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異世界を信じる者たちへ 〜何故かエルフになった僕〜  作者: さつき けい


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第四百五十七話・帰還の見送りと報告


 ついでだから、王都のお土産や、仕入れた品物も先に送ることにした。


次に帰れるのは、たぶん冬が終わってからになるだろうし。


お婆様には呆れられるかも知れないが、王都の魔道具店との契約書も渡しておきたい。


『契約書については、今夜にでも一言伝えておかれた方がよろしいかと』


そうだねー。


おそらく明日は教会からの契約書も来るからなあ。


「また仕事を増やしたんですね」って言われるのは確実である。




「それで、他に帰りたい人はいない?」


一応、訊いてみた。


教会関係のイブさん、ゼイフル司書、ティモシーさんは、王都に残留。


バムくんは「もう少し訓練したいです」ということで、領兵隊に残ることになった。


キランに関しては、誰かがこの館にいる間は辺境伯家の使用人としての責任がある。


「私もバムさんと一緒に鍛えてもらうつもりです」


ほお?、キランまで珍しくやる気じゃないか。


サンテが椅子から立ち上がった。


「バムさん、キランさん。 おれもやりたいです!」


何故か、皆が僕を見る。


え、僕にどうしろと?。


「別に構わないが」


許可すればいいんだよな。


「やったー。 アタトの早朝練習に参加させてもらえるんですね!」


げっ、そっちかい。




 たぶん、皆、サンテの件で不安なんだと思う。


市場で拐われた時は誰も気付けなかった。


モリヒトたちは僕の眷属精霊なので、命令しない限り、あまり他の者には注意を払わない。


しかしまたいつ、そんな事があるか分からない。


せめて出来ることを、という思いなのだろう。




「スーはどう?。 王都での用事は終わった?」


スーは前回売れた品物や、教会に納品した御守りの売れ行きを自分で確認したいと言って王都に来た。


ついでに王都の流行も見たいと言ってたが、たぶんこっちが本題だろう。


「かなりあちこち連れ回されたぜ」


ドンキは護衛として、ずっとスーに付き合っていたそうだ。


「悪かったわね」


そう言いながらも、スーは、


「でも助かったわ。 ありがとう」


と、ドンキに礼を言う。


「もう資金もないし、また辺境に帰って稼がなきゃ」


スーは帰っても良いなら帰ると言う。


「スーが帰るなら、オレも帰るよ。 今回はドワーフのお嬢様の護衛が仕事だからな」


なんだかスーが嬉し恥ずかしって顔なんだが、珍しいな。




「じゃあ、ハナとスーとドンキは今夜中に明日の出発の準備を。 他の者は、辺境地に届けたいものがあれば3人の誰かに言付けてくれ」


「はい」「承知しました」


皆が頷き、解散となる。


 それから僕はモリヒトの分身に頼んで、王都での取り引きの件を経理担当のドワーフのお婆様に伝えてもらった。


「分かりました」


と、声しか届かないが、だいぶ呆れてたな、アレは。




 翌日、朝早くから庭に声が響く。


兵舎泊まりのバムくんを除き、僕、サンテ、キランで体を解し、素振りなど基本的な動きを確認する。


「ふう、相変わらずキツイ」


サンテが音を上げる。


「訓練、サボってたのか?」


笑いながら訊くと、口を尖らせた。

 

「そんなことないけど。 ちょっと忙しくてー」


「そうですね、皆、忙しい。 その中でも一番忙しいのがアタト様でしょうね」


キランが知ったような口をく。




 僕は単に、習慣的に早く目が覚めてしまったり、体を動かさないと気持ち悪くなったりする。


「短い時間でもやれることをやってるだけだ」


朝、出来ない時は寝る前に軽く体を解す運動くらいはやることにしていた。


「要は続けることだと思うよ。 休むとその分、取り戻すのに何日もかかるというし」


咄嗟に、無意識に体が動く。


その動きが間違っていたら意味がない。


きちんと正確な動きを、より良い動きを目指して訓練している。


「そっか。 アタトの動きには意味があったのか。 ただ飛び回ってるのかと思ってた」


あー、僕は身の軽さを利用しての動きが多いからな。


でも、ただ飛んだり跳ねたりしてるわけじゃない。


ちゃんとした着地や飛ぶ姿勢を安定させるためにやってるんだよ。




 朝食が終わり庭へ出ると、何故かまた大量の荷物が置いてある。


「キラン、コレは何かな?」


辺境伯王都邸の家令さんが前に出て来る。


「アタト様、モリヒト様、申し訳ありません。 辺境伯様から、王都からの物資の輸送をお願いしたいと」


聞ぃーてなーい。


僕が難色を示すと家令さんは慌てて、


「勿論、前回同様、送料もお支払いいたします」


と、荷物の送料に上乗せした代金を渡してきた。


「今回は緊急でしたので、割り増し料金とさせて頂きました」


ブツブツ言いながらも世話にはなっているし、あまり文句は言えない。


「はあ、分かりました。 これだけですね?」


「はい!。 どうか、よろしくお願いします」


というわけだ、モリヒト。


『分かりました。 少しお時間が掛かりますので、私が戻るまで、アタト様は決して館から出ないようにしてください』


「分かった」




 まずはモリヒトが一度辺境伯の領地本邸に飛び、荷物置き場を確認。


戻って来て、先に荷物を運んでから、人間たちの移動になる。


皆でスーたちの見送りに庭に出た。


「お婆様によろしく言ってくれ」


契約書一式をハナに預ける


「はい、承知いたしました」


ハナは可愛いなあ。


撫でたくなるのをグッと我慢する。


ひと通り別れを惜しんだ後、モリヒトと共に消えた。




 荷物の配送に時間がかかったため、もう昼近い時間になっている。


玄関が騒がしくなり、使用人が駆けて来た。


「教会から使者の方がいらしています」


ああ、今日行くことになってたな。


「すみません、もう少し支度に時間がかかります」


モリヒトがいない時に勝手に動くと怒られるんだよ。


使用人は使者に伝えに言ったが揉めているようだ。


「困るんです!。 たくさんの方々がアタト様をお待ちでして。 私はなんとしてもアタト様を連れて来いと言われてるんです」


なんとまあ物騒な話だ。


「イブさん、ゼイフル司書様。 ティモシーさんと一緒に先に教会に行っててもらえませんか」


「分かりました」


僕はアダムを呼び、コソッと耳打ちする。


「何があってもイブさんたちを守れ」


『承知』


嫌な予感がした。



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