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異世界を信じる者たちへ 〜何故かエルフになった僕〜  作者: さつき けい


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第二百五十二話・王城の管理部に突撃


 王城の結界を破るのは、モリヒトでもちょっと骨が折れた。


でもまあ、なんとかなる。


パリーンッ!


甲高い音が王宮内に響く。


「おー、派手だな」


僕が笑っていると王子はブスッとした顔で「後で直せよ」と要求してきた。


中庭に着地し、モリヒトに直せるか訊いてみる。


『少しお時間が掛かりますが、可能です』


無理に破ったので、魔道具本体を見つけなければならないらしい。


王宮の結界魔道具は一つではないので、全て探し出すのに時間が掛かるそうだ。


「ふむ。 じゃあ、すぐ直してあげてくれ。 僕は王子と先に行ってる」


『承知いたしました。 すぐに追い付きますので』


モリヒトに結界の修復を任せて、王子と共に国王を探しに行く。




「まずは、陛下の予定を把握している侍従長を探す」


王子は廊下を歩きながら、王宮で働く使用人たちを捕まえては侍従長はどこかと訊いている。


そんな僕たちを駆け付けた警備兵たちが取り囲んだ。


「エンデリゲン殿下、お待ちください!。 そちらの少年はいったい……エルフですか?」


兵士たちが目を丸くする。


「そうだ。 エルフのアタトだ。 陛下に御目通りさせる。 陛下はどちらに?」


兵士たちは顔を見合わせた。


「お忙しい陛下には、殿下といえど約束がなければお会いにはなれません」


「分かっている!。 緊急の用事が出来たから巡回視察から戻って来た。 すぐに繋ぎを頼む」


兵士の一人が駆けて行った。




 僕はふむ、と考える。


「国王陛下はこちらですね」


廊下の先を指差す。


「分かるのか?」


「分からないとでも?」


軽口を叩き合いながら、兵士たちの隙を見て走り出す。


子供の小柄な体型が役に立つ。




 王城内の敷地には、上に伸びた建物がいくつか並んでいる。


長い廊下で繋がった建物を出たり入ったりするし、かなり入り組んでいるため案内は必須。


だけど、僕は一度中を通ったことがあるため、だいたいの予想は出来た。


「こっちから陛下の気配がする」


僕が案内役となって廊下を進む。


「ん?、貴族管理部か」


「そのようです」


見たことがある場所。


王子は扉を叩き、返事を待たずに開いた。




 働いていた文官たちが驚いてこちらを見る。


「陛下がいらしているはずだ」


顔を見合わせ戸惑う文官たちをすり抜け、僕たちは先日入った奥の部屋へ向かう。


「お待ちください!」


制止する声を背中で聞きながら扉を開ける。


えっ、王子、ノックぐらいしろよ。


「誰じゃ」


あ、元国王の爺様。


国王陛下もいた。


後の数名は近衞騎士たちと、あれは侍従長だろう。


明らかに今までの使用人たちとは違う、高級そうな制服の使用人が国王の傍に立っていた。




 僕はとりあえず正式な礼を取る。


「申し訳ありません、陛下。 至急、お訊ねしたいことがございまして」


僕たちを排除しようとする騎士たちを抑え、元国王が僕たちを手招きした。


「よいよい。 こちらに来なさい。 エンデリゲンとアタト、だな」


「はい!」


王子は嬉しそうに祖父の隣りに座り、僕にも椅子を勧めた。


僕は恐縮しながら座る。


「今日は眷属はどうした?」


爺様に訊かれて、


「さっき結界を壊してしまったので、修復させています」


と、答えた。


国王は驚いていたが、爺様は大笑いしている。


「ワハハハ。 それは良いな。 直してもらえるならば罪には問わぬことにしよう。 なあ、息子よ」


この場合の息子は当然、現在の国王のことだ。


「む、仕方ない。 直れば許す」


「ありがとうございます。 お二人の寛大な御心に感謝いたします」




 侍従長がお茶を運んで来て、近衞騎士は一人を残して人払いされる。


「それで、何の用だ。 巡回を放り出し、結界を壊してまで戻って来た理由は」


「実はー」


エンデリゲン王子がクロレンシア嬢の縁談について話す。


「まさに今、その話をしておったところじゃ。 国王陛下は『却下』されるそうだ」


爺様の言葉に王子はホッと一息吐く。


「しかしな、これは王太子の申請であるから、当人からも話を聞かねばならぬ」


今、王太子を呼びに行ってるそうだ。




「恐れ入りますが、僕はエンデリゲン殿下を届けに来ただけなので、別室で待たせてください」


ここには隠し部屋があることを僕は知っている。


「おお、そうじゃな。 では、そちらで待っていてもらおうかの」


この貴族管理部の長はこの爺様だ。


「はい」


僕はサッサと移動する。


国のお偉いさんと一緒に内輪の話なんて聞きたくない。


下手すると乱闘?。


いやいや、嫌味の応酬ぐらいか。


まあ、どっちにしても立ち合いたくない。




 隣の小部屋は窓が無いだけで、案外綺麗だった。


こぢんまりとしたソファとテーブルがあり、お茶と軽食が出された。


もう夕食の時間か。


侍従長がずっと僕の傍で待機していた。


 時々、隣の部屋から話し声が聞こえる。


会話が割とハッキリと聞こえてくるのは、僕がエルフだというだけでなく、この部屋がそういう仕様なのだろう。


そのための部屋だろうし。


「私だけにそのようなことを仰っるのですか?」


あー、これは聞き覚えのない声だから王太子か。


 王位継承権を持つ王族男子は現在エンデリゲン王子を含めて4人。


王太子と第二王子はあまり年齢も変わらず、後ろ盾の貴族、つまり母親の生家もあまり変わらない爵位。


何かと張り合っている兄弟だという。




 クロレンシア嬢に対しては、今までは近衞騎士だから遠慮してたが、辞めた途端に公爵家に縁談の打診が殺到したらしい。


どうやら王宮内の派閥争いにクロレンシア嬢が巻き込まれたようだ。


王族に次ぐ家柄なら、そうなるよな。


「あの弟が先に公爵令嬢を手に入れようとしたのですよ!。 私を陥れ、自分が王となるために」


えらく被害妄想な王太子だな。


 弟って、エンデリゲン王子か?。


「私は王位継承権は放棄しております」


「そんなもの、御父上や御祖父様の一言でどうにでもなる」


側妃の子で『奇行王子』などと呼ばれていても、国民には人気がある。


見る者が見れば優秀なのは分かるのだろう。


エンデリゲン王子がその気になり、公爵令嬢を手に入れたら、自分の王太子の地位が揺らぐってか。


いやあ、ドロドロだなあ。



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