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異世界を信じる者たちへ 〜何故かエルフになった僕〜  作者: さつき けい


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第四百二十九話・大国の使者の焦り


 あざとらしく首を傾げた僕を、ヤマ神官は胡散臭そうに見た。


「まったく。 アタト様には誤魔化しは効かないとみえる」


部外者を連れて来たくせによく言うよ。


「様付けは止めてね。 次期神官長様」


「そうでした、気を付けましょう。 では、アタトくんも私が神官長候補だというのは、あまり広めないでもらえるかな」


「はーい」


僕の態度に、ヤマ神官は諦めたようにため息を吐いた。


「まだそんな歳じゃねえぞ」とブツクサ言う。


「しかし、アタトくんが私を持ち上げると、本当に神官長になれそうで怖いな」


え、周知の事実だと思うけど。



 

 そんなことより。


「で、他国のご婦人がこの国の教会で何をなさっているんですか?」


僕は改めて女性に訊ねる。


教会の規定がどうなっているのかは分からないが、他国の者でも受け入れてはいるだろう。


しかし、彼女は神職者ではない。


「わたくしはヤマ神官の奏でる音に興味を持ちまして、弟子になりたいとお願いいたしましたの」


実際、この方の楽器の腕は良いらしい。


へえ。


そうでなきゃ、他国の高位神官の傍に付けるはずないか。


「でもヤマ神官は単独で演奏されることってあるんですか?」


「あー、まあ軽い練習くらいだねえ」


「ですよね。 ヤマ神官は名伴奏者ですもんね」


主役がいてこそ真価が発揮されるのだ。


「え」


女性の顔色が変わる。


ヤマ神官が演奏者であることは誰からか聞いたのだろうが、主に伴奏だとは知らなかったらしい。


この女性が嘘を吐いているのは明白だった。




「わたくしが何をしたと仰いますの?」


軽く睨まれる。


「名前さえ名乗らないのだから、何をするか分からないと疑われて当然じゃないかな」


未熟者だから名乗らない?。


師匠が弟子に「名乗るな」と強要するなら分かるけど、本人が名乗らないのは失礼に当たると思うよ。


「あー、その前に」


ややこしい話になりそうなので、顔合わせの済んだイブさんとアダムには退室をお願いした。


「分かりました。 では、ヤマ神官様、後日よろしくお願いいたします」


「はい、承知しましたよ」


ヤマ神官は頷き、イブさんは素直に下がる。


 ゼイフル司書には残ってもらい、モリヒトには盗聴避けの結界を張らせた。


さて、この人はどっちだろうか。


訊いてみよう、そのほうが早い。


「あなたの狙いは『異世界人』ですか?」


大国ズラシアスは『異世界の記憶を持つ者』を優遇することで知られている。


噂を聞きつけ、他国でも勧誘に行くらしいな。


先日も王女が来て一悶着あったばかりだ。


「さあ?」


女性は緊張を悟られないようにカップに手を伸ばす。




「それとも知り合いの『遺児』のほうかな」


ガチャンと音がする。


なるほど、サンテか。


気付いたゼイフル司書の表情が硬くなった。


「わ、わたくしには何のことだか」


手が震えているのに否定しますか。


かなり狼狽えているのは、おそらく僕が知っているとは思わなかったんだろうな。




「ヤマ神官。 先日、大国の駐在大使が交代されたそうですね」


僕は、彼女の動揺を見なかった振りをしてヤマ神官と話す。


「よく知ってるな、アタトくん。 ズラシアス国の王族が親善大使として我が国にいらして、その時に駐在大使の文官や護衛も全て交代されていった」


任期切れなのか、何か不手際があったのかは分からない。


この国には大使館という建物はなく、他国要人は高級な宿に長期滞在している。


それって警備とか秘密漏洩とか、色々穴がありそうだよな。


 女性がソワソワとし始める。


ヤマ神官は、ある程度の事情は承知しているのだろう。


そして、その上で彼女の好きにさせている。


弱みでも握られてるのか、はたまた金……ではないから、誰かに頼まれたかな。




「実はある方に教えて頂きまして」


彼女の様子を伺う。


「どうやら大国で処刑された罪人の妻子がこの国に逃げて来ていて、それを探している者が新しく来た職員の中にいるそうですよ」


「罪人ではありませんわ!」


女性は勢いよく立ち上がる。


ふうん。


僕は女性を見上げた。


「調べたら分かるでしょう?。 その妻子、親子は亡くなっています」


駐在大使の記録に残っていると聞いた。


そういうことにして、平民に紛れて暮らしていたのである。




 そして、先ほどの質問に戻るわけだ。


「で、他国のご婦人が、この国の教会で何をしようとされているんですか?」


今まではおとなしくしていた女性は、もう表情を繕うのは止めたようだ。


スッと綺麗な仕草で椅子に座り直す。


「そこまでご存知なら、お話しても構いませんわ」


おっと、どこからか扇子を取り出したぞ。


これは高級そうな品だ。


「わたくしはさる高貴なお方の世話係としてこの国に参りました」


名前はシャルロッテさん。 まあロッテ女史と呼ぶことにする。




「こちらで王都の教会本部から引き取った子供を養育しているそうですね」


教会から双子を連れ出したのは辺境伯夫人だから、そう見えても不思議ではない。


実際には僕が辺境地に連れて行くために、一時的に預かってもらっていた。


「少し前になりますが、辺境伯夫人が教会から子供を連れ帰ったことはありますが」


と、説明する。


「その子供を見せて頂きたいのです」


「見せる?」


「ええ。 金髪に青い目をしていたはずです」


あの時は確か、サンテたちは髪の色を誤魔化していたから金髪ではなかったはずだ。


「いえ。 あの子たちは金髪ではなかったはずですよ」


「ねっ」とヤマ神官に同意を求める。


「うむ、確かにあの時、辺境伯夫人に引き渡した子供は金髪ではなかった。 目の色までは覚えていないが、とにかく薄汚い子供が何人かいた」


そうそう、双子だけじゃなかったな。


どうやら他の子は調査済みらしい。




「目の色や髪の色などは魔道具で変えることが出来ますわ。 とにかく、連れて来てくださいませ」


「辺境地にいるのに、ですか?」


僕はコテンと首を傾げる。


「呼びつければよろしいでしょ。 わたくし、この国にはしばらく滞在いたします」


言うだけ言うとロッテ女史は立ち上がる。


「ヤマ神官様、お先に失礼しますわ」


と、勝手に出て行った。



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