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異世界を信じる者たちへ 〜何故かエルフになった僕〜  作者: さつき けい


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第五百八十六話・帰国の前にやること


 その夜、僕は公園の天幕のひとつを訪れた。


「お疲れ様です」


「うわぁっ。 驚かさないでくださいよ、アタト殿」


闇魔法で影から入り、警備兵の案内を通さなかったせいで驚かせてしまった。


「あはは、すみません」


他の者たちは就寝しているが、念の為、空いていた隣りの天幕で話をすることにした。


「ヨーコのことですよね」


「ええ。 このままお預かりするのは、ちょっと」


宿に泊めるのは良いとしても、この先、僕について来られるのは正直言って困る。


隊長はため息を吐く。


「そうですよね」


どうして、こういう事になったのかを話してもらう。




「私はあの子を8歳から預かり、面倒を見てきました。 他の隊員たちも似たような年齢から一緒でしたよ。 皆、家族のようなものです」


そこには男女差はなかった。


皆、彼女を大切な家族だと認識していた。


「魔獣のいる危険な場所では緊張もあり、自然とお互いに助け合うのですが」


しかし、年頃になってくると扱いが難しくなる。


 今までは地方の魔獣のいる地帯であり、それなりに土地の女性兵士たちも出入りしていた。


今回のような狭い迷宮で、仲間以外がいない閉鎖的な空間は初めてだった。


そんな場所で一度異性を意識してしまうと、それが戦闘の邪魔になり始める。


「どうしても、男たちは彼女を守ろうとしてしまいますから」


僕は頷く。


「それで、わざと辞めさせようと?」


「ああ、やはり分りますかね。 やり過ぎて彼女を傷付けてしまったのなら申し訳ないと思います」


隊長は、これで良かったのだと諦め顔。


お互いに傷付いている様子が見て取れた。




「でも最終的に決めるのは彼女自身ですよね」


僕の確認に隊長は頷く。


「それは勿論です」


家族のように育ってきても、異性として意識し始めた仲間たち。


隊長は、若い彼らをどうすれば良いのか悩んだ末に、彼女だけを違う場所へ送り出すことにした。


そういう話だ。


だけど、本当にそれで良いのかな。




 翌朝、僕はいつものように神社に参拝する。


キランとサンテまでが一緒に。


「お前らまで真似しなくてもいいよ」


「いえ、教会に足を運ばなくていいので楽ですから」


キランのこういう効率的なところは嫌いじゃない。


ちょっと不敬ではあるが、信心はあるし。


サンテは何も考えていないが「神様がいるから」で済む。


神職向きの性格だな。




 朝食にはまだ早い時間。


軽く体を解しながら話す。


「それで、ヨーコさんはどうするんですか?」


一緒に体操しながらキランが訊いてくる。


「そうだなー」


若い女性相手に説教はしたくない。


勝手に理解してくれないものか。


「そんなの、直接、本人たちに話し合わせればいいんじゃないですかー?」


ほお。 サンテはまだ体が柔らかい。


「アタト様が間に入って悩む必要なんてないっしょ」


確かにな。


「お前は口の利き方に気を付けなさい」


サンテはキランに拳骨を食らっていた。




 朝食時に、キランにはマテオさんと交易品のまとめの作成を、サンテには迷宮用御守りの下準備を頼んだ。


出国するまでに材料がある分だけ作って、教会に預けておく予定である。


ドワーフ族か、人族でもいいから腕の良い職人がほしいなあ。


アタト工房から独立させて、連れて来たほうが早いかも知れん。


「分りました。 戻ったらガビーさんと相談してみます」


あれ、口に出してたか?。


「いいえ、なんとなく」


サンテはすっかり僕の思考の先を読むようになっていた。


オソロシイヤツ。




 僕はフラリと公園に出掛ける。


もちろん、モリヒト付きだ。


公園の入り口は封鎖されていて、警備兵に話をして中に入れてもらう必要がある。


昼間だし、ちゃんと正規のやり方で入ろう。


「こんにちは」と声を掛けると、何故か警備兵に入り口横の本部天幕に案内された。


 先日は王子が座っていた探索責任者の席に、美丈夫という感じの筋肉爺さんがいる。


「おお、アタト様でしたな。 わしは王太子殿下からここを任されまして」


王太子になった第一王子の配下だそうで。


高位貴族家出身で、元は軍の精鋭部隊に居たが、今は前線を退いた老将兵らしい。


「はあ。 僕に何か御用でしょうか」


迷宮探索隊の隊長を呼んだから少し待て、と言われる。


「宰相閣下から、アタト殿はそのうち様子を見に来るだろうから、そうしたら捕まえて話をするようにと言われておりました」


帰国前に必ず様子を見に来ると読まれていたらしい。


そりゃあ、来るよ。 創った張本人だからな。




 座ってお茶を頂いていたら、


「失礼いたします!」


と、迷宮探索隊の隊長が入って来た。


「アタト様、お世話になっております」


僕は黙って会釈する。


昨夜、会っていたことは内緒だ。


「忙しいところすまん。 今後の迷宮探索の件を確認しておきたくてな」


僕と隊長は静かに頷く。




 まずは現状の確認から。


「今は探索隊への参加者を募っているところです」


隊長の話では、魔獣狩りに参加していたのは『異世界関係者』以外は、国軍もいたが、ほとんどが現地の狩人や警備兵だった。


彼らを引き抜いて来るわけにはいかなかい。


「しかし、一度に迷宮に入れる人数はせいぜい6,7人ですよね」


僕は、あまり多い人数が入ることを想定して創っていない。


「そんなに狭いのか?」


老将兵に訊かれ、隊長と僕は「はい」と頷く。




「それでも、何かあれば応援に向かったり、魔石などの回収を行う部隊も別動で入れるようにしたいと考えています」


1階に待機させておき、緊急で戻って来る者がいれば臨機応変に対処したいと言う。


そのためにも予備の戦闘員がほしいところだ。


「なるほどな。 確かに緊急脱出用の魔道具も安くはないしのぉ」


そこで僕を見ないでください。


御守りに利益は乗せてませんよ。


原材料と人件費のみです。


「僕としては、10階ごとの特殊な魔獣はかなり危険なので、9階までを何度も周回して鍛えることを推奨します」


だいたい同じ魔獣が出て来るし、何より迷宮を創った理由は魔石の回収にある。


消費に釣り合うだけの供給分があればいいはずだ。


「そうであったな」


老将兵はカラカラと笑った。



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