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異世界を信じる者たちへ 〜何故かエルフになった僕〜  作者: さつき けい


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第四百七十五話・御守りの制作を委託する


「そうだ」


僕は部屋を片付けていたキランに話し掛ける。


「あの3人は教会の御守りを持ってるの?」


あの御守りは家族が購入して子供に与えるものだ。


ニーロ、ベラ、エミリーの3人に限らず、教会にいる子供たちは持っているのかな。


「確認してまいります」


新しく作るなら、ついでに魔力調整の魔道具にして持たせたい。


 部屋で溜まっていた手紙の整理をしていると、キランが戻って来た。


「3人とも持っていませんでした。 教会にいる子供たちは全員持っていないと言ってます」


へえ、そうなんだ。


『子供たち全員に与えるつもりですか?』


モリヒトが横目で睨む。


また仕事を増やすのか、と言いたげだ。


「いや、そこまでお人好しじゃないよ」


ホントだから、睨むのはやめなさい。




 僕は昼休憩にイブさんを呼んでもらう。


アダムが着いて来るのはいつものことだけど、最近は教会の調査も熱心にやってくれている。


ガビーもちょうど報告に来たので同席させた。


モリヒトがお茶とお菓子を出す。


「イブさん、子供たちの様子は如何ですか?」


「女の子たちは文字は読めたのですが、書く機会はなかったようです。 今はペン書きで一文字ずつ丁寧に書くように指導しています」


ニーロ少年は普通に出来たそうで、女の子たちに教えるほうに回っていた。


「墨を磨るほうは、サンテくんがニーロくんに付きっきりで教えてくれています」


あの2人はまるで兄弟のように仲が良いそうだ。


兄と弟が逆転していて、ちょっと面白い。


魔力の安定が必要なのはニーロくんだけなので、その時間、女の子たちは本館で料理やメイドの仕事を見せてもらっているという。




 僕はガビーを見る。


ガビーは頷き、御守りの見本を取り出した。


「これは?」


子供のいないイブさんは、今まで見たことはあるが興味はなかったみたいだ。


「教会の本部で取り扱っている御守りです。 中に、子供や親の名前を書いた紙が入っていて、迷子になった時などに身元が分かるようにしたものです」


僕が説明し、ガビーが御守りを分解する。


「名前以外を書いた紙が入ってますね」


「ええ。 これは、素材が魔獣の皮を使用しているため、魔力が幼い子供に影響しないようにしています」


魔獣素材はそのままでは魔素を取り込み、魔獣の特性魔法を発動してしまう。


それを抑えるために、紙に魔力を乗せた意味の無い文字を入れ、魔獣の魔力を吸い、霧散させて無力化する。




「子供が魔力解放した後は、意味のある文字を入れて魔道具として使うことも出来ます。 魔獣の皮なので丈夫で長持ちしますから」


普段は健康と書いた紙を入れ、病避けの御守りとして売れている。


御守り自体が小さいため、本人以外に魔力の影響はない。


「まあ、それはすごいですね!」


ガビーに許可をもらい、イブさんはマジマジと紙を広げて見ている。


「大人でも欲しくなります。 でも、小さいから子供用なんでしょうね。 あ、これ、お師匠様の字!」


さすがにバレるか。


でも、お師匠様はやめてください。


「うん。 これを作ったのはアタト商会だよ」


「さすがですね!」


褒められた。 いや、さすがってなに?。




「ガビー、材料はあった?」


「はい。 蛇革で試しに染色したものがいくつかと、鞣しただけの革もありますが。 腕輪型の御守りなら50個分ほどです」


十分だな。


「他の材料といっても紐とか紙ですから、どこでも調達可能です」


いやいや、ガビー。


ちゃんとインクとか、文字入れの手間賃も頭に入れとけ。


「あはは、それこそ、いつでも調達可能ですよー」


僕まで調達されるのか。


まあいい。


「イブさん。 色付きの革を子供たちに見せて希望の色を選ばせてください。 ガビーはそれであの子たち専用の御守りを作ってくれ」


「はい」と2人は頷き、色付きの革の選別を始めた。




「中に入れる紙はサンテにやらせる」


「え?」


イブさんが驚く。


「大丈夫でしょうか」


何言ってるの。 大丈夫に決まってるさ。


「身に付けるのはあの子たちだし、魔力解放されてるから問題ない」


サンテなら、意味の無い一文字くらいは魔力を乗せられるだろう。


名前だけなら各自が自分で書いて入れてもいい。


「もし、ちゃんと意味がある文字を希望したら。 そうだな。 何か仕事をさせて、その対価としてイブさんが書いてあげてください」


「それは素敵ですね。 子供たちもきっと喜びます」


イブさんは、嬉しそうに見本の蛇革を持ち、アダムと共に退室していく。




 僕はガビーに残ってもらった。


「ガビー。 あの子たちの御守りに細工してほしい」

 

ガビーは黙って頷いた。


僕はモリヒトにインクとペン、そして上質紙を出してもらう。


 少し考えた上で、ペンを取る。


トスの磨った墨汁を使い、文字を書いた。


『散』が2つ。


これはベラとエミリーに。


「蛇革を二重にして、結び紐の近くにこれを仕込め」


普通の御守りの紙は腕輪の中央に紙を入れる。


二重にするのは、入っている紙を知られないためと、誰にも取り出せないようにするためだ。


「その外側に何か目印の模様を付けて、そこに触れた時にだけ、発動するようにしたい」


「やってみます」


「頼む」




『吸収』はニーロ用だ。


2文字にすると、文字に乗る魔力も倍になる。


「ニーロの分も二重にして、これは真ん中でもいい」


常に魔力を吸収させる。


サンテの意味の無い紙があっても問題はない。


「もしも、他の文字を入れたいと言われたら別にもう一つ御守りを作る必要があるな」


そっちの効果も吸ってしまう。


その場合は『吸収』のほうに触った時だけ発動する仕掛けを付けるか。


「触ると切れるほうがいいのかな。 うーむ」


悩むな。


ウゴウゴやスルスルみたいに、自動で動く魔道具は難しい。


様々な魔方陣を組み込む必要が出てくる。


文字だけだと何文字も必要になるし。

 

「あのぉ、ニーロくんの希望を聞いてからでいいと思いまーす」


ガビーに言われてしまった。


「そうだな。 その時はまた相談してくれ」


「はい!」


 ベラは薄赤ピンク、エミリーは水色、ニーロは無難な茶色を選ぶ。


そして、ニーロはもう一つ、頼んできた。



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