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異世界を信じる者たちへ 〜何故かエルフになった僕〜  作者: さつき けい


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第四十八話・魔力の溢れる子供


 午後からは腹休めの休憩を兼ねて、ガビーの仕事の確認をする。


僕は鍛治室でガビーに次に作りたい物を相談していた。


「これを町の市場で販売出来そう?」


町中で売られている農具や食器と被りたくないので、今は銀食器を試作中。


この世界では、普通の住民は木製の食器を使っているのだ。


「銀はあまり採掘出来ないんですー」


希少だが、ドワーフの親父さんから銀鉱石は買える。


金ならあるし。


 


 武器、防具、鍋、釜などの作製と修理。 鍛治屋で扱うのは鉄製の物が中心だ。


魔獣がいる世界だから狩りに使うナイフや鏃は割と発達している。


こんな出回っていない銀製品を市場で売るのは価格的に無理そうかな。


「贈答用ならイケると思うんだ」


ガビーはとても器用だし、綺麗なものが好きなので繊細な模様も熟す。


とりあえず一式を作ってもらい、ご領主に献上して様子を見よう。




 ガビーの鍛治室ではトスはおとなしいが、物珍しそうにキョロキョロしている。


「ガビーさん、あれは何?」


トスが壁に飾られた額を指差す。


げっ、僕の字。


「美しいでしょう!。 アタト様に頂きました」


ガビーが嬉しそうに壁から外してトスに見せてやる。


僕は何でもない風を装っているが、内心ドキドキしていた。


いや、いいんだ。 ただの紙だし。


「へえ」


トスはじっと見入っている。


「アタトー、字がうまいんやな。 オラにも教えてくれん?」


町にも子供が文字や計算を習う学校に似た施設はある。


トスは計算は得意だが、字は下手だと嘆く。


「字なんて何度も書いてればそのうち上手くなる」


ただ書くんじゃなくて、手本通りに書こうとする努力は必要だがな。


「トスくん!。 私も勉強中なので一緒にがんばりましょう!」


そうそう、二人でがんばってくれ。




 翌日も、その翌日も、ワルワ邸のモリヒトの分身からトスの件は伝わって来ない。


現状維持らしい。


その間、僕たちは相変わらず魔魚を釣り、魔獣を狩る。


「おい、やっぱおかしいだろ」


今日は魔獣の森に来ている。


『トスが来てから明らかに増えてますね』


こんな魔魚や魔獣を惹きつけるような危ないヤツを町に返せないぞ。


「防御結界!。 トスはその中で魔力を操る練習してろ」


トスの溢れる魔力を防御に使えないか、検証中だ。


エルフ族なら当たり前のことでも人族には難しい。


「お、おう」


絶え間なく魔獣に襲われるのは、僕にとっては良い訓練になる。


「よっ、ハッ!」


僕は沿岸では魔法と投げナイフ、森では双剣で戦っていた。


防御だけじゃなく、攻撃のための身のこなしや両手に持つ短剣の扱いが上手くなったと思う。


ギャギャ!


タヌ子も毎日美味しいものが食べられるので嬉しそうにはしゃいでいる。




 幼獣の頃はタヌ子もよく魔獣に狙われたが、最近は成長したせいか以前ほどではない。


「こいつらの狙いはトスで間違いないな」


トスの両親は数年前、旅の途中で魔獣に襲われて亡くなったそうだ。


両親も魔獣が寄って来る魔力をしていたのか、それとも幼いトスの魔力の封印が間に合っていなかったのか。


よく分からないが、魔の付くモノにすれば何かを感じて襲って来る。


『今は魔力を使おうとするだけで無意識に漏れていますから、まずはそれを治さないと危険です』


魔力の使い方を教えないといけないのに、それをやろうとすると魔獣たちが寄って来る。


『アタト様の結界魔法の強化にちょうどいいですね』


確かに、僕は預かっているトスに怪我をさせるわけにはいかないから防御結界の強化をがんばっている。


でも、モリヒトが嬉しそうなのは売れる素材や、高価な魔石が大量に手に入るからじゃないかな。




 だけど、僕は落ち着かない。


こんな毎日が続いたら、体力的には大丈夫でも精神的に休まらない。


「ご、ごめん、オラのせいで」


僕は俯いたトスの肩をポンッと叩く。


「魔力を自在に扱えるようになれば良いのさ」


才能や魔力は生まれながらに持っているものだ。 本人のせいじゃない。


困るのは、本人が上手く制御出来ないこと。


このままだと町に返せない、というか、僕たちも行けない。


んー、あれしかないか。


「トス。 今夜から文字の練習をやろうか」


「ええの?」


僕は頷く。


森から塔に帰りながら、話を続ける。


「但し、僕のやり方は人族とは違うから、それについては町に戻っても他人には教えないことが条件だ」


特に異世界人であるヨシローには内緒。


「う、うん、分かった」


うむ、大変素直でよろしい。




 塔に戻ると、モリヒトが解体した魔魚や魔獣の肉や素材を分けていく。


魔石は塔でも使うので、そのまま保管。


肉は一部は冷温庫に入れて、後は干し肉や塩漬けにして保存食と売り物に。


最近では、ガビーが町に行ったときに覚えた腸詰やハムも作ってくれるので助かる。


「料理も上手くなったなあ」


ガビーはますますドワーフの鍛治師のイメージからは離れていくけど、本人が楽しそうだから良いか。


「はい!、アタト様のお蔭です」


ガビーが感謝の礼を取る。


おいおい、大袈裟だよ。


「アタト様に出会ったお蔭で、ドワーフの里では作れなかった物を作れたり、新しい物に触れることが出来ました。


ずっと中途半端な自分が嫌いでしたが、今はドワーフらしくないドワーフで良かったと思っています」


僕たちが出会ったのは確かに偶然だった。


だけど、ガビーは僕の側で働くために努力してきたじゃないか。


本当は鍛治師がやるようなことじゃないのに、家事や勉強もやっている。


「僕のお蔭じゃなくて、ガビー自身ががんばってるからだよ」


ガビー、半泣きで笑うなんて器用だな。




「無理しない程度にしろよ」


僕は、これからもがんばって欲しいと思う。


でもガビーは褒めるとがんばり過ぎるので、そこは要注意。


「はい!」


叱られて、すぐションボリしていた、出会った頃のガビーを思い出す。


女性だけど頼もしくなったなあ。


「あ、ガビーって女?」


今さら気付いたのか、トス。


「はい。 見た目はこんなですが、腕力や魔力は男性には敵わないのですよ」


ガビーはトスに、僕たちと出会った経緯を話し始めた。



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