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異世界を信じる者たちへ 〜何故かエルフになった僕〜  作者: さつき けい


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第五百二十四話・王家の子供の愛称


 側妃様が王宮から離れたら、パーメラシア王女はどうされるのか。


側妃は平民に戻れるだろうが、国王の血を引く子供は微妙な立場になる。


「あのお」


その辺りの話をする前に何か言いたいらしい。


「……アタト様、わたくしに『殿下』も『様』もいりませんわ。 神の御遣い様にそう呼ばれるのは、こちらの方が不敬なります」


何を言ってるのかな?。


「僕は御遣いではありませんよ」


「そう言われても、わたくしはこの目で見ましたもの!。 エルフ様も精霊様までも頭を下げた姿を」


彼女は目を輝かせる。


いやいやいや。


「あれは僕が嵌められたんです」


顔を顰めて否定する。


ただの芝居なんだから本気にしないでくれ。


「ウフフ。 分かりました、そういうことにいたしますわ」


僕はため息を吐く。


大国じゃ影響はないと思うし、どうにでもしろ。




「で、敬称を省いて、なんとお呼びすればいいのでしょう?」


僕は改めて訊ねる。


「わたくしの母上様は幼い頃、パティと呼ばれていたそうです」


ゴリグレン家の屋敷で何か聞いたんだろう。


「そうですね。 パトリシアさんですから」


パティなら平民に多い可愛らしい名前である。


「わたくし、パーメラシアならば、パム、かしら?」


「かしら?」って。


「愛称で呼ばれたことはないのですか?」


王女は少し顔を赤らめ俯いた。


「王宮では皆に『末姫』と呼ばれてましたから」


一番年下の女性王族だもんなぁ。




 何故かこの世界では王族とか地位の高い家柄の者ほど名前が長い傾向にある。


愛称でも、あまり短いのは王族相手としては不敬になりかねない。


パムでは王族の愛称としては短いと思う。


公爵家のクロレンシア嬢は、確かエンディにはレンシアと呼ばれていた。


パメラか、ラシアか?。


「ではパメラ姫とお呼びしても?」


妥協点はこれくらいだろう。


「うん!、それが良い。 さすが御遣い様」


何が「さすが」だ。


御遣い、関係ねえよ。




 僕は交換条件を出す。


「では、こちらも『様』は付けずに名前だけをお呼びくださいね」


「ええー。 神の御遣い様にそんなこと!」


はあ?、僕に対しては元々そういう態度だったじゃないか。


「今さらですから気にしませんよ」


「怒らない?」なんて、上目遣いするな。


そんなことで怒らないよ。


「では、そうします。 アタト」


「はい。 そうしましょう、パメラ様」


嬉しそうに「ウフフ」と笑うが、そんなに愛称呼びが良いのか?。


僕には分からん。




 そんなことより側妃の話だ。


「側妃の身分を返上され、生まれた国に戻られるつもりでしょうか」


パメラ姫はプイッと顔を逸らした。


「だと、思う」


母娘の間で何かあったのかな。


 パメラ姫はゴリグレン家での様子を話す。


「ゴリグレン様と母上様はとても仲が良くて」


僕が、王宮からの依頼で側妃の実家であるゴリグレン家へ届けた贈り物の中に手紙があった。


「何度か大使様を通して手紙のやり取りもしていて。 もし、母上が王宮を去るならゴリグレン様がその身を引き受ける、という話になったとか」


それは当たり前だろう。


養女とはいえ実家だし、高位貴族家の娘として嫁がせた以上は責任がある。




 俯いたパメラ姫がポツリと呟く。


「母上様はゴリグレン様と、その、結婚するのかしら」


ふむ。 娘から見ても、それほど仲睦まじいということか。


 だけど、残念ながら国王の側妃だ。


優秀な女性だというし、国内ならまだしもいくら生家でも国外に住むことを許すだろうか。


それと、よく分からんが離縁ってどうやるんだ?。


子供もいるのに放り出して終わり、ってことはないだろ。


僕には分からん。


帰ったらエンディに訊いてみるか。




「それは存じませんが。 パメラ姫様はゴリグレン様がお嫌いでしょうか?」


要は気に入るか、いらないか、それだけを確認する。


「まだ、分かりません」


この年頃なら感情的に喚いても仕方がないと思うのに聡明な子だな。


少なくとも王族のひとりとして教育を受けてきた証だろう。


「母上様の立場も分かります。 エテオールに来たのも国王様に気に入られたからで、母上様の気持ちは関係ないって知っていますもの」


貴族や裕福な平民にとって、婚姻に本人たちの気持ちは関係ない。


ただの手段であり、女性は道具だと思われている節がある。


僕はそういうのは好きじゃないけど理解はしているつもりだ。


子供でも、その道具になり得るのは辺境伯家の養子問題で経験済みだしね。




 しかし、パメラ姫と母親については、外交的にも問題になるだろう。


「それで、僕に何をしろと?」


呼び出して愚痴を言うだけではないんだろう?。


「わたくし、祖父母の家には行きたくありません」


あー、明日の夜、夕食に招待されてるもんな。


「側妃様はご実家について、何か仰ってましたか?」


「いいえ。 ただ、自分の目で見て判断しなさいって」


それで、単身で10歳くらいの娘を送り出しておいて、自分は高位貴族家に滞在ですかー。


僕はため息を吐く。


側妃がこの国に残り、ゴリグレン家に住むとなったら、他国の王家の血筋であるパメラ姫をどうするのか。


側妃自身が、商家である親の反応が見たいのだろう。


実際、パメラ姫がこの国に住むとなれば祖父母か、またはゴリグレン家の世話になるからな。


案外、側妃自身が迷っているのかも知れない。




「ならば、言われた通りにするしかないですね」


自分の目で見て、感じて、判断する。


側妃様も子供自身に任せて様子を見るつもりなんだろう。


ブウと膨れるパメラ姫に苦笑が漏れる。


「とにかく、この国を出るまでは僕たちが付いています。 ご安心ください」


「本当ですか?」


逆になんで疑うんだ?。


「この国に置いてったりしない?」


ん?。


「それが国や側妃様の意向であったとしても、パメラ姫が嫌なら連れて帰りますよ」


僕にはそれが可能だ。


「じゃあ、わたくしがこの国に残りたいって言ったらどうするの?」


「その時はその旨を書いて頂いて、それを持ち帰ります」


勝手に置いてったと言われたら堪らないからな。


「そんなこと言わないわ」


また膨れた。


この姫様はプンプン顔が多いな。



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