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異世界を信じる者たちへ 〜何故かエルフになった僕〜  作者: さつき けい


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第二百六十五話・食材の買い付けと種子


 椎茸の件は、干からびたものは無料で持ってって良いと言われた。


「ありがとうございます。 ついでに、他の『ライス』も見せてもらえますか?」


「ああ、そういえば、他の品種や古くなったものも買いたいと仰っていると王都店から連絡が来ていましたね」


「少々お待ちください」と店員が倉庫奥に消えた。


さすが大手の食品卸商店である。


空調の魔道具が効いているようなので、思ったより保存状態は良さそうだ。


「はい。 これも皆、神官様のお蔭です」


神官様は保管の指導もしてたのか。


 キノコについては「晴れた日に陰干し」と言われていたらしい。


「いつまで干せばいいのか分からなくて」


うまく伝わらなかったとみえる。


「今度、このキノコが生で入荷したら、これくらいに干した状態で届けてもらえますか?」


ちょうど良い具合の干しキノコを店員に見せて頼んでおいた。


後で契約書も作ってもらおうっと。




「ありました!。 こちらにどうぞ」


僕は上機嫌のモリヒトを連れて倉庫の奥に向かう。


腰の高さくらいの布袋が三つ。


思ったより少ない。


たぶん、需要が無いんだろうな。


それと。


「もしかしたら、新しいものが近く入荷するんでしょうか?」


だからこれは、それまでに注文があった場合のための予備だったのか。


「は、はい、よくご存知ですね。 収穫はずっと前ですが、検査や輸送に時間が掛かるので」


それは仕方ないな。




 王都の物好きたちから、いつ注文があるか分からない。


しかし、売れ残ると新しい『ライス』の仕入れ量に影響が出るかも知れない。


それは困るので、新米が入るなら古米はもらってくよ。


 中身を確認させてもらう。


籾殻もみがらは無いが、ぬかはついたままの『米』だ。


手に取り、匂いを嗅いでみる。 懐かしい香り。


乾燥は十分だ。


これなら長期保存に問題はない。


「そちらの都合さえよろしければ、全て買いますので代金を教えてください。 それと今後は毎年売れ残った分も売ってもらえると助かります」


こちらにはヨシローという『異世界人』がいる。


『異世界人』のために、と大きな顔で注文出来るというものだ。




 モリヒトがポイポイッと荷物を結界に放り込む。


倉庫担当の店員が消える荷物にポカンとしていた。


ジェダの父親が請求書を持ってやって来る。


「アタト様、価格はこちらになります。 えっと、お運びする荷物は?」


「あ、それはこちらで対処出来るので」


モリヒトの魔法を目撃した店員がアワアワしながら説明する。


「なるほど、それは失礼いたしました」


ジェダ父はニコリと笑って頷く。




 支払いに関しては事務室に移り、モリヒトに任せる。


僕は次の取り引きでお願いすることがあった。


「この『ライス』の種子、または苗を入手出来ませんか?」


「種子ですか?」


ジェダ父は元教会警備隊隊長。


『異世界の記憶』についての厳しい取り決めは熟知しているだろう。


「どこかに許可を取らなければならないなら、どこでも出向きますよ」


ややこしいことに巻き込まれるのは慣れている。


王宮ならモリヒトに頼めば瞬時に移動が可能になったしな。


「分かりました。 その辺りも含めて後日、お知らせいたします」


「よろしくお願いします」




 事務室を出るとアリーヤさんが待っていた。


「アタト様にぜひご案内したい場所がありまして」


アリーヤさんの真剣な顔を見ると、観光ではなさそうだ。


「ありがとうございます、ぜひ」


住居の方に周り、馬車に乗る。


同乗したのはアリーヤさんの父親、店主だった。




 ヨシローたちの姿が見えない。


どこかでまだ騒いでいるのかと思ったら。


「ヨシローさん、食べ過ぎたらしくて」


具合が悪くなったとかで、客室を借りて横になっているそうだ。


はあ。 ケイトリン嬢がいないからって、はしゃぎ過ぎだよ。


店主の奥様と子供たちが看病に付き、ティモシーさんが医師を呼びに行ったらしい。


「お手数をお掛けして申し訳ありません」


「いえいえ。 私どもが『異世界人』様の体調に配慮出来ず、申し訳ありません」


症状自体は軽く、薬は飲ませてくれたらしい。


ただ『異世界人』のヨシローに万一のことがないよう、医師を手配したと説明を受ける。


はあ、ケイトリン嬢には黙っておいてやるか。




「さすが大店ですね。 『異世界人』の取り扱いに慣れていらっしゃる」


「とんでもない。 教会とは長い付き合いでして、色々と勉強させて頂いておりますので」


大柄な店主はどっしりと構えていた。


 普通なら『異世界人』には滅多に遭遇しない。


日頃から付き合っている辺境地の町の住民でさえ、ヨシローが病になったら慌てふためくと思うんだが。


この店主は慣れ過ぎなんじゃないか?。


というか、『異世界人』を勉強している?。


なんのために?。 あー、商売のためか。


でも、本当にそれだけなのかな?。




 街の外れ、小高い丘の上に大きな木が一本あり、その周りは魔法柵に囲まれていた。


「墓所、ですか?」


「はい。 私がお世話になった高位神官様が眠っておられます」


この国では亡くなると棺に入れ埋葬する。


魔獣のいる世界だから僕としては火葬の方が良い気がするけど、そこは神が実在する世界だ。


この世界の神が決めた法則があるのだろう。


 門番が門を開き、馬車ごと中に入る。


中央にある木に向かって真っ直ぐに伸びた道。


道の両脇にはさらに脇道が続き、その小道に墓石が並ぶ。


木の傍に建つ、小さな祠の傍で馬車を降りた。


「どうぞ、こちらへ」


祠には扉があり、その中には地下へと続く階段があった。




「もしかしたら、高位神官様の墓ですか?」


「はい。 さようでございます」


アリーヤさんが先に立って階段を降りていく。


僕とモリヒトがその後ろを、そして店主が僕たちの後ろを歩く。


 冷んやりとした空気、たいした距離はなく、すぐに階段は終わる。


石畳みの小さな空間に、ねじれた大きな木の根が剥き出しになっていた。


「はー、これわざとですか?」


「はい。 生物は皆、自然に還すという神の教えでして」


特別製の棺なのか、体の腐敗と同様に土地の魔力と同化し、墓所の木の根に吸収される仕組みだという。



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