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異世界を信じる者たちへ 〜何故かエルフになった僕〜  作者: さつき けい


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第五百四十一話・会議の席での姿


「わ、わたくしは……」


パメラ姫がオロオロとし始める。


「パメラ姫様、落ち着いて。 アタト様なら悪いようにはされませんよ」


サンテが宥める。


「何故、そんなことが言えますの?」


「それはパメラ姫様もご存じゃないですか?」


サンテがパメラ姫を宥めるためになんか言ってるな。


パメラ姫もなんでそれで納得したのか、分からんが。




 とにかく、会議の準備が出来たというので、僕たちはティファニー王女と『異世界関係者』の待つ食堂に移動した。


「そちらは纏まったようですね」


「まあ、はい」


パメラ姫も落ち着いたようだ。

 

食堂の長机が会議用に向かい合わせに2列に並び、王女を中心に城の人間たちが窓側に座る。


そして、入り口の壁側にエテオールの者たちが並んで座る。


モリヒトは僕の後ろに、いつものように立っていた。


「話し合う前に、すまないが」


「はい、なんでしょう」


ティファニー王女が話しにくそうにチラチラと僕を見る。


「そのお、ここにいる皆から疑問の声が出てな」


「はい?」


僕は首を傾げる。




「アタト様は、もしかしたら『異世界関係者』ではないのか、と」


僕はドキリとしたが、そう思われることは想定内だ。


「フフフ、まあそう思われても仕方ないですね」


ニヤリと微笑んで、


「我は神の慈悲に乞い願う、力を納め我を解放せよ」


と、唱える。


シャランと音がして、姿が変わる。


僕に合わせて、モリヒトも人間からエルフの青年へと変化した。


「皆さんを騙していた訳ではありません」


王女は知っているが、ズラシアス側の大半の者は知らない。


「通常は人間の姿の方が動き易いので人間の姿をしています。 入国時はちゃんとエルフ族として申請していますし、殿下もご存じです。 後ろに控えているのは僕の眷属精霊ですので、お見知り置きを」


エルフを見たこともない人族には、精霊も分からないと思うので説明した。


「エルフ族は、生まれた時からすでに眷属になる精霊が付いているのです」


稀に精霊がいない環境だったり、相性が合わなかったりで眷属を得ることが出来ない場合もあるが、今回は特に話す必要はないだろう。




 呆気に取られていた『異世界関係者』たちがザワザワとし始める。


「エテオール国の『異世界人』サナリ・ヨシローさんとは友人で、彼に頼まれて色々と手助けしているうちに詳しくなりました」


特に食材や料理は気に入っていると話す。


「おお、エルフ様にも気に入って頂けたとは。 嬉しい限りですじゃ」


『異世界関係者』のお爺さんは納得してくれたようだ。


だいたいの人は頷く。


ポーッとしている女性たちはいつものことなので無視する。


 僕が『異世界の記憶を持つ者』であることは公表したくない。


誤魔化せるうちは誤魔化し切るつもりだ。




 さて、仕切り直しといこう。


「本題に入ります」


僕は仲間たちと話した3点について、話し合いを求める。


「パトリシア様の件はこちらには関係ないと思いますが?」


護衛の父娘は優秀な参謀でもあるようで、中年の娘のほうが口を開く。


まあ、そうだよね。


「だけど、反体制派がいなければゴリグレン様はパトリシア様をすんなり返してくれたはずですよ?」


エテオール国王の意思を確認し、初めて彼女の娘に会い、時間をかけて仲良くなりたいと手続きを始めれば良かった。


それが、愛しい女性に会った途端、今返したらもう二度と会えない。


そう思ったら手放せなくなった。


「それは分かります。 ですがー」


僕は大国が不安定なのが悪い、と一喝する。




 向かい側に座る女性が手を挙げた。


「『異世界優遇措置』反対派の問題が解決すれば、その話も変わってきますよね」


それがこの問題の根本なのだ。


「そもそも、貴族家が襲われた時、何故、反対派を逮捕出来なかったんです?」


教会警備隊として、ティモシーさんは納得していない。


「取り押さえたのじゃが」


護衛の老人によると、反対派は牢に、貴族家当主を事情聴取しているうちに立場が逆転したという。


「『異世界関係者』が一人居ないということが分かって、当主が逃したのだろうと」


そう言って当主を捕らえて牢に。


何故か反対派は放免になった。


「そこがおかしいのですが?」


ティモシーさんは老人を睨み付ける。


「何か不都合があったから『異世界関係者』は逃げたのだということでした。 反対派が放免になったのは、当主の処刑が決まり、罪人を捕えることに協力したからという理由です」


「バカな!」


サンテが悔しそうに顔を歪め、拳を握り締める。




 その後、当主の妹の身柄が婚約者の屋敷に居たことが確認された。


「わたくしには、妻子を匿うことしか出来ませんでした」


ティファニー王女は俯き、唇を噛む。


「ちょうどわしらが貴族家に伺っていたところ、その敷地内に反対派が雪崩れ込んで来るのが見えてな。 すぐに奥様とお子様を作物を宮殿に送るための移動魔法陣に乗せたのじゃ」


護衛父娘は、不穏な動きがあることを知らせに向かったのだ。


 しかし、一歩遅く、乗り込まれてしまう。


貴族の屋敷に武力で押し込むような物騒な輩だ。


女性や子供にも容赦しないだろう。


話し合いは望めない。


 その貴族家は首都の南端にあり、農作物を王族家に定期的に納品していたため、宮殿に直通の移動魔法陣があったのが幸いした。


「すぐにわたくしの部屋に匿いましたが、あまりにもお子様が幼いので」


普段宮殿にはない泣き声で、すぐに居場所が気付かれてしまう。


「ですから、エンデリゲン王子を頼って国外に出しましたの」


エンディは優しいからな。


あいつなら、どんなトラブルも引き受けてくれそうだ。


「わしら父娘で、そのまま妻子をお連れして国境の魔法陣へ飛び、隣国へ入りました」


その段階では貴族当主は無事だった。




 当主には無事に、妻子は国外に出したことは伝えた。


明るく頷き、王女に感謝していたという。


急に思わぬ事態になり、王女が国王に訴えている間に処刑が執行されたと連絡が入る。


隣国にも罪人の妻子を引き渡すようにと申し出が行く。


「前任の大使は、ノラリクラリと働かなかったの」



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