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異世界を信じる者たちへ 〜何故かエルフになった僕〜  作者: さつき けい


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第二百五十六話・運送の開始と悩み


『アタト様がすぐに断らなかった時点で、すでに答えは決まっているかと』


モリヒトが人間臭いことを言う。


いやあ、しかしなあ。


確かに人間の使用人というのは、人族との交渉の上で助かる場合もある。


しかし、ひ弱な分、こちらが守らなければならないという負担が増えるのだ。


悩んでいるうちに準備が終わる。




 最初に、僕とモリヒト、キランで辺境伯家本邸に飛ぶ。


辺境伯領の領地本邸の庭に降り立った。


一応、防御結界はあったようだが、王城に比べると紙である。


「配送が完了したら直して上げてくれ」


一応、モリヒトに頼んでおく。


『はい。 承知いたしました』


バラバラッと兵士たちが出て来る。


「は?、アタト様。 それにキランじゃねえか!」


兵士の一人が大声を上げた。


「こんにちは、お久しぶりです」


僕は、前に出て来た本邸の家令さんに軽く会釈する。


 キランが事情を説明して、僕たちはそれが事実であると証明して頷く。


「承知した。 すぐに受け入れ準備に入る」


家令さんは頷き、指示を始めた。


モリヒトと兵士たちが荷物の受け渡し場所を決めると、僕たちはすぐに王都邸に戻った。




 輸送が始まる。


双子と一緒に馬車に乗るのは辺境伯夫人と侍女、それにケイトリン嬢と護衛メイドだ。


「ケイトリン様、これを」


僕はワルワさん宛の手紙を渡す。


 双子は辺境伯本邸から、すぐに辺境地の町に移されることが決まった。


魔力駄々漏れサンテは辺境伯領でも危ない存在になる。


早めに辺境地に送り届け、ワルワさんに預けた方が良い。


「手紙でワルワさんにサンテリーくんのことを頼んでおきましたので」


「はい、お預かりします」


サンテの魔力漏れは、今はウゴウゴが防いでいるだけなので、自分で調整出来るようになるまで辺境地で修行させることになる。


ワルワさんには、魔力調整にウゴウゴの代わりを付けてもらえるように手紙に書いた。


属性が確定していないスライムに魔力を吸収させ、サンテの魔力属性を調べてもらう予定だ。


「それまで頼むよ、ウゴウゴ」


サンテのリュックに声を掛ける。


『ワカッター デモ アタトノホーガイイ』


「分かってるよ。 お前は僕の大切な仲間だ」


僕の属性に染まっているウゴウゴに魔力を分けてやると、ヒョコヒョコッとリュックが揺れた。




 モリヒトは一度、辺境伯領本邸で夫人や使用人を降ろし、さらにケイトリン嬢と双子を辺境地の領主館へ送り届ける。


そうしてまた王都に戻って来る予定だ。


「モリヒト、頼む」


『承知いたしました』


馬車とモリヒトが消える。


「次だ!。 早く準備しろ!」


家令さんの大声が響く。




 僕は庭の隅で見守っていた。


そこへ領地に向かう兵士たちがやって来る。


それぞれ荷物と一緒に家族や友人への土産を抱え、思ったより早い帰還に嬉しそうだ。


その中に何故かクロレンシア嬢がいる。


「クロレンシア様。 何故、荷物を?」


騎士服に辺境伯家の紋章入りのマントを身に付け、自分の荷物を抱えている。


「私も皆さんと一緒に行こうと思いまして」


昨夜、僕は貴族管理部でクロレンシア嬢の破談と辺境伯騎士団への加入の許可を聞いたばかりだが。


「あのー、公爵様の許可は?」


令嬢騎士はニコリと笑う。


「私、もう成人してるんですよ。 それに、家出中ですから」


親の言いなりにはならない、らしい。


本当に意志の固いお嬢さんだ。


嫌いじゃないぞ。


次の荷馬車と共に辺境伯領地本邸へと旅立って行った。


辺境伯領に行ってしまえば、公爵家が連れ戻そうとしても片道20日はかかる。


あの父親が諦めてくれるといいがな。




 僕はクロレンシア嬢を見送り、引き続き運送の様子を見ていた。


荷馬車何台分になるのか確認して、請求しなきゃならん。


「アタト様は一緒に行かないのか?」


ロタ氏が声を掛けて来た。


「ええ。 他の街に用事があるので、そちらに寄ってから帰ります」


「そうそう。 ティモシーの実家に寄る予定なんだよ」


ヨシローが嬉しそうに会話に入ってくる。


辺境伯夫人とケイトリン嬢がいないからって、そんな晴れ晴れとした顔するんじゃない。


バチがあたるぞ。


「ヨシロー。 ケイトリン様から手紙の見本を預かってるぞ。 毎日練習するように言ってくれってさ」


ティモシーさんがヨシローに紙束を見せている。


「それ、僕が毎日確認するように奥様から言われてます」


僕もヨシローの文字の練習に付き合わされることになっている。


「ええええ」


ヨシローが崩れ落ちる。


そんなのサッサと覚えればいいだけだ。




 ロタ氏が教会に納める『御守り』の作成を監督してくれていた。


ガビーとスー、そして工房の職人兄妹が、今もがんばってくれている。


もう少しで終わるらしい。


「教会に納品が終わり次第、僕たちは王都を出ます」


ヨシローとティモシーさんは僕と一緒に帰る。


「ロタさんはいつ頃になりますか?」


「そうだな。 アタト様たちの2、3日後になるかな」


ここでの仕事が終わったら、一度ドワーフの地下街に戻る。


ロタ氏はドワーフの行商人だ。


「注文を取らなきゃならんからな」


各地のドワーフの街を回り、受注と配達をしている。


「辺境伯の奥様に、期限無しで良いから荷馬車を辺境伯領都の本邸に届けてくれと言われてな。 ありがたく使わせてもらうよ」


王都に来た時と同じ荷馬車で辺境地に向かう。


荷馬車自体を辺境伯領に届けるという仕事のため、借り賃もない。


逆に無事に届ければ賃金を貰えるそうだ。




「じゃあ別行動ですね」


ドワーフ3人とは別々に出発することになりそうだ。


「それなんだが」


ロタ氏が顔を顰める。


「ガビーが、帰りはアタト様と一緒に行くと言ってるんだが」


うん?、そうなんだ。


「僕は構いませんが、馬車は1台の予定ですよ」


辺境伯から6人乗りを1台借りることになっている、


人数に余裕はあるが、ガビーは女性だ。


男性と長時間一緒でもいいのか?。


「そうなんだよな。 おれもガビーやスーの家族に頼まれてるからなあ」


ロタ氏は「もう少し考えてみる」と言って、『御守り』を作っている部屋に戻って行く。


僕はそのまま運送が終わるまで見守っていた。



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