表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界を信じる者たちへ 〜何故かエルフになった僕〜  作者: さつき けい


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

546/667

第五百四十六話・魔石の売り込みをする


 王女と護衛父娘を宮殿に送り出し、僕はマテオさんと共にスピトル商会に向かう。


廊下を歩いていたらパメラ姫が駆け寄って来た。


「待ってください、わたくしも行きますわ!」


へっ。


「すみません、殿下。 僕たちは今日、商談に行くのですが?」


「分かっていますわ」


ホントかな。


「わ、わたくしだって、少しでも祖父母様の役に立ちたいのです」


あー、それは嬉しい申し出だけど。




「わたくし、ちゃんと持って来ましたわ!」


何故か、煌びやかな小袋を取り出す。


先日の市場では出すのを忘れていたそうだが、財布みたいなものらしい。


 元来、王族には自分でお金を出して買う習慣などない。


「父上様や、エンディ兄様から小遣いを頂きましたのよ!」


今日はこれで買い物をするのだと言う。


隣でキランが苦笑していた。


国王もエンディも何やってんだ。


末姫を可愛いがり過ぎだろ。




 仕方なく、一緒に馬車に乗る。


「お買い物は必ず誰かに相談してくださいね」


サンテが隣で話しかけていた。


「分かりましたわ」


僕には反抗的な態度が多いパメラ姫だが、サンテにはヤケに素直だな。


「サンテは命の恩人ですもの」


と、少し頬を赤くする。


ああ。 市場で腕を掴まれたという、あれか。


拐われかけたのがよほど怖かったようだ。


なんていうんだったか、吊り橋効果?。


そんな感じだ。


とりあえず何でもいい。 おとなしくしててくれればな。




 店に到着し、馬車を降りる。


やはり、初日よりは客足は増えていると感じた。


「ようこそ、おいで下さいました。 パーメラシア王女殿下」


「本日はお買い物に来ましたわ」


元気な孫娘の声に祖父母だけでなく、店員や客が微笑む。


 ほのぼのした身内の光景はサンテとキラン、女性騎士に任せて、僕とマテオさんは気になっていた商品を値踏みに入った。


「これは一回の起動でどの程度の時間、持ちますまか?」


ライトスタンドらしき魔道具は装飾が美しく、いかにも貴族が好みそうなデザインだ。


「点けっぱなしですと数時間です。 今はその、新しい魔石もなかなか入荷しませんので」


数時間は短過ぎる。


魔石自体がこの魔道具の性能に合っていないのではないか。


「失礼ですが、魔石を外してみてもよろしいでしょうか?」


店員は困った顔をするが、商会長であるスピトルさんからは許可が出た。


「こちらの台座に嵌め込まれています」


蓋を外して見せてくれたが、やはり魔道具の大きさに対し、魔石が小さ過ぎる。




 僕はマテオさんと目で合図を交わし、芝居を開始した。


「おや、この魔道具ならもう少し大きな魔石の方が良さげですが」


「あー、本当ですね。 じゃ、コレ、使ってください」


僕はスタンドの台座を開いているマテオさんに、手持ちの魔石を見せる。


2回りは大きい、まだ新鮮な魔石だ。


ツヤツヤしている。


周りの客の目が釘付けになるのが分かった。


「すみません。 こちらを取り付けてみて良いでしょうか?」


小さい魔石にしか規格が合わせていないとも限らないので確認する。


「あ、はい、大丈夫ですよ」


礼を言って取り付ける。


予想通り、スタンドライトの明かりは美しく、切り替えも問題なく使えるようだ。




 モノは良いが、魔石が無い。


改めて、そういうことなのだと分かる。


マテオさんが、この店の商品は品質が良いから気に入ったと話す。


「必要になる魔石は、アタト商会から買って、お客様に納品すればいいですね」


僕は明るく頷く。


「なるほど、そうですね。 では、うちの商会からマテオさんの商会に融通する魔石の量を増やすように伝えます」


「いやあ、助かるよ」


そんな話をしていると、店員が雑談に加わった。


「こちらのお子様はどこかの商会のご子息でしょうか?」


小声でマテオさんに尋ねる。


「いえいえ、この方はエテオールでも有名な商会を経営していらっしゃいます。 アタト商会の商会長アタト様です」


紹介された僕は軽く会釈する。


「主に魔石や魔獣の素材を卸しています」


ザワリと店内の空気が変わる。


こんな子供が?。


小国エテオールの商会?。


コソコソと話し合う声が聞こえてくる。


トドメとばかりに、僕は高価な調理用魔道具を手に取り、魔石を外す。


「この商品、魔石は自分で取り付けますから、この状態でおいくらになります?」




 店の奥の部屋へ案内された。


ソファに座って待っていると、すぐにパメラ姫の祖父がやって来た。


「失礼だが、キミは本当に商会を?」


まだ半信半疑だよね、分かるよ。


僕は小声で呟き、変化を解いてエルフの姿になる。


「エテオールの辺境地バイット、その近くにあるエルフの森から出て、人族と商売をしています。 僕はアタト、こちらは僕の眷属精霊です」


目を丸くしているが、一応、自己紹介したよね?。


商会で働いてるって。


モリヒトのエルフ姿も見せたはずなんだがなあ。


「そうだったのか。 エルフで魔獣の素材を、なるほど」


なんかブツブツ言ってるけど、商売のほうはどうするの?。


「ああ、申し訳ない。 実はズラシアス国では魔石の供給量が年々減っていてね。 出来るなら、融通してもらえないかと」


これがエテオール国内なら僕もすぐに了承しただろう。


だが、ここは他国だ。


簡単には商売は出来ない。




「なので。 今回は僕の手持ちの魔石をお譲りすることにします」


商会の卸し売りではなく、個人としての譲渡。


これなら商品じゃないし僕個人の財産なので、ドワーフのお婆様にも怒られない。


「モリヒト」


『はい』


テーブルの上に厚手の布を置き、その上に大小様々な魔石を置いていく。


以前、国境を越えてスライム型魔物を確認に行った時に狩った分だ。


「まだ新しいので注意してください」


魔獣の大きさや強さにもよるが、体内から取り出して約一年未満の新鮮な魔石は、周りの魔素を吸収している。


あまり近付くと人間の方が魔素欠乏症になる。


魔道具に設置したり、魔法を付与して、吸収した魔素を魔力に変換するように循環させてやる必要があるのだ。


「す、素晴らしい」


スピトル商会長さんだけでなく、マテオさんまでが目を輝かせていた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ