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異世界を信じる者たちへ 〜何故かエルフになった僕〜  作者: さつき けい


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第二百三十一話・その後の令嬢と王女


 モリヒトが今度は甘めのコーヒーを淹れてくれた。


「ふう」


一息吐いた。


「結界はどうします?」


小声で王子に確認する。


「我ら3人だけで頼めるか」


僕は頷き、モリヒトがテーブルを囲む僕と王子とティモシーさんだけの空間を結界に包む。


扉の傍にいるキランと護衛騎士には、こちらの声は聞こえない。




 まずは王子にこちらに来た理由を確認する。


「昨日のことが気になっているだろうと思ってな」


僕は頷く。


「決着はついたのでしょうか?」


「うーむ。 とりあえず、クロレンシアは休暇を取ると公爵家から連絡があったそうだ。 王女の方はしばらくは部屋から出さないという感じかな」


侍女や護衛付きで部屋に軟禁か。 


 ティモシーさんが唸る。


「殿下、アタト様、説明を」


ああ、すまんかった。


「実は、ティモシーさんが市場の警備の件で留守にされた夜に、僕は王城にいたんです」


王子に呼ばれて、側妃に会いに行ったことにする。


「母が先日の音楽会のことでアタトにお礼がしたい、と言ってな。 相手はエルフだ。 王宮の警備が手薄になる時間帯にアタトに来てもらった」


「これは国王陛下からも許可を頂き、辺境伯だけに伝えてありました」


ティモシーさんが頷く。


「話し込んで遅くなってしまってな。 ちゃんと許可は取って、アタトを我が部屋に泊まらせたんだが」


事件というか、騒動は翌早朝に起きた。




「僕が庭で寝ていたクロレンシア嬢を見つけたんです」


「寝ていた?。 近衞騎士がか?」


最初は倒れていると思ったが、衣服に汚れはあるが怪我や病気ではなかった。


「ええ。 でも、もしかしたら眠らされていたのかと」


そこで王子が大きくため息を吐いた。


「王女が新しい護衛騎士であるクロレンシアにイタズラをした、ということらしい」


ティモシーさんがハッキリと嫌悪を現す。


「問題児なんですか?、その王女殿下は」


「我に言わせれば、王宮の子供は皆、問題児だと思うぞ」


そうだね、エンデリゲン王子も含めて。




 まずはクロレンシア嬢が近衞騎士として新たに第七王女の護衛担当になったことから始まる。


「エンディ殿下の担当だと思ってました」


「バカか。 年頃の異性に近寄らせるわけないだろ。 前回、同行したのはクロレンシアが令嬢として辺境伯領都に行くことが決まっていたからだ」


その頃はまだ担当は決まっておらず、任務ごとに誰かが任命されて派遣されていた。


「王女殿下の護衛担当だった女性騎士が結婚することになって交代したらしい」


まあ、それは良くあること。


しかし。


「前任の騎士と仲が良かった王女が、クロレンシアに辛く当たっていたという情報が入った」


「イタズラではなく、嫌がらせですか」


ティモシーさんが気持ちを吐く。


「まだ子供だ。 しかも相手は王族だから、公爵家令嬢であるクロレンシアでも我慢しなくちゃならなかったろう」


そう言って王子は苦笑した。




「それは違います。 僕はあの時、言いましたよね。


近衞騎士はただの護衛ではないはずです」


王子はチラリと側近の中年騎士を見た。


「ああ、まあなあ」


「クロレンシア嬢は、王女に対して近衛騎士としての対応が出来ていなかった」


僕は足を組む。


「だから、お前はクロレンシアに騎士を辞めろと言ったわけか」


ティモシーさんが驚いて僕を見る。


「騎士ではなく、『近衞騎士』には向いていないと言ったつもりですが」


王族や王宮内にいる重要人物の護衛に当たる近衞騎士。


僕は王子に訊ねる。


「御身を守るためにも、時には苦言を呈して危険から遠ざけることも仕事でしょ?」


厄介な相手に喧嘩を売ったり、下の者に必要以上に付き纏ったりしたら。


権威を笠に着た言葉の暴力や他の者たちにわざと貶める指示を出すことも、悪戯あくぎだといましめなければならない。


心当たりがあり過ぎる王子は顔を逸らす。


「……分かっている」


「本当に?」


それらは回り回って必ず自分に戻って来る、ということを。




 ティモシーさんが王子に問う。


「それで、クロレンシア嬢の処遇はどうなりそうですか?」


「公爵家当主が、近衞騎士団にクロレンシアの辞退を申し入れたそうだ」


当主の決定は絶対である。


おそらく受理され、クロレンシア嬢は近衞騎士を引退することになるだろう。


ティモシーさんの表情が怖い。


 僕はモリヒトにコーヒーのお代わりを頼む。


「そこで、最初の話になるわけで。


引退した近衞騎士を高位貴族家の私兵として雇うことは可能でしょうか」


「可能かどうかなら、可能だろう。 だが、クロレンシアに関しては分からん」


当主の心次第である。


ふふふ、それはなんとかなるかもね。


「なんだ、アタト。 変なことを考えてるだろ」


失礼な。


でも周りから固めることは出来そうだ。


「殿下、ティモシーさん、力を貸して頂けますか?」


「ああ」「勿論だ」


二人は力強く頷いた。



 ◇ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◇



「王女が近衞騎士にイタズラしたのは本当なのか」


「そのようです、陛下」


「侍女は何をしておった。 同じ部屋に居ったのだろう?」


「その、実はその侍女が主犯のようで……」


「詳しく申せ」


「はい。 現在の第七王女のお付きの侍女は、先日引退した護衛騎士でして。 結婚が決まり花嫁修行にと侍女をさせてほしいと申し出て採用されておりました」


「ほお。 忠義なことだ」


「しかしながら、それが度が過ぎておりまして。


王女を自分のモノだと言って、誰にも触らせないようになり、護衛も自分がするからとクロレンシア嬢を邪魔者扱いしていたようです」


「確かに元近衞騎士なら護衛は可能だが。 そのイタズラが何故、あのようなことに?」


「はい。 どうやら魔道具を使ったようで、クロレンシア嬢が座る椅子に『睡眠』の魔法の痕跡がありました」


「お茶などに薬を入れれば、疑われるのは侍女だからか。 しかし、それはどうやって部屋に持ち込んだのだ?」


「王女の魔法の教師である魔術師が、王女が眠れないと仰ったと」


「むう。 結界があるとはいえ、眠らされた令嬢が危険であったことは間違いない。


魔術師と侍女を捕えよ」



 ◇ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◇



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