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異世界を信じる者たちへ 〜何故かエルフになった僕〜  作者: さつき けい


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第五百四十九話・意思の確認と不満


「日程は2日後、時間は午後の鐘一つ目から」


それは決定した。


暴動の黒幕は宰相のような気がするけど、動機は分からない。


 王族がいる限り、宰相が王になることはない。


国政に対する不満といっても、王と宰相の間に対立はないそうだ。


「話し合いで解決出来るという程度の問題しかありません」


ティファニー王女はそう言うが、まあ、どこかに表面からは見えない不満があるのかも知れない。


人間は我が儘だからな。




 明日は教会に出向き、神官長と司祭と内容を詰めよう。


「殿下、本日は大変お疲れ様です。 第一の難関は何とか突破したようで安心しました」


僕は王女を労うが、彼女の表情は晴れない。


「いえ。 不在の間にあんなことに」


護衛たちも顔を顰める。


「城の者たちに怪我がなくて本当に良かったですわ。 エテオールの皆様には心より感謝申し上げます」


感謝の言葉は、今日すでに何度ももらっている。


「こちらも国の王女であるパーメラシア様がいらっしゃるので想定内でしたよ」


襲撃をある程度予想して動くのは護衛としては当然のことなので、気にしないでほしい。


それよりも明日のことや、これからのことを考える必要がある。




 しかし、その前に。


僕はモリヒトに目を向けた。


さっきから何やら言いたいことがあるようなのだ。


「すみませんが、僕の眷属が何か話があるようでして」


そう言って「いいよ」と、モリヒトを促す。


『先ほどアタト様からの命により、ティファニー様に騒動をお伝えするため、この国の宮殿内に入ったのですが』


モリヒトは僕から離れることはあまりないので、今回は命令ということにして行ってもらった。


結界があってもモリヒトには無意味だしね。


『そこで、先日、探した魔力に遭遇いたしました』


「は?。 それってサンテのぬいぐるみのアレか」


モリヒトは頷く。


マジか、もっと早く言ってくれればいいのに。


『おそらく宮殿内にいるのではないかと』


「どういうことじゃ」


護衛の爺さんが食いついた。


どうって。 襲撃された貴族とその仲間たちは宮殿のどこかに囚われているということだ。




「だいたい処刑されたっていうのは、どこからの情報だったんですか?」


僕の質問にしどろもどろになりながら王女が答える。


「確か、文官が伝えに来たと思いますわ」


しばらく前のことだから思い出すのも苦労していた。


「つまり。 その嘘を吐いた奴が彼らを隠したんでしょうね」


王女だけでなく、国民にも亡くなったことにしている。


それが出来る立場の人間の仕業だということだな。




 最初は被害者として、事情を訊くために宮殿に連れて来られた。


それが急に「お前の方が悪い」と言われて牢に入れられる。


その後は、表向きは処刑されたことになっていることも知らず、そのまま宮殿の牢で過ごしているのではないか。


「そんな!。 あれから数年も経っているのに」


爺さんの痛ましそうな声に、僕も頷く。


「生かしておいたのは、何か理由があるのでしょうね」


怪しいのは、当主でなければ開かない箱だ。


「そして、今頃になってソレが必要になった」


だから、エテオールで子供を探している。


「殿下」


僕は、沈みがちなズラシアス国関係者に話し掛ける。


「先日も申し上げた通り、地下牢の者たちを救出するのは簡単です」


王女たちは頷く。


「もう一度確認しますが、処刑されたことになっている者を、僕が引き取ることに問題はありませんよね?」


「あ、ありませんわ」


すでにこの国にはいないことになっているのを念押しで確認した。




 今日はもう遅い。


「では、準備が出来次第、救出します」


サンテの父親だけではなく全員を移動させよう。


怪我人や病人がいるかも知れない。


事情が分からないままなのもかわいそうだし。


「一旦、この城の倉庫に連れて来ます」

 

彼らの世話は、仲間である『異世界関係者』に頼むとしよう。




 さて、忙しくなるな。


まずは明日、王女とティモシーさんには教会での儀式の打ち合わせに行ってもらう。


その間にこちらでは城内の倉庫で受け入れ準備をする。


「承知いたしました」


「それでは、おやすみなさい」


ようやく客は出て行った。


 僕はフウッと息を吐く。


「もういい?」


「ああ。 待たせたな、サンテ」


お手洗いに隠れていたサンテが出てくる。


護衛の父娘に気付かれないよう、念の為、結界で気配は消しておいた。


「話は聞いたな?」


「うん」とサンテは頷く。


明日、いや明後日には父親だと思われる相手に会うことになる。


「それまでに出来るだけ魔力を上げないと」


「いまさら?」


「1日じゃ無理だ」とサンテは顔を顰める。


「とにかく、集中して、数をこなす」


これしかない。




「数って、またパメラ姫様と人混みにでも行くの?」


「いや。 明日はパメラ姫には大人しくしていてもらう」


エテオールに帰る日が近付いている。


荷造りもあるので、ゴリグレン家のパトリシア妃には宿ではなく、こちらに来てもらうように伝えた。


来るかどうかは分からないが、パメラ姫に関してはもう本人に任せるしかない。


答えが出ないなら連れ帰るという話はしてある。


「サンテには僕の手伝いを頼む」


僕とモリヒトで宮殿から囚人を拐って来る予定だ。


「その前にやることがある」


ティファニー王女がいない隙に、僕はこの城にいる『異世界関係者』と話がしたい。


「サンテには僕の傍で、彼らの本心を確認してほしいんだ」


「あー」


これは本番前の練習みたいなもの。


『異世界の記憶を持つ者』の意思を確認する儀式を、ここで予めやってみる。


「間違えても構わない。 ただ『異世界関係者』の意思をサンテが感じ取れるかどうか、だ」


ここにいる『異世界関係者』は『異世界人』『異世界の記憶を持つ者』、またはその子孫や家族。


サンテの『鑑定』がどこまで視えるのか。




 教会での儀式は2日後。


それまでに間に合えばいいし、間に合わなくても『真偽』の目がある。


偽物の『異世界関係者』ならそれで十分なはずだ。


「ギリギリだね」


「まあな」


おそらく、教会で暴動が起きる。


そこでどういう展開になるのか、楽しみだ。



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― 新着の感想 ―
解放の為に襲ったって言えば無罪放免になるし 宮殿襲っていいのでは?
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