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異世界を信じる者たちへ 〜何故かエルフになった僕〜  作者: さつき けい


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第四百二十六話・再びの王都に到着


 午前中には王都に入った。


以前と同じ辺境伯推薦の食堂で、昼食を取りながら今後の打ち合わせをする。


「おれたちはあっちだな」


ドンキとスーは王都のドワーフ地下街へ行くため、ここからは別行動だ。


工房街に行けば会えるので、定期的に連絡を取り合う約束をして別れた。


 残りの者たちは今回も辺境伯の王都邸でお世話になる。


「ようこそ、アタト様。 皆様もお疲れ様でございました」


辺境伯家の使用人たちは基本的に武官出身者が多く体が大きい。


壮年に差し掛かる家令も例外なく元騎士で、ガッシリとした体格をしている。


サンテとイブさんはビビっているし、アダムが何故か威嚇してるのが面白い。




 僕は感謝の礼を取る。


「申し訳ありません、またお世話になります。 よろしくお願いいたします」


今回は辺境伯が全く関与していないのにもかかわらず、利用させてもらえることになっていた。


「とんでもございません。 アタト様御一行のお世話をさせて頂けるのは名誉なことでございます」


なんか大袈裟過ぎて、こっちが気恥ずかしくなる。


 王都の高級宿に泊まってみたいという気持ちもなくはないけど、周りのことを考えると非常に面倒臭いんだよな。


モリヒトやティモシーさんに声を掛けてくる者が絶対にいるし、それが高位貴族とかだと本当に邪魔臭い。


だから、辺境伯という肩書きで守られるのはありがたいことなのだ。




 この館には数名が泊まれる別棟があり、そちらへ案内された。


食堂付き厨房や風呂場もあり、本館に出入りしなくても過ごすことが出来るようになっている。


「オラ、こんなすごいとこ無理だあ」


バムくんは建物に入ること自体を拒否する。


「アタトくんがこっちにいる間、訓練を受けさせてもらえって爺ちゃんが」


ここには兵士たちのための訓練場がある。


元辺境伯領兵だったアタト食堂の旦那から、一時的に領兵隊に入れるように紹介状を書いてもらって来たそうだ。


お蔭で訓練場内にある領兵宿舎に泊めてもらえることになった。


バムくんは用意周到だな。




 別棟に入ると、キランとサンテは入り口に近い使用人用の部屋を選ぶ。


客室はとりあえずイブさんとアダム、司書さんとティモシーさん、僕とモリヒトの3部屋を使うことにした。


「私たちは教会に到着の挨拶に参ります」


ティモシーさんとゼイフル司書は一旦、教会に向かうそうだ。


王都に到着したことをヤマ神官に伝えて、僕が教会に伺う正式な日程を決めてもらう必要がある。


僕たちは辺境地から片道約20日かかるところを5日くらいで来たからね。


向こうにも都合というものがあるだろうし。


決まったら、辺境伯王都邸に知らせてくれるようにお願いする。


イブさんについては呼ばれて来たわけではないので、まだ秘密にしておく。


ただ、ヤマ神官にはこっそり伝えてもらえるようにお願いした。




「今日中にはこちらに戻るつもりでいますが」


ティモシーさんは難しい表情をしていた。


「分かりました。 予定より遅い場合は迎えの馬車を出しますので」


僕は、教会から離してもらえない可能性を考え、キランを迎えに行かせることを約束する。


白馬の馬車は王都でも珍しい上に辺境伯の紋章付き。


辺境伯家から迎えが来たとなれば、さすがに解放せざるを得ないだろう。


「頼む」と、ティモシーさんも頷き、きちんとした騎士服に着替えると司書さんと共に教会本部に向かった。




 キランはサンテを連れて、本館の厨房へ挨拶に向かう。


「お世話になります」「よ、よろしくお願いします」


「お話は伺っております。 不足の物がございましたら何なりと仰ってください」


「では」


慣れているキランは食材や食器の調達の交渉を始める。


ここに来るのは二度目とはいえ、サンテは少し緊張しているな。


その様子を少し離れて見ている僕は、かなりの心配性だと自分でも思う。




 サンテは、旅の間、日毎に落ち着かない様子を見せていた。


『おそらく、双子の妹であるハナと離れているためでしょう』


モリヒトの言葉に僕も頷く。


辺境の町でも別々に行動することはあったが、狭い町の中にいるのは、お互いに分かっていた。


だが今回は、距離も離れているし、しばらくは会えない。


かなり不安だと思う。


『サンテは少し妹離れしたほうがよろしいかと』


「分かってるよ」


どんなに仲の良い双子だからといっても、いつまでも2人一緒にいられるわけじゃない。


だけど。


「まあ、慌てることはないさ」


今は少しだけ練習。


そういう時期なんじゃないのかな。




 夕食の時間が過ぎても司書さんとティモシーさんは帰って来なかった。


まあ、予想はしてたよ。


「キラン、馬車を出して」


「はいっ」


僕は家令に交渉する。


「領兵を、ですか?」


「ええ。 申し訳ないのですが、教会に行った連れが戻らないので。 もしかしたら、途中で何かあったのかも知れません」


不安そうな顔をしてみせる。


「そうですね、もう暗いですし。 分かりました」


迫力ある白馬の馬車に辺境伯家の紋章。


王都でも珍しく領兵隊を抱える辺境伯家から数名の兵士を連れて馬車が出て行く。


モリヒトが姿を消してついて行った。


「あのぉ、少し大袈裟なんじゃ」


イブさんは優しいね。


「王都では少し派手なほうが好まれるみたいですよ」


知らんけど。




 長く感じた時間が過ぎ、一行は無事に戻って来た。


モリヒトも戻って来て報告する。


『かなり引き留められてましたよ』


だろうね。


「お帰りなさい」


僕は玄関まで迎えに出る。


「ああ、アタトくん。 迎えをありがとう、助かったよ」


「いえいえ。 辺境伯家の皆さんが気を使ってくださったので」


ゼイフル司書もティモシーさんも疲れた顔をしている。


「どうぞ、食事の用意が出来てますよ」


サンテが駆け寄る。


「ありがとう。 向こうでも出してくれたんだが、食べた気がしなくてね」


ティモシーさんは苦笑し、馬をバムくんに預ける。


「お話は明日にでもゆっくり伺いますので、今夜はゆっくりお休みください」


「そうさせてもらうよ」


僕たちは別棟に向かう。


さて、明日からは王都生活の始まりだ。




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