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異世界を信じる者たちへ 〜何故かエルフになった僕〜  作者: さつき けい


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第四百九十四話・絵画の贈り先へ行く


 夜になってガビーの準備が出来た。


「では行こうか」


本部との連絡時間に合わせて飛ぶ。


その前に。


「寄るところがあるから僕も一緒に行くよ」


僕がそう言うと、ガビーは嬉しそうに笑った。


「はい!」


打ち合わせを終えたモリヒトは行き先に不満気だが、知ったこっちゃない。


僕は嵌められたことは忘れないからな?。




 予告なく飛んだ先は、エンディ領の領主館である。


「ヒェッ」


元第三王子付き護衛騎士で、現在では領主館、筆頭家令の執務室。


なんで知ってるかというと、まあ色々と悪巧みした仲だからだ。


「こんばんは、お邪魔します」


「……驚かさないでください、アタト様」


申し訳ない。


「すみません。 ちょっと用事があって本部に戻るところなんですが、エンディ様にお渡しする物がございまして」


ガビーの絵画を取り出す。


「はあ、女神様の絵でございますか?」


うん。 王都教会本部での御神託を知らなければ、こんなものだ。


「うちのドワーフ職人の入魂の作です。 エンディ様の叙爵祝いに贈らせてください。 仕上がったばかりですので額はございませんが、後日、送らせて頂きます」


「それは、ご丁寧にありがとうございます。 絵の具が乾くまで厳重に管理いたしまして、額が届き次第、主人の部屋に飾りましょう」


ヨシヨシ、思惑通り。


エンディ個人の部屋なら、そんなに人目につかない。


「エンディ様へのご挨拶は改めて。 本日は急な訪問で失礼いたしました」


低く礼を取り、再び飛んだ。




 辺境地の森の中。


本部、玄関前に到着。


「僕はこのまま王都に戻る。 ガビー、あの絵は本当に素晴らしいよ。 エンディ様のお祝いに相応しいものだった!」


大袈裟に褒める。


「あー、ありがとうございます。 じゃあ、額は木工職人に作らせて、仕上がり次第連絡します」


仕事に対しては真面目な子なんだよね、ガビーは。


「よろしく頼む」


「あのー、ひとつだけお願いがあるんですがー」


おや、珍しい。 ガビーのおねだりなら聞きましょう。




「実は、あの絵の練習用に描いたモノが何作かあるんで」


はあ?、他にもあるのか!。


「それなら飾ってもいいですか?」


ガビーにキラキラした目で見られると断り辛い。


「うっ。 じゃあ、大きさは手紙程度にしてくれよ」


元の世界のハガキくらいの大きさ。


それ以上の大きさは却下。


「それと人物は後ろ姿、または横顔で目は閉じた姿で」


これは絶対だ。


「違反は見つけ次第、全てを廃棄処分とする」


「えー」


ガビーは少し不満そうだが、僕が睨むと慌てて頷いた。


「は、はいー!」


ペコッと頭を下げ、走って建物の中に消えて行った。




 ふう。 なんとか誤魔化せたか。


自分が絵のモデルになるなんて思わなかった。


モリヒトはえらく気に入ったみたいだったが、あんなものを飾られたら堪らない。


恥ずかしくて身の置き場がなくなるよ。


「さて、王都に戻ろう」


『はい』


今、僕が本部の中に入ったら出られなくなりそうだから入らないでおく。


このままモリヒトと共に辺境伯王都邸にトンボ返りだ。




 部屋に戻ってすぐに通信を繋げて、お婆様と会話する。


「お婆様、こんばんは。 ガビーに会いましたか?」

 

「こんばんは、アタト様。 ええ、さっそく塔の工房へ向かわれましたよ」


行動が早いな。


「では、そちらの件は調査が終わりましたら報告をお願いします」


「承知いたしました」


僕はその後、王都の兄妹職人の工房のことを相談する。


契約や投資金額など、今の商会の状態で増やしても大丈夫か、事務方からの意見も聞きたい。


「分かりました。 検討して、またご連絡いたします」


「お願いします。 あ、食堂のご夫妻にお弁当を大量に頂いた件、お礼を言っておいてください。 こちらでも大人気でした、と」


「ふふふ、承知いたしました」


朗らかな笑い声と共に通信を終える。


 はー、あの絵のお蔭でドッと疲れた。


おやすみ、バタンキュー。




 それから2日後、お婆様から了解を得て、工房街の職人兄妹のところに向かう。


「アタト商会の意匠を看板に使うことを許可します。 但し、見返りは必要です」

 

無料で貸すわけにはいかない。


「おう、なんでも言ってくれ」


「では」


僕はドワーフの友人を呼ぶ。


「失礼する」


「ドワーフの行商人、キツロタ氏です。 僕はロタさんと呼んでます」


「よろしく頼む」


ロタ氏、ガビーがこっちにいる間、材料の調達に力を貸してくれていたらしい。


知らなかった、いつの間に来てたんだ。


「お嬢のことは親父さんに頼まれてるからな」


相変わらずの親バカ親方に、成人した娘に甘い兄貴分である。


だけど、お蔭でこっちの契約は滞りなく進んだ。




「こっちが発注書で、必要な物を記入してドワーフ街の組合に持って行くとおれに連絡がくる。 んで、アタト商会に価格の交渉をした上でアンタんとこにお届けとなる」


王都のドワーフ街に在庫あれば良いが、無い場合は取り寄せになるため日数が掛かるので注意。


「仕入れ先はアタト商会になるんですね」


「そういうこった。 これはアンタんとこが必要そうなもんを予め書き出した材料の価格表な。 いつも同じとは限らないが、まあ予定価格だと思ってくれ」


教会に納品している物の材料が中心になっている。


「はい。 分かりました」


妹さんが窓口になる。


「質問していいですか?」


「ああ」


商売熱心なのは嫌いじゃない。


ロタ氏も職人妹を商人として育てる気満々だ。




「アタト商会なら、ドワーフの材料ばかりじゃなくて魔獣素材なんかも仕入れ可能ですよね」


ロタ氏が僕を見る。


「うん、それなんだけど」


アタト商会としては、この兄妹の店をドワーフと人間の職人の仲介店にしたい。


僕はアタト商会の魔獣素材の価格表と、食材卸の価格表を渡す。


「ロタ氏は行商人だから、常に動いていて捕まらない時がある」


職人妹は頷く。


「その時に、この店で注文を受け付け出来るようにしたいんだ」


王都のドワーフたちは、ロタ氏が来ないと在庫も現在の価格も分からない。


「アタト商会なら、こういう物を用意出来ると宣伝になる」


「うっ、大丈夫かな」


責任重大だけど、がんばってくれ。



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王太子に絵がばれたら王宮に持ってかれて 目立つとこに飾られたり ガビーに女の絵の発注が大量に出されそうやな
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