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異世界を信じる者たちへ 〜何故かエルフになった僕〜  作者: さつき けい


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第三百十三話・残りの返事と想定内


 慌ただしくドワーフたちが去った後、僕はまた手紙の処理に戻る。


ヤマ神官からは女性神官についての質問が山ほど来ていた。


湖の町の教会から本部へ知らせが飛んだのだろう。


でも、よく僕が関わってるのが分かったなー。


精霊と聞いてモリヒトを思い出したのかも。


すまん、色々と迷惑を掛ける。




「女性神官の修行用ってことにしちゃったし」


教会の修行は厳しいことで有名で、年中人手不足。


しかも神官はほとんどが男性である。


女性にはなかなか厳しい世界だ。


 だけど、教会に勤める女性神職者から神官に登用出来る人材がいるなら後押しになるんじゃないか。


彼女たちが墨を磨ることで少しでも精神の安定や心身の浄化に役立ち、修行の一つになるならいいと思う。


但し、敬虔な女性神職者に限る。


書道を広めたい訳じゃないので、精霊様も出来るだけ狭い範囲での運用を望んでいると書いた。


「これを教会に届けてくれ」


教会間は定期的に書簡を送り合っているはず。


忘れた頃に王都の教会に届く予定だ。


『承知いたしました』


ヤマ神官宛の封筒を預ける。




 次は、クロレンシア嬢の公爵家なんだが。


なんで僕宛に手紙が来るの?。


苦情か嫌味か。


封を開いてみると、当主からではなくクロレンシア嬢の兄上からだった。


「お礼状?。 なんかしたっけ……」


あの家に対しては怒られるようなことしかやった覚えがない。


ふむふむ。


「クロレンシア嬢の落ち着き先が決まったことによる礼か。 でも公爵は怒ってるだろ?」


あの父親は子離れ出来てない感じだった。


手元に置きたいだけで王子との婚姻を蹴ったほどの親馬鹿だし。




 しかし、嫡男はまともだな。


兄としては少しでも辺境伯領に行った妹の力になりたいってところだろう。


妹の味方を作りたいがために、僕にまで声を掛けてきた。


「何か、アタト様のお力になれることがあればご連絡ください、か」


まあ気持ちは分かるが、父親を宥めてくれるのが一番助かるよ。


でも、国の高位貴族の嫡男からの申し出だ。


ありがたく受け取るよ。


「モリヒト。 公爵家の嫡男宛に何か辺境地の名物でも送っておいてくれ」


礼状に対する感謝の気持ちを書いたメッセージカードを添えて。


『承知いたしました。 では魔獣の素材などいかがでしょうか』


あー、そうだな。


「クロレンシア嬢に贈った毛皮の残りの材料で小物でも作って差し上げたら喜ぶかな」


『白は在庫が無かったかと思いますが、黒ならあったかと』


狐魔獣の毛皮じゃなくて、狸魔獣の毛皮になるけどいいのか?。


これはスーに依頼する案件か。


「出来上がったら箱に入れて贈ってくれ」


『はい。 ではスー様に伝えて参ります』


ついでに付与が終わった宝飾品も持って行ってもらった。


今ならまだお茶会に間に合う。




 静かになった部屋で薬草茶を味わっていると、誰かがやって来る気配がした。


今はモリヒトがいないので、僕はひとりだ。


廊下に立っていた宝飾品に関する護衛も、あれと一緒に移動して行ったし。


 扉が叩かれる。


仕方なく立ち上がり、「どちら様でしょうか」と声を掛けた。


「怪しい者ではございません、アタト様」


お嬢様専属の侍女の声だった。


「何か御用でしょうか」


扉を開ける。


そこにいたのは高齢の侍女だけ。


「アタト様、お嬢様から是非お茶会にご招待したいと」


可愛らしい招待状を手渡される。




 受け取るが封を開かずに持つ。


何か仕掛けがありそうだ。


「お気持ちは嬉しいですが、僕はまだ体調が良くないので部屋から出られないんです」


ニコリと笑い、残念ながらと断る。


「そ、そうでしょうか。 お元気そうに見えますが。 先ほどから何人かお客様もいらしていたようですし」


僕はじっと侍女を見る。


深い皺が刻まれた顔に落ち窪んだ目。


化粧を施しても年齢や疲れは隠せない。


 さて、どうしたもんか。


「ア、アタト様は女性の誘いをお断りになるのですか。 それは礼儀に反する行為でございましょう」


必死に訴える声が震えている。


 気配を探ると怪しい人影が曲がり角の向こうに5人。


子供ひとりになんてこった。


領主館の内部で堂々と動くとは。


おそらく上位使用人の中に命令している者がいるのだろう。


扉を閉めるのも、捕らえられた振りをするのも簡単だが。


「いっそ亡き者にしてしまったほうが良いかなあ」


ボソリと溢す。




「すみません。 この格好ではお茶会には出られませんので着替えます。 良かったら中でお待ちください」


「は、はい」


僕は老侍女を部屋の中にいれ、扉を閉める。


「モリヒト」


『はい、ここに』


「ヒィ」


老侍女は、出て行ったはずのモリヒトがいたので驚き、悲鳴を上げる。


この部屋には防音結界が張られてるけどね。




「モリヒト。 大旦那とお嬢様だけをここに連れて来て」


老侍女には聞こえないように話す。


『畏まりました』


モリヒトは陰湿そうな命令にだけは恭しく頭を下げるな。


「あ、あの?」


落ち着かない様子の老侍女に近寄る。


「あなたの大切なお嬢様に危害を加えられたくなければ」


「な、なな、なにを」


狼狽える老侍女の顔を覗き込む。


「って、脅されました?」


彼女はヘナヘナと床に座り込んだ。




 あまり時間を掛けると男たちが逃げてしまうので、サッサと話してもらう。


「申し訳ございません。 アタト様ひとりを部屋から連れ出すようにと」


老侍女は床に頭を擦り付ける。


「僕を拐ってどうするの?。 金目当ての身代金なら誰に請求する気?」


「わ、わたくしには分かりません」


「そう」


僕は老侍女を立たせてカーテンの近くに連れて行く。


そこには、見えないように隠れた大旦那とお嬢様が待機していた。


「ヒィ」


大丈夫かな、このお婆さん。


ビックリし過ぎて心臓止まっちゃわない?。


「も、もうし、わけー」


「シッ。 3人とも黙って、動かないように」


室内にも結界を張って見えないようにしているが、相手の魔力や魔道具によっては見つかる恐れもある。


念のため、じっとしていてもらう。


「モリヒト、頼む」


『はい、お任せください』


眷属精霊の姿が老侍女の姿に変わる。


隠れている3人が声を押し殺して震えていた。



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