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異世界を信じる者たちへ 〜何故かエルフになった僕〜  作者: さつき けい


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第二百九十六話・お茶会の報告を聞く


 ガビーの部屋に入ると、お茶会に参加した者が揃っていた。


「お帰りなさい、アタト様」


「うん。 皆もお疲れ様」


ガビーは元気そうだが、クンはグデッと椅子に寄り掛かっている。


そんな中、元気な者がもうひとり。


「アタトくんがお茶会の様子を聞きたいんじゃないかと思って準備してたんだ」


ヨシローは手にメモ帳らしきものを持っていた。


「それはありがたいですが、まさかお茶会の席でソレ、書いてませんよね?」


「いやいや、今、気付いたことを忘れないうちに書いてるだけだよ。 さすがにお茶会では無作法になるようなことはしてないから」


本当かな。


「そう?。 ヨシローさんって、かなり際どいこと訊いてなかった?」


スーが横目で睨む。


はあ、やっぱりか。




 婚約者であるケイトリン嬢と、お目付け役ティモシーさんがいない上に最年長。


ヨシローが我が物顔で振る舞っている姿が目に浮かぶ。


ここは周りが指導しなければならん。


 僕はスーに目で合図を送った。


ーーーアレを使ってくれ


ーーー分かったわ


無言でハリセンを取り出す。


スッパーンッ


ヨシローの尻は良い音がした。


背丈の低いスーではヨシローの尻あたりが高さ的にちょうど良い。


「え?、なんで」


「今のは練習よ。 次からはその場で注意するから」


「うえー」


ヨシローは納得できない顔で尻を掻く。


明日からは気を付けろよ。




 初夏の日差しを木陰が優しく遮り、心地良い風が吹く庭の東屋。


お茶会のテーブルがしつらえられていた。


そこでドワーフ3人と『異世界人』を相手にお茶会をしたらしい。


それは普通の貴族のお嬢様にしたら、かなり緊張したんじゃないかなあ。


かわいそうに。


「でも普通に良い子だったよ。 まあ、多少は戦闘好きというか、脳筋ぽいとこはあるけど」


ヨシローの評価は『良いとこの脳筋ぽいお嬢さん』か。


彼女は、赤毛でソバカスはあるが整った顔立ちをしている。


今朝、僕が見たその時は男物の動き易い服を着ていたが、ちゃんと女性だと分かる体型をしていた。




 僕の視線はクンに向く。


「あー、うん。 良い子なのは同意。 だけど、なんか無理してる」


ドワーフの少年は商人らしく、相手の裏側を見ようとしていたようだ。


僕は訊ねる。


「それは剣術の話?」


朝の練習で見た感じ、体を鍛えるというよりも剣を振り回したいんだろうなと思った。


「でも、武器を扱うには筋力とか体力とか要るじゃん。 それをすっ飛ばして剣だけって何かあるのかなーって」


なるほど。 クンは彼女の剣術には何か理由がありそうだと感じたみたいだ。


一人だけ彼女より年下だったこともあり、剣について、かなり突っ込んだ質問をされたらしい。


「オイラはドワーフだけど鍛治師じゃないからさ」


そこはちゃんとガビーが対応したと言う。




 一旦、中断し、皆で僕の部屋に移動して夕食を取ることにした。


老夫婦は既に領兵の兵舎に住み込みになったので、今、こちらにいるのはドワーフの3人とティモシーさんとヨシロー、僕とモリヒトだ。


後のドワーフ組のロタ氏と見習いの女性は地下のドワーフ街に出掛けている。


しばらく戻らないかも知れないとの言伝。


警備隊の若者は、やはり領主館は落ち着かないと教会の宿舎で寝泊まりするそうだ。


それはそれで教会の情報を集め易そうだし、がんばってもらうか。




「スーはどう思った?」


食後のお茶を飲みながら訊く。


「んー、そーねー」


スーは貴族のお嬢様のお茶会というものに興味があったようだ。


「飲み物やお菓子は美味しかったわ。 テーブルセットやカップの趣味も良かったし」


今回のお茶会は、大旦那が王都から来たお嬢様に友達を作ろうとして開催された。


主催はお嬢様ということになっているが、実際には大旦那に無理矢理参加させられた感じである。


「あたしもクンの意見に同意。 貴族令嬢だから、お茶会をがんばってるんじゃなくて、他にも何か気になることがあるのかもね」


ふうん。


やはり直接話を聞くしかないかな。


ま、朝練を続けていれば、いずれ話す機会も来るだろう。




 翌朝は雨だった。


朝練は室内で軽く体を解す程度にした。


僕は今日は昨日寄れなかった図書室に籠る予定だ。


高位貴族である大旦那の家系や街の地図や成り立ち等。


家令さんに頼んで用意してもらった。


「これをどうするんだい?」


この世界や人族の常識をあまり知らない僕は、ティモシーさんに付き合ってもらっている。


「あのお嬢さんの他に領主候補はいなかったのか、孫の男性を支援していたのは誰か。 それが知りたいです」


「うーん、難しいね」


ぶっちゃけ、大旦那に聞ければ良いんだろうが、素直に話してくれるとは思えない。


それと、ハッキリしないうちに暴走されるのも嫌だし。


「街に警備隊がいないのも気になります」


普通の街には住民を守る何らかの組織はある。


ここには、領主家が編成し運用している領兵隊しかない。


貴族家の雇う兵士なら、思考が貴族寄りに偏っているのではないか、と疑ってしまう。




 ティモシーさんは頷く。


「その貴族家に偏らないよう、平民の味方として教会の警備隊があるんだが」


万年人手不足の上、彼らは神官など神職者を守ることを一番の任務としている。


「まあ、領主に貴族を任命するのは国王様だ。 何かあれば、それを決めた国王様の責任問題にもなりかねない 」


それを調査している部門が王宮の貴族管理部。


だいたいは国王の責任問題になる前に貴族管理部が手を入れるのだ。


宿を移動させた、あの寂れた町のように。




 ふむ。


領兵隊が大きくなった原因はなんだろう?。


地図を見せてもらうと、やはり目ぼしい森や山は無い。


ただ、例の廃れた領地が隣接している。


その隣領の領都とは馬車で2日程度の距離しかなかった。


「まさか、そのせいか?」


あのバカ親子の領主が隣領を脅かす危険はあるかな。


いや、ないな。


逆にこっちがブチ切れて攻め込むのはアリかも知れん。


……はっ、まさか。


そんなこと計画してないよね?。


「ねえ、ティモシーさん。 領兵隊の隊長さんってどんな人?」


「確か領主様のご友人ではなかったかな」


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