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異世界を信じる者たちへ 〜何故かエルフになった僕〜  作者: さつき けい


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第五百四十二話・精霊の探索に頼る


「なるほど」と、僕は頷く。


「前任の大使は無能ではなく、王族に対し忠義の厚い方だったのですね」


サンテ親子をなるべく大国に引き渡さないように、わざと動かなかった。


だが、今頃になって再び妻子を連れ戻す動きが活発化したのは何故か。


「当主でなければ開かない箱」


「ええ。 誰かがそれをける必要があって、ひらける者を探しているのでしょう」


それが誰なのか。


開かないのは何故なのか。


「アタト様なら開けられる?」


パメラ姫が突然、そんなことを言い出す。


「あはは、それは無理でしょう」


もしかしたら壊すことは出来るかも知れないけどな。



 

 ティファニー王女がコホンと咳をする。


「先ほど、探し人を見つけられると仰いました」


「ええ。 遠い場合は少し時間がかかりますが、近ければすぐにでも」


「本当に?」


ティファニー王女は確認するように訊ねる。


やってみなきゃ分からないけど「おそらくは」、とチラリとモリヒトを見て頷く。


「但し、分かったとしても、そこへ行けるかどうかは別問題ですよ?」


「そ、そうね。 水の中だったり、危ない場所だったりしますもの」


皆がウンウンと頷く。


「では、その本人の魔力が感じられるモノを貸して頂けますか?」


「それが」


例の貴族家の屋敷は首都の南の端にあるため、ここからは遠い。


急に言われても往復に時間が掛かる。


「分かりました。 じゃ、サンテ」


「はい」


サンテは大事そうに古ぼけたぬいぐるみを鞄から取り出し、アタトに渡す。




「出所はエテオールの治安の悪い場所ですが、サンテが金髪の双子から預かった物です」


僕から説明する。


念の為に「持って来て」と頼んでおいて良かった。


サンテの両親が子供のために愛情を込めた贈り物だ。


体内に魔石を嵌め込み、言葉を掛けると軽く振動する仕組みである。


「サンテ!。 あんた、これ盗んだものじゃないでしょうね!」


「いいえ。 ちゃんと本人から預かりました」


「パメラ姫、お静かに」


お付きの女性騎士が嗜める。


サンテが本人であることを知っているティモシーさんは、黙ってサンテの肩を抱いた。




「モリヒト」


『はい』


「これでいけるか?」


数年経っているが、魔力は残っているかな?。


『大丈夫です』


モリヒトは僕とサンテに頷く。


『では』 


モリヒトから魔力が溢れて地に潜り、広がって行く。


皆がじっとそれを見守る。


 少し時間がかかりそうなので、何をしているかの説明くらいするか。


「モリヒトは大地の精霊です。 土の中、山や岩、それらを材料にした建物の中に侵入出来ます。 また結界魔法の使い手なので、人間ごときが張った結界なら簡単に破ります」


モリヒトは目を閉じて集中していた。


静かな室内に僕の声が響く。


皆、驚嘆の顔でモリヒトを見る。




 ふいに声がした。


『居ますね、近いです』


「えっ」


モリヒトが薄く目を開いた。


『首都内です。 同じ魔力を感知いたしました』


でかした。


「どこか分かるか?」


『首都の西側、大きな建物の地下2階。 複数人の魔力があり、常に動いているようなので生きているのは確実です』


ふむ。




「ティファニー殿下、どうしますか?」


「え、どう、とは?」


「この人物を連れて来ることは出来るよね、モリヒト」


『はい。 建物自体に非常に強力な結界がありますが、破壊してもよろしいのであれば、人間1人くらい救出は可能です』


つまり、他にも何人かいるらしいが、モリヒトなら結界を壊して救出可能。


ただ、その場合はこちらが犯罪者になる可能性もあり。


「それは困るわね」


犯人ではなく、善意の第三者に保護されているかも知れないので、キチンと話し合いの上で連れ戻せるならそうしたい。


まあ、普通に考えたらそうなる。


すぐに命の危険があるわけでもなさそうだしな。


「近くに行けば、建物は特定出来るんですよね?」


ティモシーさんが訊ねる。


『勿論です』


モリヒトは頷いた。




「生きていることは確定しました。 では、ここからは救出後の流れを確認しましょう」


僕は軽く手を叩いて注目を集める。


助け出して保護するにしても、その後はどうするか。


「そ、そうですわね」


ティファニー王女はあまりにも早く見つかったことに、まだ衝撃を受けているようだ。


これくらいでビックリしてたら辺境地じゃ生活できないぞー。


「僕が知りたいのは、彼は公式には死人なのか、行方不明なのか、です」


「国から正式に処刑されたと発表されておる」


警護の爺さんが言う。


では、死んだことになっているということだ。




「それは楽だな」


つい、声に出てしまった。


「楽とは?」


サンテに突っ込まれる。


「死人なら出国の手続きが要らないということさ」


少なくとも、彼はこの国にはもういない人間。


エテオールでいうなら、王宮の貴族管理部に申請が必要ない。


「なんて楽なんだ!」


ティモシーさんや女性騎士に苦笑される。


「では、彼を救出後は僕が匿います。 よろしいですね?」


ティファニー王女に確認する。


「必要な時は貸してくださいね?」


「承知しました。 必ず」


僕は軽く礼を取った。




 しかし、問題は一緒に捕まっているらしい者たちだ。


知らない魔力だけでは、モリヒトでも人族で男性であることぐらいしか分からない。


「おそらくですがー」


『異世界関係者』の男性が手を挙げた。


「その貴族家で働いていた『異世界関係者』ではないかと」


逃げた、と言われている『異世界の記憶を持つ者』か。


一緒に捕まってたら、そりゃ見つからないわな。


「だとしたら、そちらは『逃亡者』ですから、犯罪者となりますね」


「『異世界の記憶を持つ者』は犯罪者でもやることは同じだよ」


笑いが漏れる。


「どういうこと?」


エテオール側は首を傾げる。




『異世界関係者』は犯罪を犯しても、結局、働いていた農園や工場に帰るだけだという。


それが『異世界優遇措置』だ。


「それって、普通に生活してても、犯罪を犯しても同じってこと?」


パメラ姫が驚いて声を上げる。


まさに『異世界関係者』は保護されたら最後、人権なんてない、ということになる。


姿が見えなくなったら「逃げた」と言われるわけだ。



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