、じゃないかな。


元王族であり、まだ若いが将来有望な領主。


狙っている貴族令嬢は多いだろう。




「ご両親は心配していらっしゃるのでしょう。今の王都は地方からも貴族たちが集まっていますから、探すには良い季節です」


ティモシーさんは、そう言ってモリヒトが淹れたお茶を飲む。


「候補はいるんでしょ?」


「いるにはいるが、あまり印象は良くない」


エンディは王子時代、破天荒な王族として貴族からはかなり嫌われていた。


「アイツらが裏でなんて言ってたか、良く覚えてるよ」


そんな相手を政略結婚であっても縁を結びたいとは思わないと言う。


 おかしいなぁ。


「僕は、エンディのお嫁さん候補は一人しか知らないんですが」


「ん?。 誰のことだ」


この際だからハッキリさせたほうがいいと思う。




「クロレンシア嬢ですよ」


公爵令嬢であるクロレンシア嬢は、エンディの幼馴染であり、学友であるティモシーさんとも仲が良かった。


現在は辺境伯夫人の護衛騎士として働いているので、この王都邸にいるはずだ。


「いや、あれは、その妹みたいなー」


「彼女の気持ちには気付いているんでしょう?」


クロレンシア嬢は、ずっとエンディに片恋している。


エンディは、公爵令嬢である彼女の評判が悪くなるのを懸念して、縁談の対象からわざと外れるようにしていた。


ティモシーさんでも知っている話である。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ