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異世界を信じる者たちへ 〜何故かエルフになった僕〜  作者: さつき けい


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第三百八十五話・異世界の違和感を知る


 シャランと魔宝石の耳飾りが揺れる。


僕の姿がエルフに戻り、同時にモリヒトも光の玉になる。


「へっ?」


メリーは目を見開いたまま固まった。


「僕、本当はエルフだよ」


モリヒトはエルフ型に戻り、


「私はアタト様の眷属精霊です」


と、自己紹介をした。


メリー、顔が真っ赤になってるけど大丈夫か?。


「僕たちには何も感じなかったかい?」


怖がらせないよう、ニコリと笑って訊ねた。


アワアワしてるな。 


エルフも精霊も初めてか。


「あ、アタトにはキレイな魔力は感じたけど。 その、隣のモリヒトさんなんかはもう、まともに見れないくらい眩しく感じて」


そっか、メリーは魔力で判断してるんだな。


 僕は一応、この世界の体と魔力を持っている。


モリヒトの姿は擬態だが、この世界に存在する精霊だ。


普段は魔力を抑えているが、それでも漏れているのだろう。


メリーにとっては同じ世界の魔力だから馴染み易い。


だが『異世界』の体で魔力無しのヨシローは、訳の分からない存在として、本能で脅威と感じるわけだ。


「うっ、うん。 そうかも」


メリーはコクコクと何度も頷いた。




 陽が傾き、暗くなり始めた頃に外門が見えてきた。


この街は周囲を石塀で囲み、出入り出来る門は2つ。


すでに閉まる時間のため、門には出入りする人影は少ない。


「遅くなってすみません」


門番に声を掛けて、閉じかけた門に滑り込む。


本来、旅人を罪人かどうかを判別するため兵士による簡単な審査がある。


だが。僕は大旦那からもらった通行証を出し、それを門番に見せた。


「エルフ殿、ようこそ!」


「どうもー」


とっくに顔は知られてるがな。




 街の中心街にある領主館へ向かう。


白馬の馬車はかなり目立つようだ。


振り返る人たちが多い。


領主館の門を潜り、正面入り口に到着すると中年の家令が出迎えてくれる。


「ようこそいらっしゃいました!」


なんか、すごい笑顔なんだが。


「お手紙を頂いてから、いつアタト様がいらっしゃるのかと、お嬢様が楽しみにされておりまして」


あれ?、ここの家令、こんなにおしゃべりで明るい人だったかな。


「 おや、失礼いたしました。 お連れ様がいらっしゃるとはー」


ニコニコしていた家令がメリーを見て一瞬、戸惑った顔になる。




「クロレンシア様の弟子のひとりで、見習い騎士のメリーさんです。 今回、辺境伯家から護衛として同行して頂くことになりまして」


僕が紹介している間に、モリヒトがメリーを馬車から降ろす。


「さようでございましたか。 よろしくお願いいたします、メリー様」


「ヒャッ。 あたしはただの護衛ですから」


「様なんて呼ばれたの初めて」と、呟くのが聞こえた。


 館の中に案内されながら、メリーはすごく緊張してオドオドしている


まあ、あまり辺境伯領地から出たことがなさそうだしな。


「後日、クロレンシア様もこちらにいらっしゃるのですが」


メリーは急にこちらに来ることになったため、今、身に付けているものしか持っていない。


「申し訳ありませんが、使用人の予備で結構ですのでお借りできませんか」


「勿論、すぐにご用意させて頂きます」


家令は微笑んで請け負ってくれた。




 僕たちは来客用の部屋に通される。


「お久しぶりでございます、アタト様」


すぐに、お嬢様がしずしずと入って来た。


その後ろには眼鏡の青年がついて来る。


元領兵隊副隊長の青年だ。


お嬢様の手紙によると領兵隊は縮小され、副隊長だった眼鏡の青年は領主家の護衛兼文官になったらしい。


僕は丁寧に礼を取る。


「いつもご丁寧に報告書を送って頂き、ありがとうございます。 その度に、お嬢様の実直な人柄に大変感服しております」


「まあ、アタト様は口がお上手になりましたのね」


座るように勧められ、和かに向かい合って座る。


子供同士の会話じゃないが、お嬢様は次期領主として高位貴族になるための勉強中。


僕も協力は惜しまないよ。




 メリーは護衛のため、モリヒトと共に僕の椅子の後ろに立つ。


「せっかくアタト様がいらしたというのに、大旦那様はお出掛けですの」


近隣の町へ視察に行ったそうだ。


今日はもう遅いということで、夕食は各自の部屋へ運んでもらえることになった。


「では、明日、もう一度正式にご挨拶させていただきます」


「承知いたしました。 どうか、ごゆっくりとお休みくださいませ」


僕は立ち上がり、軽く挨拶をして部屋を辞した。




 メリーは護衛だが部屋はちゃんと別々である。


「じゃ、僕の部屋は隣だから。 何かあったら使用人さんたちに声を掛けてね」


「は、はい」


同行者といっても知り合ったばかりの僕とモリヒトしかいない。


12歳の女の子には少し心細い状況だろう。


恨むなら、急に決めたクロレンシア嬢にしてくれ。


僕は部屋に入って早々に着替えて寝る。


ウゴウゴが僕の服から出て、イソイソと鞄に収まった。


ずいぶん気に入ったんだな。




 翌朝、いつも通りに薄暗いうちから庭に出る。


体を解しているとメリーがやって来た。


「アタトさま?、は早いんですね」


なんだよ、そのぎこちない話し方は。


「止めなよ、そんな話し方。 僕はエルフでも平民だし、メリーより年下だ。 前のままでいい」


「あ、うん、ごめん」


謝らなくてもいいのに。


 そんなことより、鍛錬はやるの?、やらないの?。


「一緒にやってもいい?」


「もちろん。 そこのお嬢様もご一緒に如何ですか?」


茂みからガサゴソ音を立てて、剣術大好きお嬢様が出て来た。


「えへへ。 見つかっちゃった」


はあ。 アンタ、前もそうやって盗み見てたのを見つかってましたよね。


隠れる必要あります?。


「だって。 そちらの方はクロレンシア様のお弟子さんなんでしょう?」


気になって見に来たらしい。


「お嬢様もクロレンシア様に師事されていましたよね。 でしたら、お二人は姉弟子、妹弟子ということでは?」


年齢も13歳のお嬢様と12歳のメリー。


同じ師匠を持つ同世代ということになる。


「では、私が姉弟子ですわね?。 よろしく、メリーさん」


「メ、メリーとお呼びください、姉弟子のお嬢様」


なんか変な挨拶してるが、いいのか、それで。



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