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異世界を信じる者たちへ 〜何故かエルフになった僕〜  作者: さつき けい


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第五百八十七話・迷宮の管理と戦闘


 迷宮については国の管理になるのだろう。


責任者は国王か、王太子か。


どちらにしても戦闘大好きな脳筋だから、特殊な魔獣を倒して最深部を目指したいんだろうな。


だけど、それは目的ではなく、いうなればご褒美なのだ。


「ご褒美?」


隊長が首を傾げ、僕は頷く。




 公園のこの辺りは、遥か昔から魔素の溜まり易い土地だったらしい。


モリヒトが、その上に迷宮を造ったのには理由がある。


「土地に魔素が溜まると魔獣が増えるのは、獣が魔素を大量に取り込むからです」


2人が頷く。


「本来ならば、そうなると土地の魔素は減るはずですよね」


魔獣が吸収した魔素は、魔獣の中で魔石になる。


「ですから、魔獣を倒して魔石を回収すれば新たな獣が魔素を体内に取り込み始めます」


それを繰り返して、世界の魔素を減らしていく。


迷宮でも同じだ。


「魔石は、体内に溜まった魔素から作られる魔力の塊です。 魔力が少ない人間は、それを使って魔道具を作り、生活を豊かにしてきました」


昔から人々は、歪な魔素溜まりを魔獣討伐によって減らしてきたのだ。


「僕は、魔石は神様からのご褒美だと考えます」


「うーむ」と老将兵は唸った。




 だが実際には、魔獣は減らずに増え続ける。


魔素がその場に溢れ続けているせいだ。


それは何故か。


「魔素溜まりが何故、発生するのか」


ゴクリと誰かが唾を呑み込んだ気配がした。


「僕の仮説ですが」


何故、この世界の人々は熱心に祈るのか。


「人は古来より教会のような清浄な場所で、自身の苦悩や悲しみを祈ることで浄化させてきたのではないかと」


神はそれを吸い上げて、時間を掛けて浄化している、とする。


例えば、地中深くに沈めて、ゆっくりと地上に上がってくるうちに、それは精霊たちや自然の力によって清められていく。


かなり時間がかかる。




 だが、人々の黒い思いは人口と共に増え続け、教会で祈る者たちも減っていったせいで、綻びが生まれた。


「それが魔素溜まり」


隊長がそう呟き、僕は「仮説です」と強調する。


「神の手に余る綻びを人々が魔獣狩りで回収し、そのご褒美で生活を豊かにする。 こんな風に世界は巡っているのではないでしょうか」


元凶が人間であることは、この際、目を瞑る。


というか、神様は人間にも処理させてると考えたほうがしっくりくるな、これ。




 老将兵は、感心したようにウンウンと頷く。


「さすが神の御遣い様ですな」


あ、今はそれ、言わないで。


てか、なんで知ってるの。


ジロッと睨む。


「お、おお、失敬。 教会の外では禁句でしたな」


いやもう、なんでそこまで知ってるの。


コワイ。


「え?、御遣い様って」


ポカンとする隊長。


「教会で行われた神事で、御遣い様からそのような話があったと伺っただけです」


と、僕は笑って誤魔化した。




「そんなことより、迷宮の管理についてですが」


早く話を終わらせたい。


「おお、そうだったな」


ボケてないよな、爺さん。


元世界の僕よりは若そうだし。


「探索隊についてはお任せいたします」


不都合があればその都度、入れ替えられる数を揃えられれば良い。


「迷宮内の設備や仕様については、ご相談頂きたいのですが」


さて、窓口をどうしよう。




 ティファニー王女や『異世界関係者』の多くはエテオールに移動する。


誰か、こっちに知り合いはいたかな?。


迷宮に接点があり、僕の知っている人物。


ズラシアスに拠点があり、出国の予定もない。


うーん……しばらくは教会に代理を頼むしかないかな。


ゴリグレン司祭は忙しいだろうから、副神官長にでも頼んでおくか。


「では、そのように」


老将兵も隊長も頷いてくれた。




 とりあえず、今のところはそこまで。


僕は隊長と一緒に本部天幕を出る。


「すみません、少しお話しを」


何のために来たのか忘れそうになった。


「はい」


しかし、どこで話すかな。


「あのー、今日は訓練ですか?」


「はい、勿論です」


静かで話も出来て、隊員たちの訓練も出来る場所。


あー。


「迷宮地下1階に行きませんか?、皆さんで」


「えっ」


管理者に声を掛けて、許可をもらう。


1階床の耐久試験とか適当に言っといた。


「では、皆を呼んで参ります」


隊長は急いで駆けて行った。




 しばらくの間、モリヒトと迷宮の門の前で待っていると、探索隊の皆がやって来る。


「こんにちは」


「アタト様、何か御用ですか?」


バタバタとやって来て、門の前に並ぶ。


「モリヒト、開けてくれ」


『はい』


開いた門から、ヨーコも含めた6名を連れて中に入る。


隊長には遠慮してもらい、門の前に待機だ。




 地下1時では、次々に明かりの光鉱石が点る。


ウゴウゴとノームたちががんばってくれたお蔭で、清浄な空間になっていた。


広い室内の真ん中に黒い水が流れる噴水。


闇の気配に、僕は妙に落ち着く。


「さて、皆さんにお話があります」


6名の顔を見回す。


「なんでしょうか」


年長の青年が警戒しながら返事をする。


 探索隊は武器の訓練中だったようで、簡単な装備は身に着けていた。


「難しいことではありません。 僕と模擬戦をして頂きたいのです」


「は?」「えっ」「なんで?」


それぞれ首を傾げ、疑問の声を上げる。




「前回、皆さんは10階層の最後の敵の直前に帰還しました。 つまり、あの魔獣を見たのは僕と僕の眷属だけです」


皆、コクコクと頷く。


「あれは相当強いです。 試しに戦ってみたくないですか?」


今のままの彼らでは勝てないだろう。


「どんな敵なのか、姿だけでも見てみたい!」


元気に声を上げる者。


「本当にやるんですか?」


僕を子供だと思って半笑いの者もいる。


「順番は?、誰からやるのー」


何を言ってるのやら。


「全員で一斉に、僕に掛かってきてください」


「えー」「あははは」




 ヨーコは何かを感じて、じっと僕を見ている。


年長の青年も、僕が10階から歩いて帰って来たことを思い出したようだ。


「皆、気を引き締めろ!」


年長の青年は武器を構えた。


さすがだな。


 僕はパチンッと指を鳴らす。


その合図で部屋の明かりが半分以下になる。


魔烏は闇属性だ。 


「実際には10階に明かりはありません」


僕は彼らを煽る。



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