表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界を信じる者たちへ 〜何故かエルフになった僕〜  作者: さつき けい


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

393/667

第三百九十三話・謎の客人と救出


 昼間エンディたちが通ったために草は倒されている。


それを辿って行けば良い。


ふと訊ねる。


「鉱床の入り口には目印を付けたの?」


ここから近いのか?。


『坑道を掘るというので入り口だけは作りましたよ』


下草を踏みながら進むとやがて松明の明かりが見えた。


「あれかー」


岩が剥き出しになった山肌に、坑道の入り口には見えない立派な石の扉がある。




『はい。 埋蔵の鉱石の見本をいくつか渡してございます』


かなり良質の鉱石だったようで、頼まれて盗掘避けの頑丈な扉にしたそうだ。


だが、その横に見張り用の粗末なテント。


僕は「見張り小屋くらい作ってあげれば良かったのに」と、モリヒトを見上げる。


『鉱床を見つけてもらった上に、立派な扉を作ってくれたからと、それ以上はエンディ様が遠慮されました』


余計な貸し借りを嫌うエンディらしいな。




 僕たちは、そこには近寄らずに道を逸れる。


坑道口のある場所から、山肌を辿ると崖に出た。


下を覗き込むと、チラチラと明かりが見える。


『あそこです』


崖下にある松明の明かりで洞窟の入り口が見えた。


そして、見張りらしき男たちの姿がある。


「探知した人間は、あの中にいるんだな?」


『はい』


モリヒトが言うなら間違いない。


では、どうやって救出するか。


ティモシーさんが今にも突っ込んで行きそうなんだが。


待てって。




「まずは外側から処理しましょうか」


「外側?」


うん、説明しよう。


崖の下、洞窟から離れた場所に人影が二つ潜んでいる。


『気配を消すための魔道具を身に付けていると思われます』


それでも精霊にはお見通しである。


「あれを先に倒すのか?」


違うからな、ロタ氏兄。


どうもドワーフは好戦的でいかん。


「まずは敵か味方かを調べないと」


ティモシーさんが頷く。


「私が行こう」


「分かりました。 補助しますので」


モリヒトに頼んで結界に放り込み、一瞬で移動させる。


夜目が効かない人族には無理な場所だからな。




 ティモシーさんが崖下に出現。


話し声は聞こえないが接触したのは分かる。


そして、ティモシーさんが客を連れて戻って来た。


「話は着いたよ、アタトくん」


人型に戻ったモリヒトにビビリながらやって来たのは、見慣れない兵装の2人の男女である。


「ようこそ、大国からのお客さん」


女性と老人だった。


師弟か、親子かな。


彼らはエルフの子供である僕に驚き、ドワーフの兄弟に驚く。


キョロキョロと忙しそうだけど、早く本題に入りたい。


「僕はエルフのアタト」


共闘するためには、まずは自己紹介から。


「あそこに捕まっている人たちを助けに来ました。 力を貸して頂けませんか?」


「あ、ああ。 我々も目的は同じだ。 だが、そなたらを信用したわけではないぞ」


名乗る気はないようだ。


モリヒトは不機嫌だが、まあいい。





 僕たちを味方に付けたほうが良いと思けど、口にはしない。


向こうには向こうの事情があるんだろう。


「では、こちらの作戦ですが」


時間がないので、ぶっちゃけ突っ込むだけだ。


「僕とモリヒトで周囲に結界を張り、誰も出られないようにします。 ドワーフ兄弟は正面から見張りを倒してください。 その間にティモシーさんとあなた方は洞窟内に侵入して、捕らえられた人々の救助を」


「分かった」


「では行ってくる」


ドワーフとイケメン騎士は頷く。


だが、子供の僕が指示しているのが不満なのか、大国の客人は苦い顔である。


「雑な作戦ではないか?」


爺さん、時間が惜しいんだよ。


「気に入らないなら、ここにいて。 邪魔しないでね」


僕はそう言って、2人に背を向けた。




「モリヒト、広範囲結界だ。 僕は防御を全員に掛ける」


『承知いたしました、アタト様』


モリヒトが崖下の広範囲に結界を張る。


僕はドワーフ2人とティモシーさんの体に動きを阻害しない程度の防御魔法を掛けていく。


「わ、我々にもお願いします!」


女性の方が素直だな。


「了解です。 下に移動させますから、すぐ動けるよう準備を」


客人2人が頷いた。


最初から黙って従っとけよ、とは思ったが、胡散臭いのはお互い様か。




 モリヒトがまずドワーフ兄弟を下へ飛ばす。


騒ぎが始まり、洞窟の中からも人が出て来る。


「今だ」


騎士と客人を洞窟の近くまで一瞬で飛ばした。


3人が内部に侵入して行くのが見える。


「モリヒト、倒した賊は纏めておいて」


最終的に荷馬車に積み込めるようにしてほしい。


『はい、承知いたしました』


僕はモリヒトに頷き、自分の気配を出来るだけ薄くしてティモシーさんたちの後を追う。




 洞窟自体はそんなに深くはない。


しかし、使い込まれているというか、昨日今日出来たものではないようだ。


「いったいいつからこんな事をしてたんだ」


思わず愚痴が溢れた。


 奥から剣戟が聞こえ始める。


敵と接触したのだろう。


僕は奥に背を向け、出入り口に向かって立つ。


外から戻って来る賊を迎え撃つために。


 だが、やって来たのはロタ氏だった。


「外は全員捕らえたぞ」


2人で頷き合い、奥へと向かう。




 おそらく古い坑道なのだろう。


しっかりした造りになっている洞窟内を進む。


高さはあまりないが、幅は人が2人でも十分にある。


奥が静かになったのは、制圧が終わったのか。


前方に広い場所が見えた。


先にロタ氏が中に入る。


「お疲れ様です」


「ああ」


偉そうな爺さんは構えていた剣を納めた。


 そこからさらに奥に、捕まっている者が閉じ込められていた部屋があり、ティモシーさんと女性の客人はそちらにいるようだ。


「ロタさん、こいつらを運び出しましょう」


「そうだな。 もう危険はないようだし」


ロタ氏は足元に倒れている賊を引きずって外に運び出す。


外にはロタ氏兄が縄で罪人たちを縛り上げている。


僕は結界に放り込んで外に飛ばす。


意外と自分が入っていない結界を空間移動させるのは難しい。


でも短距離なら何とか出来るようになったんだぜ。




 奥の部屋から、上着で顔や上半身をすっぽり覆った女性を連れて客人が出て来た。


「大変、世話になった。 我々はこれで失礼する」


2人の客人は女性を庇いながら洞窟を出て行く。


勝手にしろ。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ