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異世界を信じる者たちへ 〜何故かエルフになった僕〜  作者: さつき けい


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第二百九十八話・偽のお茶会の参加者


 僕の言葉に赤毛の少女が複雑な顔になる。


「いえ、あの。 私にきちんとした相手がいれば諦めてくださると思うので」


「いや、無理だね」


「ああ」


僕とティモシーさんの意見は一致する。


あの馬鹿息子は『異世界人』であるヨシローを婚約者に持つケイトリン嬢を奪おうとした。


卑劣な手を使って。


そうして、あの男の周りにはそれに加担する傭兵たちがいたのだ。


つい最近の話だし、貴族籍を剥奪されたくらいで、しかもこんな短期間で性格が変わるはずがない。


「一時的に誰かが婚約者になったとしても、あの親子がずっと居座わったら、この先どうするの?」


「あっ、そこまで考えていませんでした」


少女が落ち込んでしまう。




 僕は自分の頭が冴えていくのを感じる。


「その話、大旦那様にしてないですよね」


知っていたら、とっくに領地から叩き出しているだろう。


僕の指摘に少女は俯く。


「何故ですか?」


あの馬鹿貴族親子から領主に、そんな話を持ち込めるはずはない。


俯いたままイジイジと指をイジっていた少女の口から、ポツポツと事情が溢れる。


「こちらに着いてすぐの頃でした。 街に出掛けた時、一緒に歩いていた侍女が知り合いに声を掛けられたのです」


侍女は楽しそうに話し込んでいたと言う。


「それから少しして、私だけが奥様の実家に呼び出されました」


そこにいたのは元貴族の親子。


彼らは顔見知りだった隣領の慈悲深い中位貴族家に入り込んでいたのだ。


奥様の実家はお人好しなのだろう。


そして利用されて秘密裏に縁談を打診、しかもすぐに断れないように威圧までしていた。


「お爺様には言うなと言われました。 そんなことをしたら領兵たちに迷惑が掛かるから、って」


そりゃあ大旦那は激怒するし、下手すれば領兵を動かすだろうさ。


それを被害者本人に口止めとは、いい度胸だな。




「ティモシーさん、ちょっと」


「うん?」


僕たちは少女を含めてコソコソと話し合う。


「ええっ。 そんなこと!」


少女がオロオロとし始める。


「はあ、アタトくん。 それは良い考えだと思うけど、実行するのは難しいと思うよ」


ティモシーさんにため息を吐かれた。


「ふふ、でも領兵隊にも、この街にも良い刺激になりますよ」


僕がニヤリと笑い掛けると少女は「うっ」と言葉に詰まる。


「では、貴女から大旦那様にお願いしてくださいね」


「は、はい」


「では私も準備しよう」


図書室から少女とティモシーさんが出て行った。




 午後から少女が大旦那と共に出掛けてしまい、今日のお茶会は中止になる。


そのことでヨシローとスーが僕に文句を言いに来た。


「ちょっと!。 いくら雨だからってお茶会中止ってどういうこと?」


お茶会は、領主である大旦那が次期領主候補の少女のために催している。


僕たちに滞在中はなるべく相手をするようにと頼まれていた。


「あのお嬢さん、出掛けたみたいだけど何か聞いてる?」


ヨシローは何故か彼女のことになるとやけに熱心だ。


次期領主になることが決まってる彼女が、ケイトリン嬢のようでほっとけないのかもな。




 しかし、そんなにお茶が飲みたいのか。


ならば僕が開催しよう。


僕の部屋で雨の降る庭を眺めながらのお茶会もいいもんだろ。


モリヒトがガビーとクンも呼んで来て、令嬢の代わりに僕が主催する。


 そしてもうひとり。


「わたくしなどがこのような席に座るなど」


戸惑っているのは、王都から少女と一緒にやって来た高齢の侍女さんである。


仕事だと思って来てみれば参加者だった。


「まあまあ、そう言わずに。 僕たちも平民ですし、気兼ねはいりませんよ」


貴族令嬢のお茶会ではなく、平民たちのただの休憩に付き合ってもらうだけだ。


家令さんにも許可はもらってある。


「は、はあ」


侍女は諦め、恐る恐る腰を下ろした。




 いつもは僕の傍で立ったままのモリヒトにも座ってもらう。


正式なお茶会ではなく、あくまでも平民たちの休憩の雑談会だから。


「ご参加、ありがとうございます」


僕は参加者を見回す。


ドワーフ組3人、ヨシローにモリヒト、そして侍女さんだ。


円形のテーブルに7人、性別も年齢もバラバラで笑える。


「何を企んでるの?」


ニヤニヤする僕に、スーは最初から疑心暗鬼だ。


「単なるお茶会の練習ですよ」


お茶やお菓子を楽しむだけがお茶会ではない。


「分かってるわよ、そんなこと」


えー?、そんな風には見えなかったけど。


少なくともスーはソレが楽しみだったんじゃない?。


だから、お嬢様がいなくてもお茶会さえあれば文句はないんだろ。




 今日は侍女さんに頼んで、例の果実汁の元になっていた果実の入ったお茶である。


ハーブティーのように乾燥した果物が茶葉と共に入っていた。


辺境地で喫茶店の指導をしているヨシローは、興味深そうに侍女さんの隣で話し掛けている。


「これは王都の特産品ですか?」


モリヒトも興味を示していたので、茶葉と果実を持って来てもらっている。


「いいえ。 これはわたくしが生まれた町の特産物ですわ」


なんと、この侍女は隣領の出身だった。


「この街に来ましたら、故郷から逃げて来た知り合いがたくさんおりまして。 懐かしい味を見つけた次第です」


農民や商人も流れて来ているようだ。


「先日、お嬢様と街を歩いていて話し掛けられたとか」


「よくご存じで」


その通りだと侍女は頷く。




 懐かしい友人に会い、ついお互いに見栄を張ったのだろう。


「ある中位貴族様のお屋敷で働いているという話です。 わたくしは領主館に勤めることになったと話しました」


侍女は、あの後にお嬢様に縁談が持ち込まれたことを知らなかった。


お嬢様のほうも気を使って言えずにいるのかも知れないな。


王都育ちとは思えないほど優しい少女だ。


「いいえ。 お嬢様は王都ではなく、近郊の街のご出身のはずですわ」


「どういうこと?」


ヨシローが首を傾げる。


あの少女は大旦那の妹の嫁ぎ先の孫娘ではなかったのか?。


「あの方は後添えに入られた奥様の連れ子でいらっしゃいます」


グワッ。 貴族事情が複雑過ぎる!。


頭がどうにかなりそうだ。


お茶会の面々が全員頭を抱えている。



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