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異世界を信じる者たちへ 〜何故かエルフになった僕〜  作者: さつき けい


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第四百十一話・商会員の成長と精霊


 ようやく辺境の町に戻って来た。


なんとなくボーッとしてて、領主館に帰還の報告に立ち寄るつもりだったのに忘れて商会本部到着。


とりあえず下りた。


「すまん、キラン。 領主館に行って来てくれる?」


「はい。 戻ったことの報告ですね。 明日、改めてご挨拶に伺うとお伝えすればよろしいですか」


うん、本当に使用人としては優秀だな。


「それで頼む」


「承知いたしました」


馬車が門を出ていくのを見送る。


「なんで起こさなかった」


モリヒトに愚痴る。


『お疲れのようでしたので。 キランにも領主館に寄らずに森に向かうように伝えました』


まあ確かに無理してやるほどのことではないからいいか。




「お帰りなさい!、アタト様」


ガビー、お前はちゃんと自分の工房の管理してんのか?。


「帰りました。 皆、変わりないですか?」


「はい!。 今日は工房の納品に来ました、偶然ですね」


ほんとかな。


まあ、喜んでるしいいか。


 玄関から中に入ると頭を下げて迎えたのは、執事服のサンテとジョンくんだった。


「ご無事で何よりです」


「ああ、報告は後で聞きます。 留守番ご苦労様でした」


地下の自分の部屋へ向かう。


「どうしてジョンがいるの?」


歩きながら小声で訊く。


「サンテくん、ひとりでは不安だったようです。 私が元貴族家で働いていたのを思い出して頼って来たんですよ」


僕は一応、バムくんに本部内で何かあればワルワさんに相談するように伝えておいた。


ジョン君は普段ボーッとして見えるが仕事は出来るからな。


「ありがとう、助かった」


「う、いや、ほら、と、友達、だから」


ポンコツに戻るのが早いな、おい。


夕食に誘ったが「ワルワさんが待ってるから」と帰って行った。




 到着したのが午後の中途半端な時間だったので、久しぶりにゆっくりと湯船に浸かる。


地下に作られた大理石の浴室は1人用にしては広く、淡い照明が落ち着く。


『しっかり清掃はしていたようですね』


モリヒトが家令用の服になって、浴室内に待機している。


「掃除、頼んだの?」


地下の自室は商会の者でも、よほどのことがなければ、あまり出入りしないようにしていた。


『サンテは魔力を使えば使うほど伸びますので』


無属性魔法だけでなく、神官志望のサンテには光魔法の訓練もしている。


清潔や浄化等、自分の属性ではない魔法を使うと、かなり魔力を消費するので魔力を減らすには丁度いい。


この広い浴室の清掃が出来ているということは、サンテの魔力量の半端なさが分かる。


 僕も、散々モリヒトに無茶振りされて修行させられたことを思い出す。


「サンテにも眷属精霊がいればいいのに」


そうすれば、日頃からちゃんとした魔力の制御が出来るはずだ。




 しかし、精霊はエルフにしか興味を示さないらしいからなあ。


『眷属精霊ですか』


モリヒトが考え込む。


「何か心当たりでも?」


『いえ。 精霊にも色々いるので』


まあ、そうだろうが。


「精霊に好かれる条件はあるの?」


『基本的には、エルフの魔力と精霊の魔力の相性が良いからですね』


お互いの魔力を使うことがあるので、反発するようでは眷属なんて無理だ。




 僕は湯当たりしそうになり、風呂から上がる。


着替えて、お茶の時間にしてもらうと、ヨシローの店のケーキが出て来た。


もう買って来たの?。 早いね。


「魔力か。 どんな魔力ならいいの?」


『例えばエルフと人間を比べますと、明らかに体内の魔力量が違います』


まあ、そうだな。


魔法一発で魔力使い切るのと、何回も使えるのは全く違う。


精霊側にしても、より優秀な主が欲しいということか。


『それに、エルフは神を深く信仰していますから』


優秀な種族だから眷属に精霊を付けてもらえるんだーってヤツな。


深い信仰は雑念がなく、純粋な魔力になるそうだ。


自分たちは神に選ばれた者であると信じ、さらに深く神に感謝の祈りを捧げるエルフ。


一途で偏愛的なところが神様にすれば可愛いのかもな。


だからつけ上がって、高飛車で自尊心が高いんだよ。




 それでも自分の精霊を嫌い、違う精霊と取り替えようとする者はたまにいる。


より強い精霊が欲しいと必死に祈るのだとか。


なんだ、それ。


『眷属の交代は稀にありますよ。 お互いの合意があれば、ですが』


以前聞いたことがある。


強い精霊欲しさに、自分の眷属精霊を滅したエルフがいたという。


傲慢極まる話だ。


 エルフの村でも眷属精霊には個体差というのはあった。


それぞれの性格にあった精霊が付いているのだと思っていたけど、産まれたばかりの赤子の性格なんて分からないから不思議だった。


僕の場合は好き嫌い以前に、精霊王からの押し付けだがな。




 精霊は魔力の塊が意思を持っているようなモノだ。


制約のある体が無いから、世界の常識や他種族のことなどお構いなし。


我が儘でイタズラ好きだと言われるのは、それが悪いことだと知らないからだ。


ただ皆が騒ぐのが面白いだけ。


飽きたらサッサといなくなるので、まあ、自然災害だと思うしかない。




 そんな精霊を制御するために、精霊王は主を付けて眷属精霊にすることにした。


眷属は主の命令には逆らえないから、おとなしくなる、というわけだ。


自然から発生する魔力が元になってる精霊だから自由奔放なのは仕方ないけどな。


それを制御するために選ばれたエルフ族があれじゃなあ。


『昔は良かったのでしょうが、今は不遜なエルフも増えましたからね』


そーだねー。




「じゃあさ。 信仰心が厚く、純真で、魔力が高いなら、人族でも眷属精霊が得られる?」


モリヒトは考え込む。


『……私は出来ると思います』


ほお?。


『知り合いの精霊にも訊ねてみましょう』


おー、よろしく頼む。




 さて、夕飯の時間まで手紙の整理でもするか。


ヤマ神官からは教会の神官試験の問い合わせが来た。


湖の町に女性神官が誕生したせいで、今まで諦めていた神職希望者が再び熱心に修行をしているそうだ。


女性神官は彼らの指導に忙しいと手紙で愚痴ってきた。


商会にも固形墨や硯の注文がきている。


ガビーとトスが担当だが、魔道具の店との連携で教会に納品していた。



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