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異世界を信じる者たちへ 〜何故かエルフになった僕〜  作者: さつき けい


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第二百十四話・魔道具の作成と再会


 喉が渇いたので工房街の中にある喫茶店に皆で入った。


防音の設備がされているのか、中は静かである。


「この店はカウンターで注文して、自分で飲み物を受け取ってから座るんだ」


一緒に来た兄職人が説明する。


奢ると言って聞かないんだよ。


まあ、仕方なく一杯だけ付き合うことになった。


 それぞれが注文して木のカップを受け取り、空いていたテーブルに座る。


僕はわざと警備隊の若者の横に座り、


「さっきのおもちゃはヨシローさんから教えてもらったんです。 その、それを言うと色々拙いんですよね?」


と、コソコソと小声で話す。


『異世界の記憶を持つ者』に関する知識は独占したり、強要したりすることが禁じられている。


そのため、『異世界人』であるヨシローは、自分の知識をあまり広めないようにしているのだ。


「はあ、そうですね。 あの職人さんも特に気にしていないようですから、大丈夫だと思います」


すでに世界中に広まっている『異世界人』の知識や道具については、害がなく、利益がさほど多くなければ許容範囲とされていた。


うん、それならいい。




 ヨシローが兄職人と『異世界』のおもちゃについて話し込んでいる。


「そうか!。 俺自身に子供がいないから気付かなかったなあ」


魔力の無い『異世界人』でも出来ることがある。


ヨシローはなんだかうれしそうだ。


「辺境地に戻ったら色々考えてみようかな」


ケイトリン嬢がヨシローの服を引っ張る。


「ヨシローさん。 何でも勝手に作ってはいけませよ」


あはは、ちゃんと釘を刺してる。


ケイトリン嬢はよいお目付け役になってきたな。




 僕がもらった飲み物はスッキリした甘さの果汁だ。


それをゆっくり飲んでいたら、聞き慣れた声が聞こえてくる。


「だからー。 このままだと欲しいものが買えないから困ってるの!。 聞いてる?、ガビー」


「う、うん。 スー、ちょっと静かにしようよ」


何やってんだ、あのドワーフ娘たちは。


容姿がエルフに戻っていなくても聞き慣れた声は間違えない。


こちらから声を掛けるような無粋なマネはしないよ。


「おや、アタト様。 お久しぶりですな」


果汁を吹き出しそうになる。


「ロタさんもお元気そうで」


ドワーフにしてはヒゲが薄い小柄な男性がいた。




「えっ、アタト様?。 あー、ほんとだ!」


ガビーは嬉しそうに僕の近くに移動して来て座る。


スーも寄って来て、仕方なさそうにガビーの横に座った。


ティモシーさんたちも久しぶりの再会を喜ぶ。


「あたしたちを探しに来たの?」


「いや、偶然だよ。 スーちゃん」


ヨシロー、誰でも「ちゃん付け」するな。


スーはドワーフ娘だから確かに体は小さいけど一応成人女性だからな。


「市場に買い物に来たんだよ。 そちらは仕事か?」


ティモシーさんがロタ氏に訊く。


「この辺りに拠点がありましてな」


小声になるのは、あまり知られたくないからだろう。




 ロタ氏は兄職人にも挨拶する。


「お邪魔してよいかな?」


「ああ、もちろん。 へえ、ロタさんと知り合いだったのか」


兄職人とロタ氏とは顔見知りのようだ。


「うん。 同じ辺境地仲間だよ」


そんな話をしていたら、ロタ氏がケイトリン嬢の護衛メイドが持っているハリセンに目を付けた。


「それを見せてもらえんか」


しまった。 モリヒトに渡しておけば良かった。


「それはこの坊ちゃんと二人で作ったんだ」


兄職人が自慢気に語る。


「ほお?」


ロタ氏の目がチラリと僕を見た。


えっと、間違いなく二人で作ったよ?。




 ワラワラと職人たちが集まって来る。


今度はどうやら、この工房街のドワーフ族の職人たちらしい。


「へー」「ほー」と、熱心にいじくり回す。


ヤメテ、壊れる。


「これは俺が作ってみてもええんか?」


職人たちの間から声が聞こえてきた。


僕はティモシーさんにも確認した上で頷く。


「ただ、絶対に子供に触らせないこと。 そして武器のように強化しないと約束してください」


あくまでも「おもちゃ」として扱ってほしいと頼む。




「よし。 それなら、これに約束魔法を付けた説明書を作ろう」


ロタ氏が何か言い出した。


売り出す時に、間違った使い方をしないと約束する魔法を付与した取扱説明書みたいなものだそうだ。


それを読んだら約束したということになる。


「うん、それがいいと思う。 良かったら設計図は俺が描くよ」


兄職人も同意する。


危険な魔道具にはよくある方法らしい。 


もしかしたら『異世界の知識』の魔道具だから、厳重な扱いにしたいのかも。


しかし、約束魔法、僕はあまり見た記憶がない。


「アタトくんは説明書は読まないんじゃない?」


うん、見たことないや。


「だからだよ」と笑われた。




 だけどこれ、かなり高価なおもちゃになりそうだけど売れるの?。


「目新しいもの好きは金持ちに多いからな」


ロタ氏が工房組合に申請してくれることになった。


職人たちはその設計図の写しを買い、作成して売り出す時に必ず約束魔法を付与した説明書を渡す。


「約束魔法は誰が?」


おもちゃ工房で付与するには属性や魔力が足りない気がする。


「教会で請け負いますよ」


ティモシーさんが教えてくれた。


「約束魔法は契約魔法より簡単なので、見習い神官のよい小遣い稼ぎになるんだ」


なるほど。




「では、立案と製作者はオニイサンにしてください」


僕もヨシローも名前を知られるのは拙い。


「いいのか?」


オニイサンが目を丸くした。


品物が売れれば製作者の名も売れ、工房にも依頼が増える。


「はい。 もし利益が出たら、また新しいおもちゃのために使ってくださいね」


今度は本物の子供用をお願いしたい。


「もちろん!。 任せとけ」


僕はロタ氏にも目配せする。


「きちんとやっとくよ」


さすが、ロタ氏。 助かる。




「ねえ、ちょっと!。 あたしのもなんとかしてよ」


いきなりスーが立ち上がって喚く。


アワアワしながらガビーが謝る。


「す、すみません、アタト様。 思ったよりスーの御守りが売れなくて」


毛玉は確かに可愛いのだが、飾りでしかない。


御守りは実用的ではないのだ。


「いくつ持って来たんだ?」


「全部で50個よ」


スー、……欲張り過ぎじゃね?。



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