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異世界を信じる者たちへ 〜何故かエルフになった僕〜  作者: さつき けい


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第五百七十四話・御守りの作成と試験


 僕は、取り急ぎ迷宮用の御守りを作ることにした。


モリヒトに頼んで、移動結界で手伝いを連れて来てもらう。


宿には無理を言って人数分の部屋を押さえた。


ごった返していた野次馬は、明け方の魔狼の声と戦闘による地響きが漏れ出たせいでかなり減っている。


誰かが故意に流したんだろうな。


「お呼びですか、アタト様」


「サンテ。 すまんが墨を磨ってくれ」


持って来た墨汁は使い切ってしまった。


「承知しました!」


モリヒトがサンテに書道具一式を渡す。




 キランには帰国の準備を進めてもらう。


「私たちの荷物は整理して来ました」


ティモシーさんとタカシは王女と一緒に移動になるだろうからな。


土産物の確認と、今後継続して輸入したい物の一覧表の作成を頼む。


「多くないですか?、これ」


メモを渡すと顔を顰められた。


すまん。 モリヒトがかなり酒を増やしたんだ。




 キランとサンテを呼んだら、マテオさんまでついて来たのは予想外。


「はあ、やっぱり城は気疲れしますー」


今回、マテオさんには色々やってもらったし、文句はないが。


なんで王女の護衛だった女性までついて来たの?。


「任務で組んでみたら意気投合しましてね。 もし、エテオールに亡命するなら、うちの商会で雇うと約束してしいました」


マテオさんの後ろで女性が薄く笑う。


女性の方が少し年上だが、どっちがどっちを捕まえたのかは聞かないことにしよう。


 マテオさんには自分の勤める商会の取引先を回るついでに、アタト商会とスピトル商会との商談を任せる。


「お任せください」


代理で申し訳ないが、僕はしばらくの間、迷宮の件で忙しい。




「ティファニー様は今どこに?」


「昨日の夜、『異世界関係者』の魔獣狩り部隊の再認定を行い、その後は宮殿の自室に戻ったようです」


と、キランが答える。


 予想通り、再認定では『異世界人』も『異世界の記憶を持つ者』もいなかった。


全く血筋に関係ない遠縁や何代も離れた子孫。


そんな者に『異世界関係者』だからと国が保護し、金を出す意味がない。


その場でティファニー王女から解任されたという。


「なんでキランがそんなこと知ってるの?」


「立ち合わせて頂きましたので」


キランは僕たちが去った後、ゴリグレン司祭に誘われて教会に残り、再認定を見学していたそうだ。




 再認定された魔獣狩りの『異世界関係者』たちは、皆、戦闘能力が高く、魔獣狩りに役立つ才能を持っている。


いきなり放り出すのではなく、新しい提案があった。


「もしよろしければ、今度新設される『迷宮探索隊』に入隊されませんか?。 勿論、これまでの実績を鑑み、給金やその他費用は国軍に準じます」


最前線ではなくても、支援部隊など配属先は自由に選んで構わない。


王女の言葉に皆は半信半疑だったそうだが、明らかにホッとしている者が多かったそうだ。


「あれが迷宮ですか」


キランとサンテは、宿の窓から結界に囲まれた公園の中央部を見る。


今は何も見えないが、先日まで穏やかな噴水の音がしていた場所だ。




 僕は王女への面会の要請と、国王と第二王子への手紙を書き、モリヒトに配達を頼む。


『承知いたしました』


モリヒトは光の玉になり、姿を消す。


 さて、僕は夕食までサンテと共に御守りを作る。


「蛇皮の腕輪ですね」


エテオールの御守りは紙を細く折り畳んで入れて、腕時計より細くした。


ズラシアスの迷宮用は、腕輪といってもかなり太めだ。


幅だけでも、大人の人差し指くらいある。


「緊急脱出用だからな」


発動しなかったら洒落にならん。


 一本一本にかなりの魔力を込めなければならない。


本人の意思で発動する闇魔法は腕輪に触れるだけで魔力が流れ、1階に今夜設置予定の脱出口に排出される。


『緊急、1階脱出口移動』


文字が多いから漢字で書いた。


高価な魔道具になるので解体するヤツはいないと思うからバレないとは思う。


これは、どうしても発動を阻害させられないので折り畳めずに太くなり、魔力もそれなりに必要だ。


また、使用者の危機に勝手に対応する機能も付ける。


蛇皮の一部、手首の脈が当たる部分に、急激に減った場合にも勝手に発動するように文字を仕込んだ。




 やっと完成して、2人でフーッと息を吐く。


「コレ、今夜実験ですか?」


サンテが訊いてくる。


「……ああ。 でも、お前は連れて行かないぞ」


「えええー、そんな!。 大丈夫だから連れてってよ!」


言うと思った。


何が大丈夫だ。


「お前が行くと、キランも行きたがるからダメだ」


サンテはスルスルが付いていても、まだ戦闘は素人だ。


キランは戦闘はマシになったが、長距離が得意で迷宮には向かない。


サンテが行けるならキランだって行ける、と主張するに決まっている。


無理だって。


「そのうち、安全が確認されてから誰かに連れて行ってもらえ」


これは遊びじゃない。


普通の魔獣狩りと、なんら危険度は変わらないんだ。


しかも、これはまだ試作段階だしな。


「今夜、脱出用魔道具の試験をして、うまくいけばお披露目になる」


もう一晩だけ我慢しろ、と念を押す。


サンテは渋々頷いた。




 夕食を済ませ装備の点検をする。


昨日と同じでも今夜は黒狸のマントは脱がない。


地下2階に下りる予定だが、実際に戦闘するのは僕じゃない。


まあ、何かあれば手は貸すつもりだけどな。


 そろそろ第一王子の天幕の傍に人が集まって来た。


あれが将来の『迷宮探索隊』の隊員たちだろう。


「じゃ、行って来る」と、言おうとしたら、何故かキランとサンテが執事服で待っていた。


「迷宮まで、お見送りします」


「魔道具の説明なら任せてください」


はあ、勝手にしろ。




 宿を出て、公園の入り口にある天幕まで歩く。


装備もバラバラな老若男女。


魔獣狩りで鍛えられた猛者という感じだ。


「おお、来たか」


第一王子の天幕に招かれる。


中には、ティファニー王女とティモシーさん。


そしてモリヒトがいた。


『アタト様のお手紙を届けましたところ、この方々に捕まりまして』


そこには、第二王子までいた。


 どうやらモリヒトは、彼らをここまで運んで来たらしい。


何やってんの。



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― 新着の感想 ―
モリヒト、ナニ企んでやがる 何か企んで無ければ無視して転移して来るやろ
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